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第26話「マイラとの会話」

今朝も更新しています。





その翌日の午後。


「よ、よろしく…お願いします…!」


「…よろしく…」


信じられないことに、あのエリオットが大ホールに姿を現した…!


今日は白いシャツに淡い青色のズボンを素敵に着こなしている。

はあぁ…もう本当王子様っ!!

カッコよすぎ…っ!!!



「…おい、二人の世界作んな、俺もいるぞ。」


…ちっ


忘れてたけど、コイツもいた…

横目でリードベルを見る。


「…お前いま俺のこと忘れてたよな?…なあ!?」


「さあさあ、始めましょう!」

パウルが音頭をとる。


「そうですよ、今日は世にも珍しいエリオット様のご参加ですからね。システィーナ様、エリオット様をがっかりさせないように精一杯頑張ってくださいね。」


「は、はい…」

うぅ…

敢えてプレッシャーを与えてくる腹黒マーカスが憎い…



「…俺もダンス久々だから、逆に迷惑かけるかも…」


「そんなっ!!エリオット様なら全然迷惑ではありませんっ!!」

顔を赤くして答える。


「…誰なら迷惑なんだよ?」

後ろでリードベルがボソリと言う。

お前だよっ!



「…では最初にエリオット様とシスティーナ様のペアで踊りましょうか、お二人とも組んでください。」


「は、はひ…っ!」

う…緊張のあまり声が裏返ってしまった…!恥ずかしい…!!


クス…とエリオットが笑う。


エリオットが差し出す手に恐る恐る触れる…


エリオットの手は、スラリと長い指先のフィリスと無骨な手のリードベルの中間のような標準的な手の形をしていたが、その手すらも白くて綺麗ですべすべしていた。


一言で言うと、尊かった…!!


初めて触れるエリオットの手にすべての意識が集中し、顔がゆでだこのように赤くなった。


「なに赤くなってんだよ、このムッツリスケベ!」

「なっ!」

外野から野次が飛んでくる。


「いまダンスに集中してるんだから、静かにしてよねっ!」

「はっ…何に集中してるんだか!」

「う、うるさいーっ!!」


…もう!

こんな暴言を吐いてるはしたない姿をエリオット様に見られたくないのに…っ!

私は壁際にいるリードベルを睨み付ける。


「…リードベルと仲良いんだな…」

「!!」

不意にエリオットに話しかけられる。


「…そんな!全然です!あんな奴とは断じて仲良くありませんっ!!」


「そう…?」

そう言って、徐に腰を引き寄せられる。

「っ!!」

その力が存外に強くて、おもわず心臓が跳ね上がる。


エリオットとの距離がグッと近くなる。


エリオットからは中庭の芝生のにおいがした…

今日もここへ来る前にルルと遊んできたに違いない。


思ったよりも高いエリオットの体温が服越しに伝わってきて、ドキドキしてしまう…


「足…踏んだらごめん…」

「!!」

いつもの低い掠れる声で言うや否や、ゆっくりと足を踏み込んでくる。


!!!!

私は昇天しそうになる心を引き留めながら、必死に足を動かした。

エリオットは久々のダンスとは思えないほど、卒なく踊り、もちろん一度も私の足を踏むことはなかった。


「ふむ…さすがエリオット様です。」

珍しくマーカスが褒める。


「…それに対してシスティーナ様は…いつも以上に心が浮ついていましたね。」

そう含みのある笑顔で笑いかける。


ひいぃ…!


「かなり及び腰になっていたな。」


横でリードベルが援護射撃をしてくる。

お前は余計なこと言わなくてよろしいっ!!


「だって!エリオット様の足を踏むわけにはいかないじゃないですか…!!」


「…お前…あれだけ俺の足を踏んでおいて、よくそんなことが…!」

リードベルが信じられないというような顔をする。


「うるさい!リードベル!」


「…なんだ、そんなこと気にしてたの…」

「俺全然気にしないから、大丈夫…」


「…っ!!」

「いえ!そんな、いけません!!エリオット様のお足を踏むだなんて…っ!!」


「…おい、俺はいいのかよ…」

「外野は黙ってて!」

「……」



その後、私の及び腰ダンスが直るまで、幾度となくエリオットにダンス練習に付き合わせてしまった。

エリオット様には本当申し訳ない…


でも私にとっては、最&高に至福の時間だった…!!




ーーー



「…では、そろそろリードベル様と交換致しましょうか…?」

パウルが提案する。


「………」


「…おい、あからさまに嫌そうな顔すんのやめろ。」




パウルに言われて、私は渋々リードベルと組み始める。


「エリオットとは随分お上品なダンスを踊ってたじゃねーか、こりゃどんだけダンスが上達したか見ものだな…」


「ふんっ!任せてよ…!」


ぎゅむ…

「……」

前に踏み出した勢いでリードベルの足を踏んでしまった。



「……おい……」


「踊る前に足を踏むやつがどこにいる…!?」


「え!?だ、だってさっきまで緊張してたんだもん、しょうがないでしょ!?」


「なんで俺との時に緊張を緩めてんだよ!?気を引き締め直せ!!」

「そんな緊張の無駄遣いができるかっ!!」

「なんだと!?」




「…やれやれ…」

再びギャーギャーと騒ぎ始めた二人を見て、マーカスがため息を吐いた。


「………」

そんな二人の様子をエリオットは静かに見ていた。







ーーー



それからレッスンは毎日続き、私はエリオットと至福の時間を過ごした。

リードベルは来たり来なかったりだったけど。


私は次第にフィリスへの思いを手放すことができるようになってきて、前ほど二人を見ても気にならなくなってきた…


…こうやって、忘れていくんだね…


初めての失恋は、フィリスによって経験することになった…




リードベルは相変わらずあんな感じだけど、何かと構ってくれて、あの後街へもまた連れて行ってくれた。


男友達って、こんな感じなのかな…?

いたことないから、分からないけど…


しょうがないからお礼にクッキーを作って渡したら、それはそれは喜んでいた…

アイツ本当にクッキー好きだったのね…

…あの日、“俺にしとけよ”なんて言われてちょっとドキッとしちゃったけど、それ以来アイツがそんなことを言ってくることはなかった…


酔っ払ってたから、酔った勢いでつい言っちゃっただけなのかもしれないね…

まあ、彼のためにも忘れといてあげよう…




エリオット様との関係も順調だ。

ルルの餌やりも私が来るのを待っていてくれて、しばらく二人で話してから、一緒に部屋に戻ってくれるようになった。


いつの間にか「あんた」呼びから「お前」に変わっていて、それだけで悶えるほど嬉しい…!


午後はダンスレッスンで、生エリオット様に急接近しちゃうし、こんな幸せでいいんだろうかってくらい、最近毎日幸せだ…




ーーー




そんなある日。


「…え、リードベルの模擬試合?」


「そうなの〜!リードベル様に誘われちゃったんだけどね、せっかくだからシスティーナもどうかなと思って♡」


久々にマイラに話しかけられたと思ったら、リードベルの模擬試合に誘われた。

毎年この時期に行われる近衛兵のイベントらしく、今年はリードベルも参加するらしい。


…アイツそんなこと一言も言ってなかったけど…

通りで、最近ダンスレッスンもサボりがちな筈だ。



「…私は全然興味ないから行かない。」

「またまた、そんなこと言ってぇ〜!」

「フィリス様に言い付けちゃうから!」


「!!」

「…な、なんでそこでフィリス様が出てくるのよ…」

うっかり動揺した顔を見せて、マイラがニヤリと笑う。


「…私知ってるんだから…」


「あなた、フィリス様を相当怒らせたみたいね。もうあなたの顔も見たくないって言ってるわよ〜!」

「………っ!!!」


その言葉に、胸にナイフが突き刺さったように動けなくなった…


「あんたのことなんか、誰も必要としてないのよ。」

「もういっそ、この屋敷から出て行っちゃえば〜!?」

そう言ってマイラがせせら笑った。


「…でももし、少しでも役に立ちたいのであれば、今度の模擬試合には婚約候補者のお役目として、しっかり応援することね…!」


そうマイラが吐き捨てて去って行った後も、私はその場を動けなかった…



フィリスを傷付けて拒絶してしまったのだ…

今さら嫌われたってしょうがないことなのだ…


…でも改めて言葉にされると、かなり堪える…


…私は胸を押さえた…


…大丈夫だ…

私にもう出来ることは何もないのだから…

この辛い感情も、全て受け入れなければ…


私はその場に一人、立ち尽くした…






ーーー



数日後。



私とマイラは、近衛兵の訓練場の観覧席にいた。


下では模擬試合に参加する多くの兵士達の声が轟いている。


今日は私達二人も観覧するということで、チラチラと兵士達の視線を感じる。


しばらく待つと、試合が始まった。

最初は白兵による長剣での戦いだった。

もちろん剣は練習用の物を使用している。


「リードベル様は後半の騎兵戦に参加されるんですって♡」


「………」

マイラの言葉にも反応せず、私は呆然と試合を眺めていた。



勝った者が雄叫びを上げて会場を盛り上げる。

その相手にまた次の挑戦者が挑む。


挑戦者が勝ったら、今度は勝った方の相手が次の相手と戦う…



「ねぇ聞いてよ〜!昨日のフィリスったらねぇ〜!」

「!!」

不意に隣でマイラがフィリスの話をし始めた。


「あ!ごめん!二人きりの時はフィリスって呼んでるんだけど、ついいつもの癖が出ちゃったぁ〜♡」


マイラの言葉に私は身体を強ばらせる…



「そう、それでそのフィリスがね、昨日一緒にベッドで寝てる時に、私のことが誰よりも可愛くてしょうがないって言うの♡もう私に夢中になっちゃってるみたい!どう思う〜!?」


「………」


「……ねえ、聞いてるの?システィーナぁ?」

マイラは甘い可愛らしい顔をして私を見つめる。


「あれぇ?聞こえてないのかなぁ?もう一回言った方がいい?」


「……聞こえてる……」


「…んなら、さっさと返事しなさいよ、鈍臭いわね!」

急に低い声で話し始める。


「……どうもこうも……幸せそうでよかったね……」


私は呼吸をするのも忘れて、必死で平常心を保った。

間違ってもマイラの前で取り乱したくはなかった…



「………」


「……はっ!なによ、つまんなっ!」


そう言って私を睨む。

私はマイラから目を逸らす。


「……今日は試合を観に来てるんだから、静かにして。」


「…はっ!なーに真面目ぶってんだか!」

「そうやって、私のリードベルとエリオットもたぶらかしたのね…!」


「…別にあなたのじゃないでしょ…それに私、誰もたぶらかしてなんていないから…」


「……お高く止まっちゃって……あんたって本当ムカつく!」


「どうせ前の世界では鈍臭の地味女だったんでしょ…!?それがこの世界に来てちょっとばかし綺麗になったからって勘違いしちゃってるんだ!?」


「お願いだから、これ以上私の王子達に手を出さないでくれる…!?あなた邪魔なの!」



「………別に、手なんか出してないわよ……」


「無自覚ってわけ?本当タチ悪〜っ!」


「……っ!!」

タチ悪いのはあんたでしょうよ…!!



私はマイラを無視して試合に集中した。


試合は順調に進み、次はいよいよリードベルが出てくる騎馬戦となった。

剣を携えた騎士が出て来て試合が始まる。



3試合目になってリードベルが出てきた。

リードベルが出てきた瞬間、兵士達が沸き立つ。

どうやら兵士達には好かれているようだ…

よかったね…


マイラも立ち上がって「リードベルさまぁ〜!!」と可愛く叫んでいる。

おうおう、ご苦労なこった…


一瞬だけチラリとこちらを見たリードベルと目が合った気がした。



リードベルは、試合開始と共に凄い速さで相手を斬り落とした。


「…っ!!」


その瞬間、兵士達が益々盛り上がって声を上げた。

…どうやら、兵士達の心を捉えているのは、あの強さにあるようだ…


その後出てきた相手も次々と斬り倒していく。


その鮮やかな剣捌きには、おもわず見惚れてしまった…


…なによアイツ…!あんなに強かったなんて…!

ちょっとカッコいいじゃない…っ!!


そのリードベルはというと、ちょっと不満げな様子で

「おい!お前達今日はいつも以上に気が抜けてるぞ!!」

「手抜かねぇで、本気で攻めてこい!!」


とハッパをかけた。

次の相手はリードベルよりも大きい大柄な男だった。

乗っている馬が可哀想になるくらいだ。


「へへ…それじゃあ遠慮なく…」

そう言って、激しい攻防が繰り広げられた。


詳しいことは分からないが、どちらも相当に強い相手であることが分かった。


だが、リードベルはその相手をも薙ぎ倒し、最終的に10人の相手を倒して、見事騎馬戦での優勝を果たした。


…さすが、乙女ゲーム主人公のスペックすげぇーー!

私も違う意味で感心した。



リードベルがこちらを見て手を振っている。


私もそれに振り返していたら、不意にマイラが口を開いた。



「…リードベル様には絶対手を出さないでよね…」


「!?」


「どうせあんたは、まともに恋愛なんかできないんだから…みんなの迷惑になるから、もう誰とも関わらないで!」

マイラは吐き捨てるようにシスティーナに言った。


「………」



私は何も答えずに、その場を後にした。


下ではリードベルを囲んで、皆んなでリードベルの強さを讃え合っていた。


リードベルは、去っていくシスティーナを黙って目で追っていた…



舞踏会まであと数日だ…





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