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皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う【長編版】  作者: 下菊みこと


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皇帝陛下の愛娘は皇帝陛下に久々に甘える

リリアージュは思う。最近ニコラにべったりで、ナタナエルとの時間が取れていないと。


リリアージュは、思い立ったが吉日とばかりにナタナエルの私室に向かった。


「パパ!」


「どうした、リリアージュ」


ナタナエルはリリアージュをいつもと変わらず迎え入れる。リリアージュは机に向かっていたナタナエルに抱きついて、頬にキスをした。ナタナエルもリリアージュを抱きしめておでこと頬にキスをする。


「あのね、今日は一日パパと一緒に居てもいい?」


「好きにしろ」


「わあい!」


リリアージュはソファーに座ってナタナエルを観察する。


冷血の皇帝とか言われているナタナエルだが、ただ戦争と言う名の蹂躙を為尽くすだけではなくきちんと皇帝として国を回すための執務も行なっている。


なんだかんだで私財を使って奉仕活動もしているし、各国との外交も上手くやっている。まあ、外交に関してはナタナエルをやばい奴だと認識した各国が遠慮している部分は大きいが。


ナタナエルはなんだかんだでプロスペール皇国を大国にまで成長させるという偉大な功績を残した最高の皇帝なのだ。と、リリアージュは思う。


リリアージュは自分の女帝としての仕事は、ナタナエルが大きく成長させたこの国を守り育て、国民達が世界で一番幸せでいられる国にしていくことだと思っている。


リリアージュはナタナエルを深く尊敬している。だから、甘えたくても仕事の邪魔は決してしない。ただ、真面目に執務に取り組むナタナエルを観察して過ごした。


「…ふう」


ひと段落ついたナタナエル。リリアージュは待ってましたとばかりにナタナエルをソファーに呼んだ。


「パパ、お仕事終わり?」


「ああ」


「じゃあここに座って!」


ナタナエルが大人しくリリアージュの隣に座ると、リリアージュは何故かソファーから立ち上がる。


「リリアージュ?」


「肩揉みしてあげる!」


リリアージュはナタナエルの後ろに回り込み、肩を揉む。ナタナエルの肩は相変わらずがっちがちに硬い。


「うーん、凝ってるねー」


「手は疲れないか?」


「まだ揉み始めたばっかりだよー」


リリアージュは笑う。そして、ナタナエルの肩を強めに揉んでいく。


「パパ。お仕事は大切だけど、あんまり無理しちゃダメだよ」


「わかった」


「もう!本当にわかってる?ママも心配しちゃうんだからね!」


「心配させないよう努力する」


「そうしてください!」


親子のほのぼのしたやり取りに、ルイスはクスクスと小さく笑う。


やがてリリアージュの手に限界がきて肩揉みが終わると、ナタナエルがリリアージュにネックレスをプレゼントした。


プロスペール皇国では、女性の婚約が決まると親がネックレスをプレゼントするのが習慣となっている。他所に嫁いでいっても、決して縁は切れない。いつでも実家に帰って来ていいと、そういう意味合いで渡されるものだ。


リリアージュは他所に嫁ぐどころか女帝になるし皇配を貰い受けることになるが、そこはそれ。慣習なので問題ない。


ネックレスはリリアージュの誕生石のダイヤモンドがふんだんにあしらわれた煌びやかながらも上品なもので、ナタナエルの私費で買ったものである。


「リリアージュ、よく似合っている」


「パパ、こんな素敵なネックレス、ありがとう!とっても嬉しい!」


「他でもないお前のためだ。このくらい当然だ」


「パパ大好き!」


ちなみに、このネックレスのために国一番のデザイナーが起用され、国内の採掘場でとれた最高等級のダイヤモンドが使われ、国一番の工房でこのネックレスが作られたことをリリアージュは知らない。


このネックレスを作るだけで国の経済が大分回ったので、リリアージュは各方面から感謝されていたが、それもリリアージュは気付かない。ナタナエルが気付かせない。


「パパ、まだ次のお仕事まで少し時間があるでしょう?一緒にお昼寝しようよ」


「構わないぞ」


リリアージュはナタナエルと一緒にナタナエルの私室のベッドに横になる。ナタナエルにとんとんと背中を叩かれて、次第にウトウトとしてナタナエルの腕枕で眠った。


ナタナエルも、そんなリリアージュのおでこと頬、瞼にキスを落としてからスヤスヤと眠りについた。


ナタナエルは夢を見た。リリアージュとナタナエル、リリアの三人でベッドで横になってお話をする夢だった。


リリアージュは無邪気な笑顔でリリアにネックレスを見せて、リリアはネックレスがよく似合っているとリリアージュをとても褒める。私からも何か贈りたいけれどそうもいかないからと、リリアージュの頬とおでこにキスをしていた。リリアージュは最高の贈り物だと喜んだ。


ナタナエルはそんなリリアにキスを贈る。おでこに頬に、瞼に鼻先に、そして唇に。リリアージュはそれを間近で見てきゃーきゃーと黄色い声をあげる。リリアは幸せそうにそれを受け入れていた。


「リリア、愛している」


「私も皇帝陛下を愛しています」


「もちろん、リリアージュも愛している」


ナタナエルはリリアとリリアージュを両腕で抱えるように抱きしめた。リリアージュは嬉しそうに笑う。リリアはそんなリリアージュを慈しむように見ていた。そして、リリアは両腕を広げてナタナエルとリリアージュを抱きしめる。リリアージュも同じようにナタナエルとリリアを抱きしめた。


「皇帝陛下がやっと前に進めて、私は一安心です」


「可愛いからと言っていつまでも縛り付けてはいられないからな」


「ふふ、でも、これからもずっと守るのでしょう?」


「当たり前だ。お前との間に出来た大切な一人娘だぞ」


「ふふ、皇帝陛下ったら。…リリアージュ、皇帝陛下をこれからも尊敬して大切になさい。貴女の幸せを心から祈っているわ」


「うん!ママも見守っていてね!」


「もちろんよ。いつまでも見守っているわ」


「…もう、目覚めの時間か?」


「ええ。皇帝陛下、愛しています。いつまでも見守っていますから、どうかご自愛くださいませ」


「わかった。無理はしないようにする」


「たまにはルイスでも良いですからマッサージを受けてくださいね」


「ああ。…愛してる」


そこで目が覚めた。ナタナエルは優しい夢を見て幸せな気分で、隣で眠るリリアージュを見る。リリアージュの瞼にキスを落としてから、リリアージュを起こさないようにそっと離れて仕事に戻った。

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