皇帝陛下の愛娘は自分の気持ちを整理する
ウジェーヌ王国から戻ってすぐの夜、リリアージュは夜更かししていた。蜂蜜たっぷりのホットミルクを飲みながら、一人で考え事に耽る。
リリアージュは、恋愛結婚がしたい。ナタナエルからも恋愛結婚しろと言われているし、どうせなら愛するパパとママのような愛に溢れた結婚をしたかった。
しかしリリアージュは、まず恋をしたことがない。いい加減、これはまずいとは思うが…ときめくというのがいまいちピンと来なかった。
当たり前である。ナタナエルの目がどこにあるかわからないのにリリアージュに特攻するなど余程の愚者かナルシストくらいのものである。
しかし、そんな状況にリリアージュは気付かない。親離れしてしまえば結構早く心ときめく恋が出来そうなものだが、リリアージュは親離れなどまだまだ先だと考えている。だってパパが大好きだから。
つまるところ、現状を打破するにはリリアージュ自身が動くしかない。
そこだけはさすがにリリアージュもわかっているので、後はどう動くかである。
…ただ、なんとなく。自分が選ぶとしたら、ニコラかシモン、ラウルな気がした。大好きなお友達でずっと一緒にいたからこそ、これからの人生を寄り添って生きていくならやっぱり彼等しか考えられない。それに、社交界にデビューしたあの日、約束したのだ。三人とのことを、きちんと考えると。
ちなみに、リリアージュは同じくらいエミリアとレオノールも大好きだが、女の子では皇配にはなれない。血を絶やすことは出来ないから。それがリリアージュにはとても残念に感じた。でも、例えば自分が男の子だったとしたら、ニコラとシモン、ラウルと結婚出来ないのを残念に感じていただろうなとも思う。みんな本当に大好きなのだ。
リリアージュは、明日になったら一度お友達五人のことをもう一度良く観察して見ようと思った。そして、身の振り方を決めるのもいいだろう。そうと決めたらもう寝よう!リリアージュはテーブルにホットミルクの空になったコップを戻して、ベッドに潜り込んで寝た。熟睡である。
やはりリリアージュには悩みなど無縁な無邪気な笑顔がよく似合う。ナタナエルとリリアージュを見守る温かな光は、リリアージュの頬をそっと撫でた。




