表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/43

第34話「マイラとの和解!?」

翌朝。


「ふあぁ…」

私はあくびをしながら自分の部屋から廊下へ出た。


「おはようございます、ひな様…いえ、システィーナ様」


目の前には、にこりと笑いかける執事のマーカスがいた。


「朝から大きいお口ですねぇ」


「ふぁっ!?」

油断した顔を見られておもわず恥ずかしくなる。


「ふふ…朝から恥辱にまみれた女性のお顔を拝めて最高の朝になりました…」

そう言って恍惚の表情を浮かべるマーカス。


…な、なんか朝からすごいこと言ってるな、この人…!

いつもながら、ギリギリアウトな規格外執事だ…



「今日もてっきりフィリス様のお部屋でお楽しみのことと思いましたが、違ったのですね…」


「え、ええ…私が一緒だとフィリス様の睡眠の邪魔をしてしまうようなので、昨日は別々に寝ることを提案しまして…」


「…なるほど、それで朝食前に拗ねてしまったフィリス様のご機嫌をとりに来たわけですね…」


…うぅ、鋭い…


「…でも、甘やかすだけが調教ではないですからね…」

マーカスがニッコリと笑う。


調教って何っ!?

何かすごい誤解をなさっている!!


「マ、マーカス!?」


「大丈夫です、聞き耳など立てたり致しませんから。」

「では、ごゆっくり…」


私に発言の機会を与えないまま立ち去ろうとして、再び足を止めた。


「…ああ、そうだ…」


「このところ隣国で、我が国に向けて戦の準備をしているというきな臭い噂があるようです…」

「!!」


「…少し前にもスパイ騒動がありましたし、システィーナ様も十分にお気をつけください…」

マーカスは意味深な顔をして言った。


「………」

私は真っ直ぐにマーカスを見つめた…


「……あなたは、この世界を元にあのゲームを作ったと言っていたけど…未来のことをどこまで知っているの…?」


「…これから先に起こることを全て知っているの…?」


「…まさか…私は神ではありませんからね…」

そう言って、再び背中を向ける。


…どうやら質問に答える気はなさそうだ…


私は不安で顔を歪ませた…


「ふふ…そんな顔をしては、せっかくの悪役令嬢面が台無しですよ…?」

いつの間にかこちらを見ていたマーカスが口を開く。


「あなたの魂はとても美しいのに、そんな顔ばかりしていたら魂が穢れてしまいます…」


「魂が…?」


「ええ…少々怯えが強いようですが…」


ビクリと身体が勝手に跳ねる。

「!?」


「…まあ、そんなあなたでしたら、きっと明るい未来を引き寄せることも可能でしょう…」


「…!?」


「…魂が綺麗だと、戦争を回避できるんですか?そこには何か関係が……!?」


「いいえ、何も?」


ないのかい!



「ですが、望む未来とそれに伴う感情をリアルにイメージすることで、望む未来に近いものを引き寄せることはできます。」


「…ただ、幸せを信じて生き続けることが、皆さま思いの外難しいようなので…」

「…システィーナ様も、決して闇落ちなどされませんように…」

マーカスが穏やかに微笑む。


「………」


「……いま盛大に闇落ちフラグ立てました…?」


「ふふ…どうでしょう…?」


笑ってる場合かっ!!


「不穏なことを言うのはやめてくださいっ!!」


「ふふふ…これは失礼致しました…」


そう言って笑いながら、マーカスは再び去って行った。


…全く…


それにしても戦争だなんてきな臭い…

…後でリードベルにも詳しい話を聞いてみよう…




それはそうと…


「ふぅ…」


気持ちを切り替えて、フィリスの部屋の前で私は深呼吸をする。


昨日は最終的に拗ねるフィリスをそのまま置いていくような形で出てきてしまったから、ちょっとだけ気まずい…


私は躊躇いながらも、フィリスの部屋の扉をノックする。


コンコン…


「………」

返事がない…



「フィ、フィリス…?入るよ〜?」



カチャリ…


まだカーテンは空いておらず、部屋は暗いままだ。


「フィリス…?」


そっとフィリスのベッドに近づいてみると、フィリスは布団をかぶって寝ているのか、姿が見えない…


…ありゃ…


もしかして、怒って不貞腐れちゃったのかな…?

それともただ、寝てるだけなのかな…?


布団の中をそっと覗こうと近付くと…


突然布団がバッと開いて、あっという間にフィリスの腕の中に閉じ込められた。


「!!」


「クス…おはよう…♡」


「フィリス!!」



「……もう拗ねてないの…?」

私は目を丸くして、いつの間にか真上にいるフィリスを見上げる。


「…もちろん、拗ねてるよ…」

「君とはもう片時も離れたくないって言ってるのに、あんな冷たいこと言うんだもん…」


「だからお返し…」


「んぐ…っ」

私の両頬を押さえ込んで、強引にキスをした。


「…君は、手に入れたと思ったら、すぐに僕の指の間からすり抜けていくんだもん…」

「すごく…不安になるよ…」


フィリスが苦しそうな表情を見せる…


それを見ると、私まで切ない気持ちになる…


「だって…フィリスが心配だから…早く元気になってほしくて…」

おもわず、見上げる目から涙が溢れる…



「…ごめん…」

「君の気持ちは分かってるよ…」


「…君のことが好き過ぎて我儘言っちゃった…」

そう言って私の目元にキスをした。


「…愛してるよ、システィーナ…」



「…ありがとう…フィリス…」



「………」


フィリスは人知れず悲しげに笑った…




ーーー




その日の夕方、マイラはリードベルを探していた。

部屋にはいなかったから、兵士の訓練場の近くまで探しに来てみたが、やはりどこにもいなかった…


手には、午前中に街で買ってきたクッキーの詰め合わせを持っている。

街でいま一番人気のお店にわざわざ並んで買ってきたのだ、きっとリードベルも喜ぶに違いない…


胸を躍らせてリードベルを夢中で探した。

…思えば、こんなにも誰かを夢中で追いかけたのはいつぶりだったか…



ーーー



「………」


しばらく探したが、結局リードベルには出会えなかった…

入れ違いで部屋に戻ったのかもしれない…


がっかりして屋敷へ戻ろうと歩いていると、築山のようになっている所で、リードベルが一人でこちらに背を向けて座っているのが見えた。


「!!」

マイラは再び胸が躍って、リードベルの元へ走り寄って行った。

「リードベル様!!」


「こんな所にいらし…」


「おう、マイラか!」

振り返ったリードベルは何かを食べていたので、咄嗟に持ってきた紙袋を後ろに隠した。



「…どうかしたか?」


「い、いえ…たまたま散歩をしていたらリードベル様をお見かけしたので…」


「そうか…」

そう言いながらも、リードベルは夢中で何かを食べていた。


「…あの…リードベル様…それは一体…!?」


それを聞かれたリードベルは目を輝かせた。


「おう、これか!?これはアイツが作ったクッキーだ!」


「アイツって…」


…もしかしなくても十中八九システィーナだろう…


「アイツ、普段はガサツなくせに、クッキーだけはうめぇんだよ!これだけは他の連中にあげたくねーから、一人でこっそり食べてたんだ…」

そう言って笑う。


「やっぱり店で買ったのとは何かが違うんだよな〜!」

「今度作り方を聞いてみるかな…?」


「………」



「お前も一つ食べるか?」


「…い、いえ、私は…いりません…」

「…そろそろ戻りますので…」

そう言って、後ろに隠したクッキーに気付かれないように、そっと後ずさる…


「そうか、気をつけろよ」


「………」

マイラは、初めて芽生えた感情が心を振り乱すのを感じた…




ーーー




その日の夕方、システィーナは、中庭でルルと遊んできた帰りに、人相の悪いマイラと玄関で遭遇した…


…うわ…なんか機嫌悪そう…タイミング悪っ!


私はマイラに気付かないふりをして、先に玄関の扉を開けようとすると、後ろから声をかけられた。


「ふんっ!勝ち組女が…」


うわぁ…いきなりケンカ腰で話しかけてきたよ、この女…


やれやれとばかりに振り返って対応する。


「…何の話…?勝ち組って何のこと…?」



玄関のドアの前で、二人が向かい合う。



「フィリス様とリードベル様に愛されて、さぞかしいい気分なんでしょうねぇ!?」

そう言って私を睨み付ける…


「…ん?フィリス様はともかく、なんでリードベルもそこに入って来んのよ!?」


「……へ?」

マイラが気の抜けた顔をする。


「まさか…気付いてないの…?」


「気付いてないって、何が…!?」

システィーナが訝しげな顔をする。


「………」

二人の間に長い沈黙が流れる…


「…あなたはリードベル様のこと、どう思ってるの…?」


「え、どうって…!?」


「…私は…素敵な人だと思うけど…」

マイラが俯きながら顔を赤らめて言う…


「え!?アイツが!?」

「そ、そうなんだ…変わってるね…」


「………」

二人の間に再び長い沈黙が流れる…



「…ふ、ふん…!」

「さすが、勝ち組女は言うことが違うわね…!」

マイラは気を取り直して、強気に笑う。


「…あのねぇ、さっきから何なの?勝ち組、勝ち組って…」

「その名称をもらえたら一生幸せにでもなれる保証でもあるっての…?」

私が呆れた顔で返す。


「!!」


「何言ってるの!?勝ち組になれたら、皆んなに羨ましがられるし、たくさん自慢できるでしょ?」


「自慢の何がいいの?それで幸せになれるの…?」


「!!」


「確実に将来の安泰が保証されるとかなら嬉しいけど、皆んなに羨ましがられるだけなら別にいらないよ、そんなの。死ぬほどどうでもいい…」


「………っ!!?」


マイラは明らかに動揺していた…


それを見て、気付いた。

…ああ、この人も昔のフィリスと同じなんだと…


「…あなたも自分のことが嫌いなのね…」


「なに、急に…!?」


「あんたっていつも私のことを何かと難癖つけて責めてたけど、人のことを責めてる人って、裏を返せば、いつも自分のことを責めてる人ってことでしょ…?」


「……っ」


「…でもそんなの辛いじゃない?幸せを感じるどころじゃないでしょ?」

「自分で自分を幸せにできないから、目に見えるもので満たしたかったんじゃないの…?」


「……う、うるさい…っ!」



「…だから、もう許してあげたら?自分を好きになることを…」


「う…うるさいわねっ!!?」


「さっきから何クサいこと言ってんのよ!あんたっ!!」


「あんたみたいな地味系鈍臭女に言われなくなってそんなこと分かってんのよ!!」


「じゃあ、やればいいじゃん」


「!!」


「…そんな簡単に素直になれたら苦労しないわよ!!バカ女!!」


「…必要なのは決心だけよ、今すぐできるわ。」

「…それをしないのは、不幸な自分が都合がいいからでしょ…?」


「!?」


「…私だってあんたには散々迷惑被ったんだから、優しくなんて言ってあげないわよ。でもあんたがもし本当に幸せになりたいなら、サッサとそんな自分なんて捨てちゃえばいいのよ。」


「…でもそんな不幸な自分が気に入ってて、自ら不幸な人生を選ぶって言うのなら、それを人のせいとかにしないで、ちゃんと自分で責任とってよね!」


「…なによ…なによ!偉そうに…っ!!」

いつの間にかマイラの目からは涙が流れていた…


「私はあんたみたいなブサイク女じゃないの!」

「いろんなものを抱えてるのっ!!そう簡単には人間変えられないのよ…!!」


マイラはそう叫んだ後、脱力してその場にしゃがみ込んだ…


「はあ…もういっそ死んで、人生を最初からやり直したい…」



システィーナはそんなマイラを見下ろして言った。


「…私は例え、何度人生をやり直そうと、またブサイクに生まれ変わろうとも…また同じ私になりたいって思うわ…」


「…苦しかった思いも、辛い失敗も全てが私の糧となっているから…」


「………っ」



「なによ…!地味系鈍臭女のブサイクのくせに…!偉そうに人生語んないでよね…っ!!」



「地味系鈍臭女のブサイクだからこそ、人生語れんのよ!」


「…あんたがイケメン達にちやほやされてる間に、私は死にたいくらい嫌な思いいっぱいしてきたんだから…」

そう言って表情に影を落とした。


「…正直、イケメンって言われてる男がみんな嫌いだった…あいつら、外見ばっかで私のこと評価するんだもん…」

「…今のあんたみたいに…」


「…っ!」


…きっとこの世界がゲームの中だと知らなければ、私は今もまだ偏見にまみれた目で彼らを見ていたのかもしれない…


私は私で、まだまだ向き合わなければならない思い込みがたくさんある…




「…でもね…そんな被害者面してたって誰も助けてくれないし、幸せにもなれない…そう分かったから、私は自分の考えを変える決意をしたのよ…」


「………」

システィーナの瞳には強い意志が宿っていた…


もはやマイラは何も言い返せなかった…


「………っ」



「お前達そんなとこで何やってんだ?」


そこへリードベルが戻ってきた。


「リードベル様っ!!」

マイラが顔を赤くして飛び上がる。


「別に何も…」

システィーナが口を尖らせる。



「わ、わたし、今日街へ出掛けてきたので、システィーナ様とその話をしてきたところですの!ね!?」


「え、いや私は…」

「はい!これお土産のクッキー!」

そう言って、先程のクッキーをシスティーナに押し付ける。


「なんだ、さっき誰かを探してるようだったが、システィーナのことだったんだな!」

「お前ら遂に和解したのか、よかったな〜!」

リードベルは明るく笑う。


「………」

システィーナだけは、呆気にとられて固まっている。


「だ、大丈夫よ〜!毒なんて入ってないから♡」

「朝から並んで買った超有名店のクッキーなんだから、絶対食べてよね!?」


「う、うん……」

「あ、ありがとう………」


システィーナが突然のマイラの変わりように、警戒心を露わにしているが、マイラは笑顔で誤魔化した。



ーーー



「……どゆこと…!?!?」

部屋に戻ったシスティーナは、一人クッキーを前に困惑するのだった…













今日もお読みいただき、ありがとうございます!(o^ω^o)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ