皇帝陛下の愛娘はデートを提案する
リリアージュは、恋愛小説を片付けた後ニコラとシモン、ラウルを庭に呼び出し、エミリアとレオノールには部屋で待っていてもらい意を決して言った。
「あのね、私…真剣に、ニコラとシモン、ラウルとの関係を考えたり、みんなを観察してみたり、恋愛小説でお勉強してみたりしたんだけど…」
「ええ。落ち着いて、ゆっくりで大丈夫ですよ」
ニコラが優しくリリアージュを甘やかす。
「うん、ありがとう。あのね、やっぱり私、今のままじゃ一生どの道も選べない気がするの。だからこんなこと提案するのもアレなんだけど…」
「リリアージュ様が決めたことに異論はない。なんでも言ってみろ」
シモンが胸を叩く。その様子にリリアージュは肩の力を抜いて話せた。
「うん。三人と別々にデートしてみたいなって」
「別々にデートですか。わかりました」
さらりと受け入れるラウル。
「え、いいの?」
困惑するリリアージュに、三人は笑った。
「言っただろ、リリアージュ様が決めたことに異論はない」
「僕としては、むしろリリアージュ様とデートの機会をいただけて万々歳です」
「俺も嬉しいですよ、リリアージュ様」
三人の優しさに、リリアージュは安堵した。
「日取りはいつといつといつにします?」
「ニコラとはこの日、シモンとはこの日、ラウルとはこの日がいいな」
「わかりました。では、予定を空けておきますね」
「俺もその日フリーだから空けとくわ」
「僕もルイスさんに頼んで侍従としてのお仕事は一旦お休み、ただのニコラとしてデート出来るようにしますね」
意外とすんなりとデートの提案が受け入れられ、リリアージュはほっとした表情で三人とともに部屋に戻る。四人の表情に大体察したエミリアとレオノールは、リリアージュに美味しいお茶を淹れて労い、三人には渋いお茶を出してチクチク嫌がらせをした。エミリアとレオノールだって、リリアージュが大好きなのである。三人ともそれをわかっているため、文句を言えない。
一方で魔水晶でリリアージュを見守っていたナタナエルは、リリアージュがデート…と落ち込んでいた。ルイスはそれを横目で見て、なんとなく、最終的にはうちのニコラが選ばれるのではと期待に近い直感を働かせていた。ナタナエルに言うとまたタライを落とされるので黙っておくが。
リリアージュはとりあえず悩みが解消されそうで安心した。無邪気に笑うリリアージュに、ナタナエルはまだ手放したくないなと困って少し笑った。




