皇帝陛下の愛娘は恋をしてみたい
困惑したリリアージュはとりあえず本に頼ることにした。恋愛小説を片っ端から図書室から持ち出し、ひたすら読む。
エミリアとレオノールは一緒に読みたい!と混ざってリリアージュと共に大きなベッドに横になってゴロゴロと読む。
ニコラとシモン、ラウルはそんなだらしない三人に目のやり場に困りつつ、警護をしながらも積み上げられた恋愛小説の中で気になったものをソファーに座って読む。
基本的には女性向けジャンルでエッチな描写のないものなので、ニコラとシモン、ラウルは結構早く飽きた。…が、もしかしたらリリアージュのお気に入りのシチュエーションがあるかもしれないと勉強のつもりで根気強く読み込む。
エミリアとレオノールはきゃっきゃとはしゃぎながら、リリアージュに自分の読んでいるシーンを見せては素敵ー!と騒ぐ。リリアージュは勉強のつもりで恋愛小説を読んでいたが、次第にエミリアとレオノールの雰囲気に当てられて楽しく読むことが出来るようになった。エミリアとレオノールにもお気に入りになったシーンを見せてはきゃーきゃー騒ぐ。それに聞き耳を必死に立てるニコラとシモン、ラウル。虎視眈眈とリリアージュの好きなシチュエーションを知ろうと狙っている。
そしてそれが面白くない男が一人。魔水晶でリリアージュを見守りつつ執務をこなしていたナタナエルである。リリアージュがとうとう恋愛小説にまで興味を持ち始めた。つまりはそういうお年頃ということかと落ち込む。そんなナタナエルを見て吹き出しそうになっているルイスに、ナタナエルは魔法でタライを落っことして脳天に直撃させた。大人気の無い大人である。
そんな中で、楽しく恋愛小説の世界に浸りながらエミリアとレオノールとイチャイチャしているリリアージュは確かに強く思った。恋をしてみたいと。
「ねえねえ、恋ってどうすれば出来るのかな?」
「恋とはするものではなく落ちるものですよ、リリアージュ様」
「エミリア様名言ー。でも案外、意外と近くに想い人がいたりして?」
「近すぎて気付かないってこと?」
「そうそう」
「リリアージュ様なら有り得ますね。一度距離を置くか…逆に、急接近してみてはいかがでしょう?」
「急接近?」
「ええ。デートに誘ってみるとか」
「…複数の男性を別々に誘うのって有りなのかなぁ」
「んー。なしよりのなしかなぁ」
「けれど、決めかねているようなお相手達なら仕方がありませんわ。あくまで誠実に、事情を説明した上で提案されてはいかがでしょう?」
「そっかぁ…」
ニコラとシモン、ラウルは自分達のことだと気付いているのでドキドキする。リリアージュに意識されているのがなによりも嬉しい。それに、リリアージュとのデート。例え選ばれなかったとしても、一生の思い出になる。まあ、三人とも選ばれるつもり満々ではあるが。そのために恋愛小説で今必死に勉強しているのだ。
リリアージュはそんなことにも気付かないで、また小説を読み進めてはエミリア、レオノールと無邪気に笑う。ナタナエルは寂しさで凍り付きそうだが、それでもリリアージュの幸せを祈った。




