日常
講義終わりの学食。
騒がしい空気の中、四人だけ少し静かだった。
「……で」
静太がトレーを押しやる。
「どうする?」
言わなくても分かる。
海記は水を一口飲む。
「まだ4日ある」
「だから?」
「焦る理由はない」
「でも、間が空くと怖くなるタイプだろ?」
視線が、このみに向く。
「なにその決めつけ」
「違う?」
このみはむっとする。
でもすぐに目を逸らす。
「……あの館、思い出すと嫌」
「うん」
「でも、変に時間置くと、余計行きたくなくなりそう」
正直だ。
夢菜が言う。
「早めに慣れるのは合理的」
「合理的って便利な言葉だよね」
静太が笑う。
「じゃあ今夜」
「即断すぎ」
「じゃあいつ」
海記は少し考えてから言う。
「二十一時」
「なんで?」
「飯も風呂も終わってる時間。集中できる」
静太が指を鳴らす。
「賛成」
夢菜も頷く。
残る一人。
「……私は」
このみは、ストローをくるくる回す。
怖い。
昨日より少し薄れたけど、消えてはいない。
でも。
焼肉の時の笑いとか。
核を壊した瞬間の連携とか。
思い出すと、胸が少し熱い。
「条件」
「なに」
「絶対二手に分かれない」
「分かれない」
「勝手に突っ込まない」
静太が視線を逸らす。
「……善処」
「するって言え」
「する」
このみは、深呼吸。
「……じゃあ、二回目」
誰も大げさなことは言わない。
ただ。
「二十一時な」
「遅刻すんなよ」
「お前が言うな」
いつも通りのやり取り。
でも。
その裏に、少しだけ緊張が混じる。
放課後。
それぞれが帰路につく。
海記は歩きながら思う。
昨日より、少しだけ体が軽い。
気のせいかもしれない。
静太は、やけに周囲をよく見ている自分に気づく。
夢菜は、手の震えが昨日より小さいことに気づく。
このみは――
まだ怖い。
でも。
逃げたいより、
置いていかれたくないの方が少し勝っている。
夜。
21:00。
各自、自室。
ヘッドセットを手に取る。
二回目。
今度は、何も知らないんじゃない、
自分たちで、理解して入る。




