3.悟くん、おねえさんたちを遊びにさそう
「……待てよ。そういうコトでってどういうコトだよ……」
そう言うのは金髪さん。
「そういうコトでってどういうコトだよって、そういうコトだけど何か?」
悟くんは訳が解らないというように首を傾げました。
「はぁ?え、マジ、はぁああ!?!?」
「ざけんなよ!さっきからアタシらのことバカにしやがって!」
「ウチらがアンタより頭が悪いってコト!?イミわかんねー!!」
「マジでなんなん?!アンタまだ小学生でしょ!高校生ナメんなし!!」
4人のそれぞれのわめき声を聞きながら、悟くんは顔がニヤつくのを必死に我慢していました。
自分の思い通りになっていくのが面白くてたまらないのです。
「じゃあ証明してよ」
『……はぁ?』
悟くんのいきなりの発言に、本当に訳が解らないというように4人は首を傾げました。
「証明って、何を証明すんのよ……?」
と茶髪セミロングさん。
「だから、高校生が小学生より頭が良いっていう証明だよ。いやね、どうも君たちを見ていると、高校生が小学生より頭が良いとは思えなくてね」
「なっ……!」
「なんだい?証明出来ないのかい?」
と、安すぎる挑発をかけてみる悟くん。
怒りMAXのギャル女子高生たち。挑発に乗らないはずがなく……
「……いいじゃん、やってやろうじゃん!!そこまで言われて黙ってられっかよ!!」
女子高生たちは意気揚々と答えてくれました。
(計画通り、とはこのことだね)
真の悪者が言いそうな台詞を心の中で呟きながら、悟くんは満足そうに頷きました。
「よろしい。では、さっそく始めようか。何をするかは僕が決めてもいいかな?」
「はっ!エラそうにしやがって。あぁ何でもいいぜ!どうせガキのすることなんてタカが決まってんだし!」
そう言って笑い飛ばす金髪さん。そんなことにはお構い無しに、悟くんは言葉を続けます。
「そうだなぁ、それじゃあ……」
数秒考えた末、悟くんは言いました。
「鬼ごっこをしよう」
『…………はぁ?』
沈黙。
4人の女子高生だけでなく、周りでただただ様子を伺っていただけの店員さんたちもポカンと口を開けます。
「……プッ、プハハハハ!!いきなり何言い出すかと思えば『鬼ごっこをしよう』だって?!バッカじねえの!!アッハハハハハ!!」
と、お腹を抱えて笑い転げる金髪さんたち。
「マジガキじゃん!小学生どころか、アンタの方が幼稚園児レベル!!」
「あんだけゴチャゴチャ言っておいてさー!ケッキョクそれしか思いつかなかったってコトー!?」
「プククク…ちょっマジで、プクククク」
後ろの3人も悟くんを指さしてバカに出します。(人に指をさしてはいけません)
しかしそんな笑い合いも続いたのはたった3秒。
「おや?君たちのレベルに合わせてあげたんだけど、難しかったかな?」
ピキッ。
4人の中で何かが割れる音がしました。
そして――
「……いいぜ……やってやろうじゃん、鬼ごっこ……」
完全に悟くんの手中に落ちた瞬間でした。
-コ ノ カ ゛キ 5 6 ス-
そんな4人の心中をわかったうえで悟くんは再び満足そうに頷き、ルール説明を始めました。
「ルールは簡単。このデパートの1階を使って鬼ごっこをするだけさ。僕が逃げる役で君たちは鬼。とにかく4人で僕を捕まえるんだ。かくれんぼじゃないから、僕しか入れない男子トイレに潜伏するなどの行為は禁止。怖いお姉さんに追いかけられてますと言って店員や周りの人に助けを求めるのも禁止。あくまで逃げると追うだけの行為。ほら、これなら君たちにも出来るだろう?」
「あぁ~、よぉおくわかったよ、ありがとよぉクソガキィ……」
「どういたしまして」
そう言ってにっこり微笑む悟くんと、写真アプリで変形させた時ぐらいに顔を引きつらせる金髪さん。
「さて、それではさっそく始め……」
「ちょっと待って」
そこで悟くんの言葉をさえぎったのは茶髪セミロングさんでした。
「なんだい?始める前にお手洗いでも?」
「違うし!!作戦だよ、サ・ク・セ・ン!!鬼ごっこっつったってこう広いデパートなんだから、作戦タイムぐらいくれてもいいでしょ?」
「作戦、ね」
(なるほど、彼女は他の3人と違ってそれくらいの冷静さはあるようだ)
「ああ、もちろん構わないよ。作戦とは流石高校生。良い判断だね」
初めて悟くんに認められたと思い、4人は勝ち誇ったように胸を張りニヤリと笑いながら悟くんを見下しました。
結局見下されているのは自分たちだということには気づかずに。
「それじゃ、アタシらはさっそく作戦考えるから、アンタもせいぜいどうやって逃げるか考えときな!ちゃんと見張ってるからそのスキに逃げんじゃねえぞ!!」
金髪さんにそう言われて、茶髪ゆる巻きさんが他の3人の会話が聞こえないよう壁役になりながら、悟くんが何かしようものなら取って食わんとばかりに睨みつけてきました。まるで阿修羅像です。
「その子マジツヨだから、変なことしようと思わない方がいいよー?大人しくしてろってコト!」
クヒヒッと下品に笑いながら女子高生たちは作戦を立て始めました。
「……そうだね、僕は大人しくスマホでデパートの地図でも確認してるよ」
そう言って、悟くんも4人に背を向けたのでした。