君が好き
一目惚れだった。
好きになったのは、社会人になって初めて乗った船上だった。普段は飛行機で帰省するのを、なぜだろうか。気づいた時には、北海道行きの旅客船チケットを購入していた。少し夜風をあたりに外に出た。周りはぽつぽつと照らされる船の光と普段では考えられないほど星が見えた。だが僕はそれが霞んでしまうほどに綺麗な海に目を奪われた。飲み込まれそうなほど美しい藍色に、星を反射させた姿はまるで美しいドレスのようだ。さらにザザアーっと聞こえてくる君の声はとても澄んでいて、それでいて力強く聞ていて涙すら出てくるほど心地よかった。僕は海を見たままぽつりと、つぶやいた。君に飛び込みたいな、、、。僕は社会人2年目の新人とも言えない丁度仕事に慣れてきたくらいの時だった。仕事はホワイトでもブラックでもない環境ではあったが不満はあふれ出るほどあった。一人称や謙譲語、クッション言葉といった揚げ足をとるような敬語の指摘。常にいつ怒られるのだろうや、なにか失礼はしていないだろうかと考える毎日。z世代とひとくくりにされ辞めるんじゃないの~と嘲笑されたり、ストレスはたまる一方だった。ふと悪いほうに考え始めると、もう止まらない。あと40年この生活なのか、僕は何のために生きているのか、このまま逃げ出したら?すべてを投げ出してしまいたい。そんなことを考え毎日を浪費していた。そんな毎日を浪費していた今日、君に出会ってしまった。すべての悩みが馬鹿らしく思えるほど君は大きくて美しく輝いている。僕は現代が嫌いだ。~世代といわれ最近の子はストレスへの耐性がないからすぐやめるという人たちが嫌いだ。そういう環境を作っていったのはあなたたちじゃないか。タバコが嫌悪される世の中が嫌いだ。僕は嫌悪するあなたたちが嫌いなのに悪者はいつもマイノリティ側なのだ。僕は、上司が同僚が部下が世間が敬語が仕事が政治がこの世の全てが鬱陶しく大嫌いだ!!!!、、、でも一番はそんな世の中に対抗も不満も面と向かってできず逃げることしかできない自分が一番嫌いだ。気づいた時にはむせび泣いていた。
僕はひとしきり泣いた後とてもすっきりした笑顔でそっと、君の胸に飛び込んだ。きっと数日後には少しのニュースになって、親がかわいそう、やはり最近の子はストレスに弱い、とこころない言葉をいう人、自殺するほど今の世の中は悪いと言ったりするものもあらわれ少しの間ネットの玩具にされるだろう。知るか。僕の人生は僕のもので誰のものでもない。僕自身のエンドロールは僕が決めるし、僕は好きな君と一緒になれてとても幸せだ。最後に僕は君に飛び込む前に、全財産を親に送金しておいた。この世の中に対するささやかな反抗として。