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シリウスと結婚前夜

シリウス視点です

「ここにも長くいましたが、今日で最後ですね」


 王城のいつもの聖堂。久しぶりに袖を通した司教服でついつい独り言をもらした。


 昨日のコルテッサのとのデートは自分でも上手くできたと思う。コルテッサもとても喜んでくれた。指輪も渡せた。くちづけをして、そのあとも――


「……だめですよ、シリウス。僧職から退いたとはいえ、節度は守らねば」


 慌てて、自らに戒める。


 しかしコルテッサもコルテッサだ。

 待ち合わせから、あんな可憐な姿を見せられては平常心でいられるはずもない。


 街に出たこともないと聞いて、ついつい彼女を閉じ込めていた城の者たちに怒りがわいてしまった。


 いつも穏やかな表情を心掛けているはずだが、つい彼女のこととなるとムキになってしまう。これも愛するが故という事だろうか。


 初めての街の散策にコルテッサはとても笑顔だった。領地に落ち着いたならば、もっといろんな場所に連れて行ってあげたい。彼女はもっと自由にしてあげるべきだ。


「まぁ、それもこれからの私の頑張り次第ですね……」


 月明りの差す聖堂でひとり呟く。

 

 いや、ひとりではないな。彼が来ていたか。


「教会きっての敏腕捜査官も、結婚前夜は緊張するか」


 暗がりから出てきたのはハイデルマイアだった。


 私と結婚するからといって、教皇庁からコルテッサへの監視が外れるわけではない。私ももちろん注意はするが、彼女の夫となった私には公正な目というものは持てるべくもない。


 その為に、新たに監視役として派遣されたのが、ハイデルマイアだった。

 

「君にも迷惑をかけますね」


「何かまわない。しばらく田舎でゆっくりするのも悪くないさ」


「領地のほうはどうでしたか?」


「酷いものだな。荒れているよ。これから大変だぞお前」


「覚悟の上ですよ。コルテッサには苦労を掛けてしまいますが……」


 ハイデルマイアには(せん)だって、領地の視察(しさつ)を頼んでいた。領地の教会は荒れ果てているとのことで、一旦王都に戻ってきたのだ。


「気になる話を聞いたぞ。プリンシパル領には古くから死霊伝説が多いらしいじゃないか。死霊の大穴という場所あると聞く。死霊が出るのか?」


 ハイデルマイアの言うのは、領地のさらに僻地(へきち)。荒地にある大洞穴(だいどうけつ)のことだった。

 大地にぽっかりと垂直に空いた大穴は日の光も届かず、どこまで深いのか誰も知らない。


「昔から地獄に通じていると言われている地です。その場所に死霊が多いという話は特に聞きません。祖父の見解ではその不気味さから死霊と結びつけられただけでは、という事でしたが」


 そもそも近年、死霊じたいがマルグリッド全域で目撃件数が減っている。

 私の見立てだと、残らずコルテッサの影に収納されているのだと考えているが……。


「姫様に死霊を使う事を禁止するのか?」


「それはしたくありませんね。彼女にとって死霊達は、かけがえのない友であり、家族ですから」


 おそらく私が言えば、彼女は死霊を使う事をやめるだろう。それぐらいの影響力はあると自覚はしている。だがそれが彼女のためかというと、疑問に思う。


 今後、問題が起こるとすれば、対人間(たいにんげん)でだ。死霊はそこに存在するだけで、人を不安定にさせる。私のように、訓練を積んだものや、リリアさんのように、先天的に死霊の影響を受けない人でなければ彼女と普通に接するのは難しいだろう。


(やかた)の使用人たちとの関係も、課題ですね……」


 私のつぶやきに、新任領主様は大変だな、とハイデルマイアは笑った。

 

「――まぁお前たちの人生に幸が多いことを祈るよ」


「なんですかそのやる気のない祝福は。司教として最悪ですよ」

 

 と私も笑った。


 コルテッサの新たな監視役として、彼が来てくれたのは正直心強い。

 事情を知っている彼ならばいざというときでも相談ができるし、こう見えて、人一倍公正な人物だから、私がコルテッサを愛するがゆえに、彼女の歯止めにならないときも躊躇なく止めてくれるだろう。


「ああ、そういえば、さっき館とか言ってたけどな」


 思い出したように、ハイデルマイアが言う。


「お前たちの新居、半壊してるぞ」


読んでくださりありがとうございます!

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楽しいお話を書いていくつもりですので、今後ともよろしくお願いいたします。

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