皇帝陛下の愛娘は極大魔法で植物を育てる
用事も済ませたので適当なタイミングでさっさと帰ろうと思っていたリリアージュだが、次の日の朝国王からもう一つお願いをされることになる。
「申し訳ないが、もう一つ頼まれ事をして欲しい」
「なんでしょうか?」
「この砂漠に、もう一つオアシスを作って欲しいのだ」
ウジェーヌ王国は、広大な土地を持つがそれは全て砂漠。人が住めるのは大きなオアシスがいくつか密集しているこの場所だけであり、オアシスからはみ出さないように生きるのは子供がどんどん生まれ人口が増える中では結構無理があった。
もう一つ、この広大な砂漠の中の少し離れた場所に大きな大きなオアシスさえ出来れば、人口の増加に対応できる。国王は、恥を承知でリリアージュに頭を下げた。リリアージュは慌てて顔をあげさせて、了承する。
「わかりました。頑張ってみます」
「礼を言う。…あとで何か贈らせて欲しい」
「いえ、礼などいりません。ただ、今後もプロスペール皇国と仲良くしていただければ幸いです」
リリアージュの言葉に、またも彼はほうと息を吐く。その目は崇拝の色を宿していた。
リリアージュは、早速オアシスを作って欲しいという場所に足を運んだ。ニコラ達が見守る中で、極大魔法を使い砂漠の中のいくつかの場所に穴を開けてため池を作り、さらに極大魔法でそのため池に水を溜めた。昨日リリアージュの極大魔法を見た国王と王太子、ニコラ達はリリアージュを褒め称え、妖精王の加護の力を見たいとつめかけたウジェーヌ王国の貴族達は皆あまりの光景に我が目を疑った。
リリアージュは魔力を大量に使ってさすがに疲労が出てきたが、このくらいならばまだいけると判断して果実水を飲んで少し休憩をした。その後今度は昨日の夜デザートとして出された美味しい果実がなる木を極大魔法で生み出して育てて、木の実がたくさん取れるオアシスを完成させた。
これにはさすがに、国王と王太子もびっくりした。この木は実は物凄く美味しいが育てるのが大変に難しく、それ故に最高級のフルーツなのだ。それが、こんなにも育ち、実りまで蓄えている。今すぐにでも収穫して、さっさと他国に売りつけたい。この木の実はなぜかこの砂漠でしか実を付けず、このウジェーヌ王国の大事な収入源だった。ウジェーヌ王国が領地のほぼ全てが砂漠でありながら栄えている理由はそれだった。これは、国王や王太子、貴族達にとってはもはや奇跡だった。
これが、リリアージュがこの国の女神に祭り上げられる瞬間だった。




