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皇帝陛下の愛娘は可愛い従妹を可愛がる

「従妹?エレーヌが遊びに来るの!?」


「ああ。またリリアージュの叔母と来るらしい」


「やったー!パパありがとう!」


「ああ」


無邪気に喜ぶリリアージュに、ナタナエルは許可を出してよかったと思いつつリリアージュの頭を撫でた。


あの子猫事件の後、リリアージュの叔母はリリアージュの遊び相手になるため良く遊びに来ていた。それは、叔母にエレーヌという一人娘が生まれても、リリアージュに友達が出来ても変わらない。母によく似た叔母によく懐く、髪色以外母そっくりのリリアージュ。他人から見れば親子のように映るかもしれない。


リリアージュは、従妹のエレーヌとも仲が良い。エレーヌもまた叔母そっくりであり、他人が見たらリリアージュと姉妹のように映るだろう。幼い頃からリリアージュから可愛がられて育ったエレーヌは〝リリアージュお姉様〟が大好きである。


「リリアージュお姉様ー!」


「エレーヌ!叔母様もいらっしゃいませ!」


「ふふ、また来てしまいました。エレーヌが次はいつリリアージュ様に会えるのかと落ち着きがなくて」


「わあ…!エレーヌ、そんなに会いたがってくれたんだね!大好きだよ、エレーヌ!」


「私もリリアージュお姉様が大好きです!」


ぎゅうぎゅうと抱きついてリリアージュから離れないエレーヌ。ナタナエルは、なんとなく面白くない。


「おい、仮にもリリアージュの従妹ならもう少し落ち着きを持ったらどうだ」


「皇帝の伯父様はリリアージュお姉様が取られるのが嫌なだけでしょ。あっかんべーだ!」


「…このクソガキ」


「こら、エレーヌ!申し訳ありません、皇帝陛下」


「ふん」


「もう、エレーヌ。エレーヌはとっても可愛いんだから、あっかんべーなんて品のないことしちゃだーめ」


「はい、リリアージュお姉様!」


この通り、リリアージュはエレーヌに甘々である。これだけでリリアージュがナタナエルの血を色濃く受け継いでいるのがわかる。


「エレーヌ、ちょうどいい時間だしお庭でティータイムにしようよ!」


「はい、リリアージュお姉様!」


エレーヌはリリアージュに引っ付いてさっさと庭に出る。リリアージュの叔母とナタナエルは、それを見守る。


「…あのちんちくりんな赤子が、ずいぶんとうるさく育ったものだ」


「リリアージュ様から大層可愛がられて育ちましたから、とても敬愛しているのです。普段はもう少しだけ、大人しく出来るのですが」


「だが、本質はじゃじゃ馬だろう」


「ええ、とっても。でも、あの子が幸せなら私はそれでいいと思っています。一応、人前では淑女の仮面を被ってはいますし」


「ふん」


あの子が幸せならそれでいい。ナタナエルには、痛いほど理解出来る。リリアージュさえ幸せならば、自分もリリアージュの好きにさせるだろう。


「リリアージュ様が少しでも寂しくないようにとエレーヌをよく連れてきましたが、リリアージュ様と上手くいっているようでなによりです」


「あれだけ小さな赤子の頃から見ているんだ、リリアージュも甘くなる」


「あら、では皇帝陛下も?」


「俺が一番可愛いのはリリアージュだ」


ふふ、とリリアージュの叔母は笑う。なんだかんだで、リリアージュのお気に入りであるエレーヌにも甘い方なのは知っているのだ。


「なんだ?」


「いえ。皇帝陛下からこんなにも愛されているリリアージュ様は、世界一幸せですね」


「当たり前だ。リリアージュが幸せでないなら意味がない」


リリアージュの幸せのために生きている。それがナタナエルという男である。


「そういえば、この間また父が皇帝陛下に親戚筋の若い女性を紹介しようとしたとか。申し訳ございません」


「…どうにかしてくれ。俺はリリアージュ以外子供はいらない。リリアージュに兄弟などいらない」


「父なりに、リリアージュ様を思っての行動なんですけどね…気遣いの方向性が斜め下なんですよね…」


リリアージュがエレーヌを可愛がるのを見て、やはりリリアージュに兄弟姉妹をと勧めてくるリリアージュの祖父。決して悪意はないが、善意だけでもない。新しい皇后に、自分が紹介してやったと恩を売る目的もある。もはやナタナエルからは面倒な爺としか思われていない。それでも重用されるのは、ただただリリアージュが懐くお祖父ちゃんだからである。


「…まあ、リリアージュが皇太子となれば少しは静かになるか。それを思えば十八になるのが待ち遠しいな」


「あら、子供の成長などあっという間ですよ。後でやっぱりまだ成長するななどと仰らないでくださいね?」


「あの子が大人になろうと、あの子は俺が見守る。問題ない」


「もう。皇帝陛下、リリアージュ様もいつかは恋をして親離れなさるのですよ。いい加減子離れしないと」


「…恋か。皇配になる男は幸せ者だな」


いつもリリアージュに恋は早いと呪文のように唱えるナタナエルの成長に、リリアージュの叔母は感動する。


「皇帝陛下が…ついにリリアージュ様の恋を…!」


「まあ、皇太子になる頃までには皇配を見つけないといけないしな。じゃないとあの爺がまたうるさくなる」


「ああ…皇帝陛下の意向を聞き恋愛結婚を認めてはいますが、リリアージュ様に良い人が見つからなければ良い御令息を紹介するのだと息巻いてますしね…」


「うるさくてたまらん。本当になんとかしてくれ」


「重ね重ね申し訳ございません…」


ふとリリアージュ達の方に目をやれば、エレーヌの髪型をあれこれと弄るリリアージュと嬉しそうなエレーヌの姿。本当にあのうるさい爺の血が入っているとは思えないが、残念ながら二人の大好きなお祖父ちゃんである。


そんなリリアージュ、ナタナエルの方を向いて無邪気に笑って手を振ってきた。そんなリリアージュにナタナエルは微笑んで片手をあげる。そんなナタナエルを、リリアージュの叔母は微笑ましく思っていた。

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