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第27話「混乱の舞踏会」〜謎のキス〜

本日三度目の投稿になります。

舞踏会当日。


私にとっては二度目の舞踏会だ。



いつもと違うのは、この場にエリオットがいること。


第三王子の突然の出席で、エリオットのファン達が卒倒しそうな勢いで色めき立っている。


それにしても…


三者三様で美しいと容姿をもつ三人の王子が並ぶと、かなり圧巻である…


もはやアイドルと対面してるような感じだわね…


その中でもエリオット様は、私の本当のアイドル(推しメン)だから、他のファンを差し置いてダンスを踊れることを本当に光栄に思う…



唯一の悩みどころと言えば…


チラリと遠くに立っているフィリスに目を向ける。


…マーカスにも、フィリスとも最低一回は踊らなくてはダメだと念を押された…



「はあ…」


…嫌われてるって分かってるのに、今さらどんな顔して踊ればいいのよ…

心がずっしりと重くなる…



ドレスは、侍女とマーカスによって、既に赤いドレスが注文されていたが、エリオットも参加することになり、私も必死に頼み込んで、なんとか今日は紺色のドレスにしてもらった。

実際に今日着てみたら、至る所に真っ赤なバラが飾り付けられていて、マーカス‼︎って思ったが…



マイラはというと、今日は最初から恐れ多くもフィリスのイメージカラーである水色のドレスを着て、フィリスとペアルックを決め込んでいる。

フィリスもいつもの王子様スマイルで、まんざらでもない様子だ…


…前の舞踏会の時には、私に水色のドレスを贈るって言ってたのに…もう私のことなんてすっかり忘れちゃったみたい…


私は今日も性懲りも無く、あの日フィリスが送ってくれたチョーカーを肌身離さず持って来てしまった…

…もちろん、フィリスの前で付けられる筈もなく…


少しだけ痛む胸を押さえて、私は前に向き直る。



ーーー



そうこうしているうちにオープンセレモニーが終わり、舞踏会が始まった。


ファーストダンスは、リードベルと私、フィリスとマイラというお決まりのペアで踊った。


本当はエリオットも参加する筈だったが、それは断固拒否したため、ファーストダンスが終わるまでは待機することとなった。

さすがエリオット様である…




「今日は足を踏むなよ。」

意地悪そうに私の手を取るリードベル。


「踏むわけないでしょ、公爵令嬢の私が。」

澄ました顔で言う。


「ふん、言ってくれる…」

不敵な笑みを浮かべて踊り始める。


途中、ふと突然真面目な顔になって話を切り出す。


「……この前の俺の試合、どうだった…?」


「…ああ、強かったね。」


「……それだけか…?」


「え…?」

「んー…まあ、ちょっとはカッコよかったんじゃない?」


照れ臭くてぶっきらぼうに言うと、

リードベルは

「そうか」

と返して、不意に私の腰を掴んで持ち上げた。


「!!」


おもわず叫び出しそうになるのを、人の目を気にして我慢した。

グッジョブ、私っ!!


そのまま私をクルンと一回転させてふわりと下ろした。


場内ではそんな二人に拍手が起こった。


私は微笑みの表情を貼り付けたまま、低い声で言った。

「いきなり何してくれてんのよ…!!」

「気にするな。」

いや、気にするわー!!

練習にないことすんなよっ!!


すると、向こう側でも同様に拍手が起こった。

フィリスもマイラを同じように持ち上げて回転したらしい。

しかもあっちは2回転も…


恐らくマイラがフィリスにおねだりしたのではないだろうか…


私はフィリスを見た瞬間に、この後控えているフィリスとのダンスのことを思い出して身体を強ばらせた…


「…おい!」

「!!」


「何考えてんのか知らねーが、今踊ってるのは俺だ。」

「今は俺のことだけ考えろ!」


「…!!」

ストレートな物言いに、一気に意識が引き戻される。


普段は男友達みたいにふざけ合ってる癖に、こういう時に急に男の顔を覗かせるから、反応に困る…



私は赤くなった顔を誤魔化すようにリードベルを睨み付けると、リードベルは、

「…そうだ…それでいい…」

と満足げに笑うのだった。




ーーー



リードベルと踊った後は、エリオットと踊る予定だ。

リードベルにエスコートされながら、エリオットの姿をキョロキョロと探すと、遠くの方からエリオットが姿を現した。


エリオットは、今日はイメージカラーの真っ青な燕尾服に身を包んでいる。

襟や袖から見える白いシャツや金色の宝石達がとても映える。


今日は一段と美しいエリオットの姿に、おもわず見惚れてしまう…



私の目の前に来たエリオットは、少しはにかみながら手を差し出した。

ここからはリードベルに代わってエリオットがエスコートしてくれる。


エリオット様と腕を組んで歩ける日が来るなんて…

本当幸せ…っ!!!


人が入り乱れる中、音楽と共に私とエリオットもダンスを踊り始める…



無意識にフィリスを探すが、どこにも姿が見当たらない…


…!?

マイラとどこかへ行ったのかしら…?

いや、マイラはいまリードベルと踊っている筈だ。

じゃあ一体どこへ…!?



「…なんか、考え事してる…」


「!!」

しまった!!

今はエリオット様とのダンス中だったのに、私はなんてことを…っ!!


「す、すみません…!」


「他の男のこと考えてたの…?」


「…!!」

顔を赤くして目を見張る。


「ふぅん…」


「…ちょっと妬ける…」

ボソッと呟いて、照れたように目を逸らす。


「………っ!!!」


ちょっ…!!

なんですか、その反応はーーーっ!!!

そのお顔は反則ですーーーっ!!!!




エリオットの尊い発言に、おもわずまた昇天しそうになるのを必死で堪えるのが大変だった…




ーーー



幸福な時間はあっという間に終わり、気付けば地獄の時間に突入していた…



ダンスが終わったエリオットの腕に掴まりながら、会場にいるであろうフィリスを探す。


…だけど、いくら探してもフィリスの姿が見当たらない…


どうしたんだろう…


…まさか、私とのダンスがそんなに嫌だったのかな…


次第に気持ちが落ち込んで、俯く…


エリオットが何か声をかけようとした時、エリオットの肩を後ろからポンと叩く者がいて、次の瞬間、違う誰かに腕を引かれた。


「……!」

もしかしなくてもフィリスだった…


久々にフィリスに触れて、心臓がどうしようもなくドクドクとうるさく鳴った。


ただ、エスコートされているだけだと言うのに…



…でも、ダンスフロアへ向かう途中、フィリスは一度もこちらを見なければ、私に話しかけることもなかった…


…やっぱりそうだよね…


…私は泣きそうになるのを堪えた…



ダンスフロアへ着き、フィリスが無言で私に手を差し出す。


私も促されるように恐る恐るフィリスの手に触れた。

フィリスの細長い指はひんやりと冷え切っていた。


…外にいらしたのかしら…


…でももう、そんなことを気軽に聞ける間柄ではない…


私は手が震えそうになるのを必死で抑えて、踊り始めた。

身体がガチガチで、あんなに練習したダンスもまるで踊り方を忘れてしまったようだ…


久々に踊るのに、こんなみっともない姿を見せたくないのに…


前回よりも上手くなったって思わせたかったのに…

身体が思うように言うことを聞いてくれない…


この前の舞踏会の時も、私がマイラに嫉妬して、フィリスとのダンスを踊らずに逃げ出してしまったことがあったけど、あの時はフィリスが追いかけてきてくれて、ちゃんと仲直りができた…


でももう、そんなことはできない…


フィリスはもうマイラの恋人だし、どれだけ懇願したところで、私への気持ちはもう戻ってこない…


そう思った瞬間、

自分は本当に取り返しのつかないことをしてしまったんだと思い知った…


そして、まだこんなにもフィリスのことが好きで、彼への思いを抱えていることにも気付かされた…



そう気付いてしまうと尚のこと、この気持ちを伴わないダンスがどうにも虚しいものに思えてきた…


私は泣かないように涙を堪えた…



「……なんて顔してるの、みっともないよ…」


「!!」


数ヶ月ぶりに間近でフィリスの声を聞いた。


おもわず顔を見上げるも、その顔は正面を見据えていて目が合わない。

いつもの笑顔もなく、その表情は固い…


どうやら私と会話するつもりはないようだ…


私の顔が、あんまり酷くて見るに耐えなかったのだと理解して謝る。

「ごめん…なさい…」


「………」


フィリスはそれ以上喋ることはなかった…




ーーー




ダンスが終わると、フィリスは無言でリードベルの所まで歩いて行った。


「おい、なんだよ、今のダンスは…」

「!!」


私はリードベルの顔を見た瞬間、堰を切ったように涙が溢れ出した…


リードベルはフィリスから奪い取るようにシスティーナを抱き寄せた。

「…お前…こいつを泣かすなよ…!」

リードベルがフィリスを睨み付ける。


「…別に…公務中に相応しくない表情をしてたから注意しただけだよ…」

そう言って、またどこかへ消えてしまった。



「…ったく…!」


「…いいの…本当に私が悪かったから…」

リードベルの服を掴んで、彼を止める。


「……お前バカだもんな……」

「…うるさい…っ!」

そう言ってリードベルは、私の頭を優しく撫でた。




ーーー



少し落ち着いたところで、ようやくリードベルが私を解放した。


「気晴らしにエリオットとダンスでも踊ってこいよ…」


「いえ…今は少し飲みたい気分なので、ちょっと飲んできます…」


「………大丈夫か……?」

もの凄く警戒した顔で尋ねられる。


「私、酒癖悪くないので、大丈夫です。」


「お前…どの口が…」

「うるさいっ!」


私はリードベルを残して、スタスタと軽食コーナーへと歩き出す。

強めのお酒をいくつかもらうと、それらを抱えて中庭へ移動した。

中庭にもカップル達が何組かいたので、私はいつかのベンチまで歩いて行った。


会場から少し離れているので、さすがにそこには誰もいなかった…


私は一人で座って月夜をさかなに酒をあおった。


「はあ…」


あの時は、フィリスが追いかけてきてくれて、ここで仲直りしたんだっけ…



「…寂しいな…」



どれだけリードベルが優しくしてくれても、エリオット様が近くにいても、やっぱり私の心は空虚なのだった…



もうフィリスへの思いが薄れてきたと思い込んでいたけど、実際は薄れるどころか、日毎に増すばかりだった…


今日久しぶりに触れた指先が、腕が、これまでの記憶を呼び起こしてしまった…


毎日一緒のベッドで寝て、恋人のようにその日のお互いの話をしたり、抱きしめ合ったりしたこと…

愛してると言われて嬉しかったこと……




「…私も本当は…好きだったの…」



もう二度と伝えることのない思いを涙ながらに一人呟いた…




ーーー



“…大好きだよ…”


ちゅっ…



「…ん…」


…いつの間にか眠っていたようだ…


眠りながらフィリスのことを考えていたためか、最後は誰かとキスをする夢まで見てしまった…恥ずかしい…


…それにしても感触といい、言葉といい、やたらリアルだったような…


最後に聞いたあの声は誰のものだったか…



ベンチに座ってボーッと考えていると、不意に近くの茂みから音がした。

「?」

恐る恐る近付いてみると、なんとエリオットが座っていた。


「……!」

「エリオット様!どうしてここに…っ!?」


「……一人で飲んでた…」


「あそこのベンチに座ればよろしいじゃありませんか!」


「あそこは、さっきあんたが寝てたでしょ…」


「!!」

見られてたんだっ!!

どんな体勢で寝てたんだろ…っ!!

イビキとかかいてなきゃいいけど…っ!!

内心一人で慌てる。


「…それは大変失礼しました…!よかったら今からでも、あちらのベンチに座りませんか…?」


「…いい。」

「こっちの方が近いから…」

「…?」


そう言うと、不意に私の腕を引っ張って抱き寄せた。


!!!!!?



くっついたエリオットの身体はいつも以上に熱かった。


「ああああの、エリオット様……っ!!!?これは…っ!!!」


「動かないで…」

「!!」


「もう少しこのままでいさせて…」

そう言って私の髪を撫でる。

私は草むらに膝をついて、座っているエリオットに抱きしめられる形になっていた…



エリオット様…!!

いつもと様子が違う…っ!!

もしかして酔っているのかしら…っ!!?


エリオット様は酔うと積極的になられるの…っ!!?

予想外の展開に、心臓が飛び出そうなくらい激しく鳴る。



マイラは確か前に、エリオット様は押しに弱いって言ってた気がするけど、聞いてた情報と全然違う…っ!!



ちゅっ

徐にエリオットが私の頬にキスをした。


「っ!!!!!」


え、え、エリオット様が私の頬に唇を触れた…っ!!!

私の頭は大パニックになった。


「あああの、エリオット様っ!!!?」


私はエリオットを引き離そうとして、勢い余って座っていたエリオットを押し倒してしまった。


「あっ…!!」

間違えちゃったー!!!


「ご、ごめんなさい…エリオット様…っ!」


その瞬間、背中に腕を回されて、あっという間に立場が逆転した。

気付けば私がエリオットに押し倒されていた…



いつの間にか私を見下ろす位置にいるエリオットが言った。


「…俺…襲われるの好きじゃないんだよね…」

その顔に表情はない。


マイラ…また情報が違うじゃねーか!!


ゆっくりと、手の指をいやらしく絡められる…


心臓のドキドキが止まらない…

私はどうしたらいいか分からずにエリオットを見つめ返す。


「…なんか…お前といると、俺が俺じゃなくなるみたいだ…」


エリオットも少し苦しげで、戸惑っているような表情だった…


「…エリオット様…」


エリオットが私の顔の輪郭を指でなぞり、いつになく妖艶な表情で見つめる。


私はその美しさに息を呑んだ…



「え、エリオットさ…」


「…早くフィリスの元に帰りな…」


「!!」


次の瞬間、予想だにしないことを言われて、目を見開く。


「…俺がこれ以上欲しくなる前に…」



「……はい……」



……それができたら、どんなによかったことか……





その言葉は胸にしまった。





……それから数日後、私は突然倒れて意識が戻らなくなってしまうのだった……







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