ウラシマ考(短編を書く前の下準備)
浦島太郎の短編でも書こうかと、下調べ。
最も古い登場は、タンゴの国、もとい丹後の国である京都府北部の若狭湾が舞台(その後、全国のご当地改変へ)。亀を助けたことにより、常世の国にある竜宮に招待されるというお話。八世紀の日本書紀や万葉集にも類似の話があり、千年以上前からある伝承である(ある2)。
さて、浦島太郎をリメイクするとすれば、やはり「タイムリープ(=ウラシマ効果)」をいかに扱うかがカギとなる(SFとして描くのが鉄板)。カメはいわゆるタイムマシーンということになる。
浜辺に打ちあがったタイムマシーン。
それを石や棒で叩き、部品を奪おうとしていた子供たちから、マシーンを奪い返し、修理して元の時代に戻ろうとするタイムリーパー、ウラジミル・マーロウの物語。一旦、海に潜るのは「波の振幅」を利用したタイムリープ法を示唆する(なんそれ)。竜宮城での光景は、時間の跳躍時に見た、常世(=別次元)の景色。そして、跳躍先の浜では、いよいよタイムマシーンが大破……煙を上げ、ウラジミルは「時間跳躍の反動」をモロに受けることとなり、最終的にはミイラ化して終幕。
―― て、ナニコレ。
ここで気になってくるのが、世界の伝承。
こういった話には、必ず「類型」が同時多発的に存在する。調べてみたら、案の定だ。
『ブランの航海』
7~8世紀ごろに成立したケルト=アイルランドの説話。フェヴァルの息子ブランが、常若の国へと渡航し、不老の楽園で時を過ごすというもの。帰還すると船は瞬時に塵となり消える。―― ほら、ほぼ同時代に、ほぼ同一の内容。
『オイシン(Oisín)の物語』
9世紀以降にまとめられたフィアナ騎士団の物語。前述のブランの航海に酷似する内容だが、登場人物は英雄や仙女などに格上げ。これもケルトものなので『ブランの航海』の剽窃、あるいは同一テンプレの変形説話か。
中国の伝説。
『列子』(4世紀ごろ編纂)に登場する「黄帝が西王母の宴に招かれた」「僧が神仙界に遊ぶ(=道教)」などの説話。西王母の宴は「蟠桃会」の起源となるエピソード。蟠桃は、平たい桃の品種。蟠桃会は、現在でいうところの桃の節句だが、神仙の桃の品評会みたいなものか。「僧が神仙界に遊ぶ」も、蓬莱山(=注・日本のそれではない)に絡む道教的伝承。―― ここでも仙界と人間界との時間の流れが、大幅に異なる。
ギリシャ神話。
冥界を往還するオルフェウス(これは古事記に出てくる黄泉比良坂の原型?)など、時間感覚の違う世界との往復の説話が多数。
―― こうやってみると、古代ギリシャや中国の伝承が、シルクロードを介し、変形しながら伝播していったというのが、自然な見方か。ケルト圏だけでも百年の時を経ず、このような亜種を生み出しているのだから、テンプレ部分以外の登場人物設定が、バラバラになるのも当然の話。
主な共通モチーフとしては「時の流れの異なる世界への訪問」「現実世界との時間のズレによる悲劇的結末」があるが、現実的なSFの範疇でやるのなら、重力の異なる星(超重力天体)の探索と帰還で、これが再現される(例『インター・ステラー』など)。
さて、ここまでを踏まえ、どういった物語を書くのが正解か。創作よりもむしろ、世界の類似伝承を、そのまま現代解釈した方が、面白そうでもあるのだが……。
童話『桃太郎の正体』(n4489lc)の派生エッセイ。
今回のフロウとしては、「伝承の起源と概略の確認」→「適当なアイデア出し」→ 「肉付けに使えそうな類似伝承の確認」―― ここまで。
このあと、通常なら執筆に入るのだが、ここまでで、すでに20分強の時間が経過していたので、筆者の一度の活動限界(通常小一時間)から逆算し、書ききれないと判断。ここで一旦ストップした。なので、残り時間でペロっとまとめておいたのが、これである。
普段は、メモも遺さないので、書ききれない場合はボツ。だが、これならまた続きも書けそうかな?(たぶん書かない。飽きたから)
類型作品の検索などには、ChatGPTを使用。調べものが秒殺なので、冗談や思い付きが、それっぽい形にしやすくなり、スゴイ時代になったものだ(これが一番SF的)。
※本文や構成は、もちろん筆者の手によるもの。今回は、筆者の思考の流れをそのまま再現したものです。