皇帝陛下の愛娘は求婚される
リリアージュがプロスペール皇国に戻ってから数ヶ月、ウジェーヌ王国からまた招待を受けることになった。リリアージュはまた、いつものメンバーと一緒に行くことになる。ナタナエルは正直今度は何の用だとイライラしていたが、執務をこなしつつ魔水晶でリリアージュを見守る。
リリアージュはウジェーヌ王国に転移魔法で移動すると国王と王太子の待つ宮殿に入り、そこで以前よりさらに豪華な歓迎を受けることになる。
なんだなんだとびっくりしていたら、今度は神殿へご案内しますと新しいオアシスの中に作られた立派な神殿に通された。
「あの、なんで私に神殿を見せてくれるのですか?そもそも今回の目的はなんですか?」
あまりにも意味のわからない展開に、リリアージュは思わず本音をぶちまけた。
「第一皇女殿下が我が国の女神様だからです」
王太子がリリアージュに語りかける。
「え?」
「今までの歴史を見ても、ウジェーヌ王国にこれほどの支援をしてくださったのは第一皇女殿下のみ。であれば、女神として崇め仕えるのは我々の当然の役目です」
王太子の言葉にリリアージュは頭が痛くなる。調子に乗らなければよかった。
「ですから、第一皇女殿下。いえ、リリアージュ様。どうかこの神殿に住み、永住していただきたい」
「私は将来父の後を継ぎ皇太子、ゆくゆくは女帝となるので無理です」
「皇位継承権を持つのは緑の髪の皇族の血筋のものだけ…しかし、その条件を満たすのは貴女だけではないでしょう?」
「それはそうですが、父の子は私だけです」
「ここにいてくだされば、毎日素敵な貢物を捧げます。美味しい食べ物、美しいドレス、キラキラ輝く宝石、全てが貴女の思いのままです」
「…はっきり申し上げて、迷惑です」
リリアージュはこれはもう何を言っても通用しないと諦め、決定的な拒絶を示す。
「…そうですか。では…」
王太子はリリアージュの前に跪いた。
「私と結婚して、王妃になっていただけませんか?」
「はあ!?」
ニコラ、シモン、ラウル、エミリア、レオノールが立場も忘れて声を上げる。王太子は若干不快そうな表情を見せるも、再び微笑みリリアージュに答えを迫った。
「王妃として、贅沢な暮らしを約束します。どうでしょうか?」
リリアージュは断る気しかない。断る気しかないが、どうしたら円満に断れるか…と思案していたら、ここでは聞くことが出来ないはずの声が聞こえた。
「うちの娘に手を出すな」
冷血の皇帝のお出ましである。




