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Deep Archive Online  作者: しゃみぃ


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2/15

第一話 白い部屋

ゲーム機は、思っていたより簡素だった。


黒いヘッドギアと、薄いグローブ型のデバイス。

説明書は一枚きり。


本製品は四名同時接続専用です。

安全な環境でご使用ください。


「安全な環境ってなんだよ」


 このみが笑う。


 場所は海記の部屋だった。

 六畳のワンルーム。ベッドと机と本棚。

 四人でいると少し狭い。


 夢菜は床に正座したまま、デバイスをじっと見つめている。


 静太は既に仕様を読み終えていた。


「ログインは同時接続。誰か一人でも外れてたら待機室送りらしい」


「待機室?」


「休憩スペースみたいなもんだろ」


 海記はヘッドギアを持ち上げた。


 軽い。


 拍子抜けするほど。


「じゃあ……やるか」


 四人は輪になる。


 軽く手を触れ合わせる。


 まだログアウト用の円陣ではない。


 ただの確認。


「三、二、一」


 視界が落ちる。


 


 ――白。


 


 音が消える。


 体の感覚が溶ける。


 そして。


 


 足の裏に床の感触が戻った。


 


 真っ白な部屋。


 壁も、天井も、床も。


 光源は見えないのに明るい。


「……すご」


 このみが小さく言う。


 自分の手を見る。

 ちゃんとある。


 夢菜は周囲を見回さず、まっすぐ海記を見ていた。


「ここが、待機室?」


 静太が一歩踏み出す。


 部屋の中央に、半透明のパネルが浮かび上がった。


Deep Archive Online

First Observation Ready.


 観測。


 またその言葉。


「最初のシナリオだな」


 パネルに触れると、タイトルが表示される。


Scenario 01

悪霊の館

推奨SAN:低


「推奨って何だよ」


「減る前提かよ……」


 このみが震える。


 海記は深呼吸をした。


「大丈夫だろ。チュートリアルみたいなもんだ」


 そのとき。


 夢菜が、ぽつりと言った。


「……ねえ」


 三人が振り向く。


 彼女は、壁の一点を見ていた。


「ここ、少しだけ色が違う」


 全員で近づく。


 白の中に、ほんのわずかな濁り。


 気のせいと言われれば、それまでの違い。


 静太が首を振る。


「演出だろ」


「うん」


 夢菜はそれ以上何も言わない。


 パネルが変化する。


参加者確認

永田 海記

今関 夢菜

杉波 このみ

竹内 静太


全員の同意を確認しました。

観測を開始します。


 床が消える。


 白が崩れる。


 


 次の瞬間。


 


 四人は、古びた洋館の前に立っていた。


 曇天。

 湿った空気。

 鉄の門が軋む。


 窓の奥で、何かが動いた気がした。


「……帰れるよな?」


 このみの声が小さい。


 静太が確認する。


「戦闘中じゃなければログアウト可能。全員で円陣組めばな」


 海記は館を見上げた。


 胸が少しだけざわつく。


 それでも。


 ただのゲームだ。


「行こう」


 門を押す。


 音が、やけに生々しかった。


 その瞬間。


 館の奥から、子供の笑い声が響いた。


 海記は一瞬だけ振り返る。


 背後の道は、霧に溶けていた。



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