チュートリアル①
「一本道確定か」
静太が小さく呟く。
このみが無理やり笑う。
「チュートリアルだよね? ね?」
誰も保証はしない。
海記は扉に手をかけた。
重い。
だが、押せば開く。
――ギィィ……
重い扉を押し開けると、乾いた空気が流れ出た。
館の中は、外よりも暗い。
天井は高く、シャンデリアは崩れ落ちている。
赤い絨毯は黒ずみ、踏むたびに埃が舞う。
「うわ……匂いまである」
このみが鼻を押さえる。
腐った木と、湿った鉄の匂い。
そのとき。
それぞれの手に、違和感が走る。
重み。
感触。
海記の右手には、錆びた短剣。
このみの手には、木製バット。
静太は小型ナイフを指で確かめる。
夢菜の手には懐中電灯。
「……いつの間に」
「シナリオ開始時の自動支給だな」
静太が淡々と言う。
「チュートリアル用の初期装備。選択権はなし、役割固定……親切設計」
「戦う前提だけどな」
海記が苦笑する。
その瞬間。
視界の端に、半透明のパネルが浮かぶ。
目的:地下室にある呪物を破壊せよ
制限時間:なし
推奨:探索
「地下室な」
静太が周囲を見回す。
階段は左右に分かれている。
正面には長い廊下。
夢菜がゆっくりと呟く。
「音がする」
耳を澄ます。
コツ、コツ、と。
どこかで足音。
「二手に分かれるのはなし。ホラーだぞ」
「賛成!」
右側の廊下へ進む。
壁には肖像画が並んでいる。
目が、やけに立体的だ。
静太が一枚に近づく。
視界に小さなウィンドウ。
観察判定
1D100 → 43
成功
静太が息を吐く。
「……塗料じゃない。本物の目玉を埋め込んでる」
「やめろ」
このみが後退る。
海記の胸に、じわりと重さ。
SAN微減:−1
数値は出ない。
だが確実に、削られている。
廊下の奥に扉。
取っ手は錆びついている。
海記が手をかけた瞬間。
開錠判定
1D100 → 78
失敗
ガチャ。
開かない。
「くそ」
静太が横から触れる。
再判定
1D100 → 12
成功
鈍い音とともに扉が開いた。
中は書斎。
本棚。
机。
ランプ。
そして机の上に、古びた日記。
「いかにも」
このみが言う。
海記が手を伸ばす。
その瞬間。
背後で、足音。
さっきより近い。
四人同時に振り返る。
廊下の奥。
暗闇の中に、
“立っている影”。
顔がない。
ただ、輪郭だけ。
ゆっくりと、こちらに向かって歩いてくる。
音はない。
絨毯に足跡だけが残る。
視界に赤いノイズ。
未確認存在を視認
SANチェック判定準備
このみの呼吸が荒くなる。
「な、なにあれ」
夢菜は、じっと見ている。
静太が呟く。
「来るぞ……」
影が、三メートル手前で止まった。
そして。
首が、ありえない方向に折れ曲がった。
SANチェック
1D100 ロール




