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第30話「目覚めないフィリス」

「全く…急げと言っていたのに、一体何をしていたんですかねぇ…?」

マーカスが恐ろしいオーラを纏って言う。


マーカスに教えられた通りに再び自分の身体を仮死状態にして(部外秘)、魂だけの状態で空に浮かび上がった所で、待っていたマーカスから言われた。


今は耳も口もない実体のない状態なので、“感じた”が正解かもしれないが…


それでもマーカスがいつものように恐ろしい笑みを貼り付けて喋っている様子がありありと目に浮かぶから不思議だ…



「…一体、何回キスをしたら気が済むんでしょうか…?」

マーカスはため息混じりの声で言った。


「!!!?」


えっ………


見てたの…!?

さっきの一部始終を…っ!!!??


「………っ!!」

私は気恥ずかしさに卒倒しそうになった…


…倒れる身体はないけど…



「ごめんね、我慢できなくて…」


フィリスが開き直って、いつものように爽やかに笑う。



「…まあ、いいでしょう…」


「しばらくはこのネタで、システィーナ様の恥辱に歪んだ顔を楽しむことにしましょう…」

マーカスがニヤリと笑う。


「!!」

私は真っ青になる。


「ちょっと…人の恋人にちょっかい出さないでくれる…?」


「ふふ…人のものだからこそ、イイんですよ…」

マーカスが妖しく微笑む…


「………っ」

私は顔を青くしたまま呆然とする…

どうやらこの方も相当に病まれたご趣味をおもちのようで…


そうこうしている間にも、私達は虹色の雲のような明るい空間を進んでいく。



ーーー


しばらく進んだところで、マーカスは止まった。


「…このまま進んでいけば、あなた方の身体に繋がる通路があります。この先はお二人でお進みください。私は少々やることがありますので。」


「くれぐれも通る通路を間違えませんよう…魂を反対の身体に入れてしまっては目も当てられませんからね…」


そう言ってマーカスは、元来た道を戻って行った…


「………」



「…行こうか。」

「…はい…」


私達は二人で、光が差したように眩しい方向に進み続けた…





ーーー




「………」




目覚めると、見慣れた部屋の天井が見えた…



…ここはシスティーナの部屋だ…



「…私…帰ってきたんだ…」


そう思ってベッドから飛び起き、そのままフィリスの部屋へ駆けていく。


バタンっ!


「フィリス様っ!!」



そこにいたフィリスは、ベッドから身体を起こしながら、苦痛に顔を歪めたような顔をしていた。



「……っ!!?」



「フィリス様!どうなされたのですか!?」

「どこか痛むのですか…っ!!?」


フィリスは脂汗を浮かべながら、息も絶え絶えの様子で答える。


「…平気…いつものことだから…っ!」

「久々で身体がまだ慣れないだけ…」


「…っ!?」


いつものこと…!?


フィリス様は一体いつからこんな状態でいたの…っ!?



私は不安で胸がかき乱された…


とにかくフィリスをそっとベッドへ寝かしつけた。

フィリスは苦しそうに息をしながら胸を上下させた。



…大丈夫だよね…!?

何か悪い病気じゃないよね…っ!?



私は泣きそうになるのを堪えながら、侍女を呼んで看病の用意をしてもらった。




その後、フィリスは夜になるまで眠り続けた…



私はひたすらフィリスのそばに居続けた…



ーーー



ガチャ…


「よお…」


フィリスの部屋にリードベルが姿を現した。


「…久々の再会どころじゃなくなっちまったな…」

そう言って私を見つめる。


「…なによ…何しにきたのよ…」



「バカ…またそんな顔してんじゃねぇ!」


そう言うと、私の頭をガッと押さえて、わしゃわしゃと髪を撫でた。

「せっかくお前を連れて帰ってきたんだ…このまま死ぬようなことは絶対にねぇから安心しろ…!」


リードベルの言葉に、目に溜めていた涙が溢れ出した…


声を殺して静かに涙を流すシスティーナを見て、リードベルは痛ましそうに顔を歪めた。



「…ったく…あのバカが…っ!」




ーーー



翌朝、無事に戻ったマーカスが、フィリスの部屋を訪れた。



「…全く、無茶をするからですよ…」



マーカスがフィリスを見下ろす。

フィリスの横の椅子に腰掛けていた私はおもわず立ち上がってマーカスに問いただした。


「…フィリスは大丈夫よね…!?このまま死んだりしないわよね…!?」



「…さあ…どうでしょうねぇ…」

「とりあえず死にはしないと思いますが。いかんせん身体を傷めつけ過ぎていますからねぇ…」

マーカスが冷静に答える。


「!」

「…身体を傷めつけているって…!?」



「…恐らく、システィーナ様と同じ状態だったのではないでしょうか…?」


「!!」


「お食事もほとんど摂っておられないようでしたし、眠れないからと、毎晩かなりの量のお酒を飲まれているようでした。」


「何も食べないでお酒を飲まれるのは、肝臓に特に良くありませんからねぇ…」


「………」


「心身症で、頭痛、胃腸痛などもあったようですし、この世界には痛み止めなんてありませんから、さぞかしお辛かったことでしょうねぇ…」

マーカスはわざとらしく顔を顰めてみる。



「………あなたは、元々どちらの世界の人なの…?」


「……私ですか……?」

マーカスがニヤリと笑う。



「…私はあなたやマイラ様と同じ世界の出身ですよ…」



「!!」

やっぱり…!



「…あなたの身体もまだあちらの世界にあるの…?」


「…いえ、私の元の身体は残念ながら死んでしまって、もうあちらの世界には戻れなくなりました…」


そう言って残念そうに肩を竦める。

その仕草一つ一つがどこかわざとらしく、他人事のように見える…



「………」



「…あなたは一体何者なの…!?」



「私ですか…?私はあなたと同じ、しがない一般人ですよ…」

そう言って微笑む。



「…普通の人は異世界への移動方法なんて知らないわ…」

私は訝しげにマーカスを見る。


「ふふ…そうですか…」




マーカスは窓の外に目をやる。


「…あなたは、この世界があのゲームの中のお話だと思っていますか…?」


「………!?」



「あのゲームを知っているの…っ!?」



「…もちろん…」


「…なにせ、あのゲームの考案者は他ならぬ私ですから…」

そう言ってマーカスは笑った。







いつもお読みいただきありがとうございます!

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