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第17話「リードベルと街歩きデート」

翌朝。


ガタンゴトン…


「………」

馬車の中で二人きり…無言の時間が続く。



……これ何の拷問ですか…?



マーカスの提案(思いつき)により、朝も早よからリードベルと二人で街へ向かう…


うぅ……

あと1時間もこの沈黙に耐えなきゃならないの…!?

嫌すぎる……っ!!


もういいや、寝ちゃえっ!


…と思うが、車と違ってめちゃくちゃ揺れる馬車で寝るのはなかなか現実的ではなさそうだ…


現代の車はタイヤ回りとか、かなーーり進歩したようだ。

快適さが全然違う。


リードベルはというと、慣れているのか、馬車の中で足と腕を組み、目を瞑ったまま椅子にもたれかかっている。

…すご…



ーーー



「………」


10分後…

とうとう沈黙に耐えられなくなったシスティーナは、観念してリードベルに話しかけることにした。



「…リードベル様…今日は突然朝から街へ出かけることになってしまいましたが、よろしかったのですか?」


「…命令だからな。」


リードベルはそう言って目を瞑る。

命令…

マーカスの提案を命令と捉えていたらしい…


…てか、会話もう終わっちゃったよ…



「…午前中の騎士達の訓練はよろしかったのですか?」


「…俺がいない時にはそれぞれの団長が訓練の指揮をとることになっているから問題ない。」


そうですか…



しーーん



「…リードベル様は街へは行ったことあるのですか…?」


「無論だ…」



しーーん



か、会話が続かねぇ…

会話はキャッチボールだろうよ、お前もなんかしゃべれよ…!



「………」


「…お前はあるのか」


「ひゃ、えっ!?」

突然あっちからボールが返ってきてキョドる。


街へ…?

街へ……?


えーーと、えーーーと…


私はシスティーナの中の記憶を探る……


「……私は、行ったことはないようです。」


「?」


「……じゃなくて!……行ったことはありません。」


「……」


「公爵令嬢として、小さい頃から淑女教育及び后教育を叩き込まれてきました。街はどこかへ出かける際に馬車の窓から覗くだけで、実際に馬車から降りたことはありませんでした…」


そうか…そうだったのね、可哀想なシスティーナ。

大きくなったらなったで、大人のふざけたゲームに巻き込まれて、おまけに悪役令嬢にまでされちゃうなんて…


私も他人事のようにシスティーナの生い立ちに同情する。


「……そうか……」

リードベルは神妙な顔をして俯く。


「…?」


「お前は…子どもの頃はどんな子どもだったのだ…?」


…へ、子どもの頃?

また脳内の記憶を探る。

どこを探しても勉強、勉強、勉強で、遊んでいた記憶が全くない…

システィーナって、悲惨な子どもだったんだな…

それとも公爵令嬢ってこんなものなの…!?



「…両親は私を王妃にするのに必死で、勉強やレッスンをサボろうものなら厳しく罰を与えましたが、それ以外では、私が望む物を望むままに叶えてくれました。…つまり、とても大人しくて性格の良い子に育ちました。」



「おい、前半と後半で話が矛盾してないか…?」


「してません。」


私は冷たく答えた。



「……なるほど、その時の反発心と何でも思い通りにしてきた傲慢さが、今のそのめちゃくちゃな性格を作ったのだな…」


「なっ…!?」


失礼な!!



何か反論しようと考えていると、リードベルが急に真面目な顔になって私に視線を向けた…



「………お前、子どもの時に…」


「……?」


ガタンッ!!


その時、馬車が大きく傾いて、システィーナの身体も宙に浮く。

窓際に激突しそうになったところをリードベルが自分の手で頭を守ってくれた。


「…大丈夫か…?」


「!!?」


ガタンッ!

転倒しかけた馬車は、大きな音と共に元に戻った。


頭を抱え込まれて至近距離になったリードベルを見上げる。


「……なんで!?」

お礼よりも疑問が先に言葉を出てしまった。


「なんで……?」

リードベルが怪訝そうな顔をして聞き返す。


コイツにとって私は、愛しのマイラをいじめるにっくき悪役令嬢のはずなのに、なんで助けてくれたのか……?


咄嗟に手が出ちゃっただけかもしれないけど。


「あ…じゃなくて、ありがとう…ございました…」

なんだか釈然としないし、こんな奴にお礼を言うのも癪だけど、とりあえず言っておく。


「気にするな。」

そう言ってまた席に戻って目を瞑る。


コイツの突然のキャラ変ぶりといい…

なんか調子狂うなぁ…



その後、血相を変えた御者が扉を開けて平謝りしてくるが、その者に対しても

「気にするな。」

とクールに返事をしていた。


……本当どうしちゃったの……!?




ーーー



1時間後。


「わぁ…ここがこの国の首都…!」

馬車の窓に齧り付いて外を眺める。


私の小さい頃の記憶にも微かにあるけど、実際の私が目にするのは初めてだから、映画でしか見たことないような光景に感動してしまう。


「わぁ…!西洋風の古風な街並み…!すごい〜!リアル映画の街並みじゃんっ!!あっ!露天商やってる!何売ってるんだろ!?めっちゃ行きたい〜〜っ!!」


「………」


ハッ!

後ろからリードベルの視線を感じた。


影薄くてコイツの存在忘れてたわ!


振り向くと、思い切り顔を顰めてこちらを睨んでいた。


………何よ!?

初めて街に来たんだから、少しくらい騒いだっていいじゃない〜!


「何か…?」

口を尖らせて睨み返す。


「……お前本当に淑女教育を受けてきたのか…?」

「!!?」


…受けてはきたけど、いまシスティーナに転移してる私が受けてきたわけではないから、どうしても素の自分が出てきてしまう…


「ほ、放っといてください!」

ツーンと顔を背けて怒る。


リードベルもそれ以上は何も言ってこなかった。

よし、上手くごまかせた!




そうこうしている間に馬車が止まり、御者がドアを開けてくれたので、すぐさま立ち上がって馬車を降りようとすると

「待て!」

とリードベルに手を引かれて止められてしまう。

「え、何っ!?」

突然手首を掴まれて、ぎょっとする。


ゆっくりと立ち上がったリードベルが言う。

「淑女が馬車を飛び出していくな。」


そう言ってシスティーナの手を握り直して、馬車の階段を先に降りた。

どうやらエスコートしてくれるらしい。


「…そういうこと、できるんだ。」

脳筋野郎だと思ってたのに…


「なんだと?」

リードベルに睨まれる。

あ、おもわず本音が漏れた。


オホホホ…と笑ってごまかす。

うーん、悪役令嬢キャラって便利だわ…


確かにゴワゴワなドレスなら階段を降りるのにも誰かの助けがいるが、今日はお忍び街歩き用の膝下ワンピース姿だから、余裕で一人で降りられるのだが…

なんならここからジャンプもできるし。


まあ、淑女教育をこれまでみっちり受けてきた私ですから?そのエスコートは甘んじて受けますけど!?

(↑根にもってる)


馬車を降りたのまではよかったが、その後もリードベルが掴んだ手を離さない。


「………」

なんだ…?


「…まさか、迷子になるのが不安なのですか…?」


「……バカか、お前は!?」

心底呆れたように見下すリードベル。


なんだと!?いまバカって言ったな、お前!!


「仮にも公爵令嬢をこのような場所で一人歩きさせられるか。」

「!!」


…何を紳士気取っちゃってんのコイツは!?厨二病か!?


「…それに、俺はまだお前を完全に信用したわけじゃないからな。」

そう言って私を睨み付ける。


そっちが本音じゃねーか!このカッコつけ野郎っ!!


つまりどこかに逃亡しないように手錠を嵌められてるようなもんだ。

まだどころか全然信用してねーじゃねーかっ!!



「オホホホ…私そんなか弱い令嬢ではありませんので、一人でっ!!大丈夫っ!!ですわぁ〜っっ!!!」

そう言って手をブンブン振るが、一向にリードベルの手が離れない。

くそっ…馬鹿力め…っ!!


リードベルが何のことはないような冷たい表情でその様子を見下ろしているので、諦めて手はそのまま放置することにした。


「さて、まずはどこに行くか…」

執事のマーカスに渡されたお買い物メモをリードベルが取り出す。

てか、第一王子に午前中の執務を放棄させて買い物の使い走りをさせるって、よく考えたらすごいことだよな…


リードベルが私の手をしっかり握って歩き出す。

そんなに強く握らなくても逃げませんって…

多分な。


てか…ん……?


「あーーーっ!!!」

突然の叫び声に、リードベルが再び怪訝そうな顔で私を見る。

「…今度はなんだ…?」



「わた…わたしの…私の…っ!」

「?」


私の憧れの手繋ぎデートが、いまコイツの手によって奪われた……っ!!


「私の初めてを返してくださいっ!!!」


「はっ!?お前何言ってんだ…!?」


「男の人と手を繋いでデートすることにずっとずっと憧れてたのに……っ!なんでよりにもよってあんたが一番なのよーー!!?」


「はっ!?そんなこと俺が知るか!そんなの先に済ませておかないお前が悪いんだろ!?」


グッサァッ!!


こぉんのぉ野郎ぉ〜〜っ!!

こっちが気にしてることをサラッと言いやがって…!!

そんなトイレみたいに簡単に済ませられたら、こっちだって27まで独りじゃなかったわっ!!



「………責任とってください……!」

私は訳が分からない理屈でリードベルに怒りをぶつけた。



「…はっ!?責任ってなんだ!?まさかお前と結婚しろってことか!?」


「えっ!?いや、そんなこと言ってないし!!むしろあんたと結婚なんか死んでも嫌だし!!マイラみたいなアホに引っ掛かるような大ボケ男なんてこっちから願い下げだし!」


「貴様…っ!!」

リードベルが顔を歪ませて怒り始めた。

…お、いつものリードベルだ。



強く腕を引かれて路地裏に連れ込まれる。

ドンッ!!


「貴様…散々フィリスをたぶらかしておいて、今さら初めてがどうとか何抜かしてるんだ…!?」

目が据わっているリードベル様からの何度目かの壁ドン。


ですよね〜〜!

あんたの前ではそういうキャラ設定だったもんね〜〜!

あの恋愛魔王みたいなフィリスをたぶらかすくらいの女なら、並外れた相当の手練れなはずだもんね〜!そうなりますよね〜!


…でも実際は、フィリスをたぶらかしてるどころか、たぶらかされてるというか、彼の戯れに巻き込まれてるだけの、ただの純真無垢なピュアレディなのよね。

(自分で言う27才)


でもそれをこの男に言えるわけもなく…言いたくもなく…

どうしたものか…

「はあ…」

おもわず漏れるため息。


私は冷めた顔で、凄んでくるリードベルを見上げる。


「……ちなみにこんな風に男性に迫られたのは、リードベル様が初めてですわ…」


「!?」


この世界に来て数日後に、初めてマイラに嵌められた日のことを思い出す。

もしかしたらあれは「初めて首を絞められた」方にカウントするのかもしれないが…

動揺したリードベルの顔が赤くなる。


その反応…お前だって私と似たり寄ったりな経験値だろ、どうせ!


相手の戦闘力が同程度のゴミと分かり、急に強気な態度に出る私。

「……後ろで護衛の方が困ってらっしゃいますわよ。」

そう言って笑う。

今日も悪役令嬢の私は好調なようだ。


「!!?」


恐らくリードベルの部下であろう護衛騎士二名は、リードベルが突然システィーナを路地裏に連れ込んで壁際に追い込んでるのを見て、どうしていいか分からない様子で戸惑っていた。

そらそうなるよね…


「…このまま、私に乱暴されるおつもりですか?」

悪役令嬢らしい嘲笑を浮かべて言う。


「!!」

「そんなことするわけないだろっ!!」

赤い顔を背けて吐き捨てる。


あらあら照れちゃって。


見た目だけ見たらやり兼ねない感じだけど…


リードベルは、他の王子に漏れず顔立ちが整っておりイケメンの種別だが、いかんせん目付きが悪い。せっかくの美しい金色の瞳もその小ささ故に、胡散臭い印象しかもてない。



中身もそうだが、実に勿体ない…


私から離れたリードベルが吐き捨てるように言う。

「…全く…お前という人間が分からん…!」

「はっ…お互い様ですわ。」


そう言いながらも、リードベルはまた私の手を繋いで歩き出した。


やっぱり手は繋ぐのね…

そんなに私が信用できないんかい。




ああ…

私の憧れの手繋ぎデートの夢が…


なんでよりにもよって、こんなチンピラ王子なんかと…


ファーストキスに続いて、またしても私の大事な初めてが奪われてしまった…


私の健全な恋愛計画に、早くも翳りが見え始めた…



「……はあ……」


ため息混じりに歩くシスティーナを、リードベルは無言で見つめるのだった。



ーーー



露天商が並ぶエリアに着いた。

終わりが見えないくらい沢山の露天が立ち並び、多くの人でごった返していた。


「うわぁぁっ!!すっっごいっ!!リアル映画の世界っ!!」


おもわず走り出したい気持ちに駆られたが、鎖(リードベルの手)に繋がれてるのでそれはできず、手の届く範囲で背伸びして露天商を次々と覗く。


「わぁ!りんごだ!美味しそう!あれはマンゴーかな!?」


「わっ!見たことない野菜!あれはなんだろう…!?」


「リュバーブだよ、お嬢ちゃん!」

露天商の男が教えてくれる。

「リュバーブ!?」

「甘く煮たりしてジャムにすると美味しいよ!」

「ジャム!?へぇぇ〜っ!!」

屋敷のコックなら知っているかな?

美味しかったら、スコーンやカンパーニュの付け合わせにしてみよう!

そう思ってワクワクしていると…


「お前…リュバーブを知らないのか…!?」

リードベルが信じられないような顔をしてこちらを見ていた。

「へ…?」

不思議に思って脳内検索すると、システィーナの記憶にバッチリあった。

あれはイチゴジャムと同じくらい、この辺では一般的なハーブの一種だった。


「あ…」

まずい…日本ではまず見かけない物だったから油断した…!


「もち、もちろん知っているに決まっているでしょう!?今のはわざと知らないふりをしただけよ!!」

「何のために…?」

それなっ!!

私が聞きたいわっ!それを聞くなよっ!!


「何だっていいでしょ!!ふんっ!」

最後は謎の逆ギレで無理矢理終わらせた。

あぁ悪役令嬢でよかった…



「………」

リードベルが不審な目で見ているが、気付かないふりをする。

その後、マーカスのメモを参考にしながら、チーズやウィンナーなどを買っていった。

…量も少ないし、来客用なのかな…?


「それで、一番最後は…」

リードベルが最後の文字を見て固まる。


「…?どうしたんですか?」

不思議に思ってメモを覗くと、そこには

「システィーナの欲しがる物を一つ」

と書かれていた。


「……へっ!?」

なんだそりゃ…!?


これをきっかけに二人の距離を縮めるとかいうマーカスの計らいなのだろうか…? 



「……なんだ、お前の欲しい物って…」

リードベルはこちらを見向きもせずに尋ねた。


「え…そんなこと急に言われても分かりません…」

…強いて言うなら、私のことを好きになってくれる普通の恋人が欲しいけど…

そんなこと、口が裂けても言えない…


「それを買わないことには帰れないぞ…」

リードベルが青い顔をして言う。

…全くどこまで真面目なんだか…


「んーじゃあ、手っ取り早く適当な小さいアクセサリーでも買っていきましょうか…?」

「それは本当にお前が欲しい物なのか…?」

「いや、特には…」


うーん……


……本当に欲しい物って、なんなんだろう…?


前の世界でも特に欲しい物とかなかった気がするけど…


うーん……


「やっぱり一番は恋人かなぁ…この世界だったら、攻略本だけど…」

「はぁ…?」


あ、マズい、声に出ちゃってた…

まあ、いいか、コイツだし…


「私はいま一番、あなた達のいろんな情報が欲しいですね〜!」

そう、私のバッドエンド回避のために。


そう言うや否や、リードベルの表情が暗くなった。

「俺達の…情報…?」


「……?」



「やはりお前は他国のスパイだったんだな…っ!!」


「……へっ!?」


“やはり”!? “他国のスパイ”!?


……ちょ、ちょっと話が見えてこないんですけどー!?


そう思っている隙に、また再び路地裏に連れ込まれる。

今度はさっきよりも奥の奥に。


ドンッ!


本日二度目の壁ドン


さっきと違うのは、首に長剣を突きつけられているところだろうか…



「…えっ?えっ!?」

何してまんの!?


リードベルが金色の瞳で鋭く睨み付ける。

「マイラが言った通りだな…」


マイラ…!?またマイラかよ…!!


マイラのせいで、さっきの軽い一言でスパイ容疑かけられちゃったわけ!?

私はただあなたがたの攻略本が欲しいって言っただけなんだけど…っ!?

でも私をみるリードベルの顔が完全にマジだ…

これはヤバい…


もしかしたら、リードベルルートでは、悪役令嬢がスパイだったとかいう設定があったりして…

あり得るっ!!!

だとしたら、私このまま処刑されちゃうルートじゃ…っ!?



それだけはマズいっ!!!



「誤解ですっ!!私はスパイなどではありませんっ!!」


「黙れ…スパイは皆んなそう言うんだ…」


リードベルは目を見開いたまま静かに言う。

いつぞやの私のセリフを横取りされた…くそぅ…


スパイもそう言うかもしれないけど、スパイじゃない奴だってそう言うんだよう〜っ!!



ちょっと護衛騎士助けてよ…っ!!

顔を青くして目で護衛騎士を探すが、二人の姿が見えない…


ちょっ…!!!

こんな時にどこ行ったよ!!!?



「あの屋敷で堂々と始末すると、後々いろいろと面倒だからな…ここで野党に見せかけて殺してやる…」


地鳴りのような声で言う。


いや…!その思考、まんまチンピラじゃんっ!!


「そんな…!証拠もないのにいきなり私を殺すっていうの…!?」

「私を殺すなら、証拠を持ってきなさいよ!確固たる証拠を…っ!!」


私は推理漫画の犯人のセリフを参考にしながら必死に叫んだ。

マズい、これは逆効果かもしれない…


「…そんなものを悠長に探していたら、お前に逃げられてしまうかもしれないだろ…?」

金色の瞳が不気味に光る。


「そんな…!私がただの善良な公爵令嬢だったらどうするのよ…!?」


「善良ではないことはもう分かってるだろ?それに情報操作など、後でどうとでもなる…」


マジか…っ!!お前こそ悪役王子じゃねぇか…っ!!!


もう何言っても無駄だと悟ったシスティーナは、悔しさに歯を食いしばり、最期の捨て台詞を吐いた。

「……あんたが作る国はきっとロクでもないんでしょうね!!マイラみたいな大嘘つき者が蔓延る腐った社会を作っていくがいいわ…っ!!」



「……お前が言うな。じゃあな。」

冷たい表情のリードベルが剣を振りかぶる。


まさかこんなところでバッドエンドを迎えるなんて…っ!

「リードベルのクソ色ボケ王子ぃーーーっ!!!」


リードベルがシスティーナの首目がけて剣を振る途中、何者かが上から飛び降りてきた。

「!!」

リードベルはすぐさま剣先をその相手に向けるが、システィーナの首も少しかすった。

「いったあぁっ!!」



「ぐはっ!!」

リードベルが斬りつけた相手は、護衛騎士の一人だった。


「!?」


どういうこと…っ!?

なんで護衛騎士がリードベルを襲ったりするの…!?

困惑している間に、後ろから何者かに口を塞がれる。

「…っ!!?」


「ははっ!捕まえたぞ!!」

振り向いたらもう一人の護衛騎士だった。


どういうこと…っ!?


私は再び護衛騎士によって首に剣を突きつけられた。


「お前達…どういうことだ…っ!?」

リードベルは突然の部下達の裏切りに信じられないような顔をしている。



「ハハハハ…!俺たちがその他国のスパイだったんだよ!まんまと騙されたなっ!!」

あっさりと白状した元護衛騎士達。


「俺達二人の目的はこの国の滅亡だ!その為には三人の王子と婚約者の二人の女を殺す!特にこっちの女は公爵令嬢だ、次代の王妃になる可能性が高い、おとなしくここで死んでもらう…!」


分かりやすく目的まで説明してくれてありがとう!

お陰で敵は全部で二名だということも、私がスパイじゃないということも分かったよっ!!

でも私はさっきよりもピンチです!

本気で私を殺す気らしく、ちょっと剣が首に食い込んでる…

めっちゃ痛いんですけどっ!!?

やめてよ!跡になっちゃうじゃん!

今度舞踏会があるのに…っ!!って今殺されたらそんなの関係なくなるんだけどさっ!!


これが走馬灯というのか、一瞬の間にもの凄く思考が動いた。


「さあ、この女を殺されたくなければ、そいつに大人しく殺されるんだな!」


先ほどリードベルに斬りつけられた男がゆっくりとリードベルに剣を振り上げる。

「ハハハハ!死ねぇっ!!」

「うわっ!!」

私はおもわず目を瞑る。


「ぐはっ!!」


「……?」

目を開けると、斬りつけた最初の騎士にトドメを刺していた。


「きゃあぁあぁっ!!」

恐ろしい光景に私はおもわず叫ぶ。


「てってめぇっ!!この女がどうなってもいいのか…!?」

私を人質にとっている男が動揺して後ずさる。

いや、本当だよっ!!


「俺を殺した後に、どのみち、この女も殺すつもりだっただろ…?」

血のついた剣を持って近付いてくる。


「くっ…!こうなったらこの女だけでも…っ!!」

そう言って持っている剣に力を込める。

や、やばい…っ!!!


首に走る痛みにおもわず目を瞑るも、次の瞬間には男の叫び声と共に男が後ろに倒れ込んだ。

危うく私も一緒に倒れそうになるところをリードベルが手を掴んで助けてくれた。

一体どうなったのかと思って、反射的に倒れた男に目をやろうとしたが、すぐにリードベルが目を覆う。

「女は見ない方がいい…」

その言葉にゾッとした…


確かに…殺人現場なんか目にしたら一生トラウマになりそうだ…

既にちょっと見ちゃったし。

私はリードベルの腕が自分の顔からずれないように両手で必死に押さえた。



ーーー



「…もう大丈夫だ…」

路地裏に出たらしい。


明るい場所に出たら、急にホッとしたらしく、身体の力が抜けて、その場にへたり込んだ。

「お、おい、大丈夫か…!?」

その時に初めて私の首から血が流れてることに気付き、慌てて「ちょっと待ってろ!」とその場を離れようとするので、すぐさまその手を捕まえる。

ガシッ!


「!!?」


「一人にしないでっ!!」

またどんな奴が命を狙いにくるかわからない…!

私は必死の形相で懇願した。


「……っ!」

一瞬驚いた顔をしたリードベルだったが、すぐにシスティーナの前に跪くと、落ち着いた声で言った。


「……大丈夫だ、この辺を警備してる者をちょっと探してくるだけだ。お前の手当てをできる者も探さねばならないし。」


「一人で待ってるなんて無理っ!私も行くっ!!」


「…行くったって、お前歩けないだろ…」

「それでも行くのっ!連れて行ってっ!!」

駄々を捏ねる子どものようにねだる。


「はぁ…」

ため息を吐くリードベルが、渋々システィーナを抱き上げる。

この場にいたくないシスティーナは、なりふり構わずリードベルの首に抱きつく。


「なっ…!」

システィーナのそんな大胆な様子に、一瞬顔を赤くするリードベルだったが、システィーナが怯えるようにより強くしがみついてきたので、それ以上は何も言わずに、再び人探しを始めたのだった…









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