第10話「マイラの決意」〜マイラ視点〜
システィーナが倒れてから翌々日の朝食…
マイラがいつものようにリードベルを待ち伏せて一緒にパーラーへ行く。
「いつシスティーナにいじめられるか分からないから」って怯えながら言ったら、あっさり食事の行きと帰りは一緒について行っていいと言われた。
あはは!何が難攻不落のドS主人公よ!
リアルは全然大したことないじゃない!!
所詮男なんて単純な生き物なんだから、女の武器を使えば速攻で落とせるのよ。
前の世界でだってそうだったし。
どれだけ他に好きな人がいるとか言ってたって、私に言い寄られればあっさり私になびいちゃうんだもん。
男なんてみんなチョロいわよね。
恋愛なんて簡単。
そう思っていたのに…
「…あの、フィリスの奴…っ!!」
マイラは苦虫を噛み潰したような顔をした。
前回のループの時にはフィリスを攻略対象に選んだ。
この世界では、ヒロインである私が狙おうと思った相手が自動的に攻略対象者になるようだ。
途中まで順調だった、かなり。
彼は私が今まで遊んできたタイプの男達と似てたから、かなり扱いやすかった。
彼も私に気があるようだったのに、最後の最後であの悪役令嬢に奪われた…
あれには相当ムカついた。
いま思い出しても腹が立つ。
今回のループからあのシスティーナにも誰かが転移して、今までとはまるで別人格になったけど、私の男達を狙うムカつく奴であることには変わりない…
今回は一応リードベルを攻略する予定だけど、その片手間で他の二人の男も落としてやるつもりだ。
そんなのいつもやってきたことだから、朝飯前だ。
エリオットなんて、ヒロインらしい純粋で可憐な雰囲気で近寄って行っただけで既に私に傾いてきてる感じだし?
リードベルもリアルは全然チョロいし。
問題はフィリスよ…
あいつは本当マジでムカつく。
よりによってシスティーナを部屋に連れ込むなんて…!!
本当趣味悪い!
でも、たとえそんな男でも、すべて自分のものにしなければ気が済まない…
むしろ人から奪うことの方が普通に落とすよりも数倍楽しい。
絶対に絶対にシスティーナから奪ってやるわ!!
…でもその前に、リードベルを先に落としておかないとね。
なんてったって今回は彼が攻略対象だから…ふふ…
「どうした?」
席についたリードベルに怪訝そうな顔で見られる。
「いいえ、何でもありませんわ♡」
ありったけのヒロインスマイルで返す。
「そうか。」
そう言って食事を始める。
ふふふ…もうちょっとで陥落させるからね〜♪
マイラもご機嫌で朝食を摂り始めた。
…そこまでは良かった。
その後、体調を崩していたとか言うシスティーナが久々に朝食に姿を現した。
一瞬驚いたが、それでも一応純粋で良い子なヒロインとして
「システィーナ様、もうすっかり体調良くなったのですね〜よかったぁ〜!」
と心底喜んでいるフリをして見せる。
周りへのアピールは大事だからね。
「あ、ありがとう、ございます…」
システィーナは相変わらずぎこちなく返事をしてくる。
はっ!感情が表に出すぎ!
どんだけ不器用なんだか…
あんたなんか一生部屋から出てこなければよかったのに!
内心で舌打ちした。
違和感に気付いたのはその後だ。
一緒にパーラーに入ってきたフィリスがシスティーナに話しかけながら何度も手や肩に触れる。その度にシスティーナはビクリと身体を震わせて、顔を赤らめる。
どう見ても挙動不審だ。
フィリスもフィリスで、そんなシスティーナの反応を面白がるように遊んでいる。
その様子を見るに、二人の間に何かがあったことは一目瞭然だ。
……あのアバズレ女……!!
遂にフィリスに手を出したのね……っ!!!
中身は絶対地味系の鈍臭女って感じなのに、そんなゴミ女に私が出し抜かれるなんて、マジであり得ない……っ!!
はらわたが煮えくり返る。
さしづめ、今まで関わったことないようなイケメン達にチヤホヤされて調子に乗っているんだろう…
今に見てなさい…!!
フィリスも絶対に私のものにしてやるんだから……っ!!!
心の底では激しい怒りを燃やしつつ、表面では「今日の料理も美味しいですね♡」と明るく純粋なヒロインを装う。
こんな真似、鈍臭女のあんたにはできないでしょうけどねぇ!!
食事はヒロインらしく控えめな量だけ食べたら、後はリードベルが帰るのを待って一緒に席を立つ。
さぁて、今度はどんな手を使ってあの女を懲らしめてやろうかしら♪
…とその前に…
リードベルの方も片付けておかないとね…♡
今日は階段を上がってすぐの所にある自分の部屋を通り過ぎて、リードベルの部屋まで一緒に歩く。
「……どうした?」
リードベルが尋ねる。
マイラはピトっとリードベルに寄り添い、腕を絡ませる。
そして儚げに声を震わせる。
「…私部屋に戻るのが怖くて…」
「システィーナか…?」
「はい…」
「体調も良くなったようですし、またいつどんな嫌がらせをされるのか…不安で不安で…」
もちろん女の武器である胸を彼の腕に押し付けるのも忘れない。
そして健気に涙を潤ませながらリードベルを覗き込む。
「…今夜、リードベル様のお部屋に泊めていただけませんか…?」
…よし完璧!
これをやって落ちなかった男はいない!
私は内心で勝ち誇った笑みを浮かべた。
「………」
リードベルは、スッとマイラから腕を離して向き直ると
「悪いが俺は、女は部屋に入れない主義なんだ。」
とハッキリ言った。
「……え……?」
思ってもみない言葉が返ってきて、おもわず思考が止まった。
「え…でもシスティーナ様がいつ何をするか分からないんですよ…!?」
「その時は俺に言えばいい。もしくは執事のマーカスに。」
そう言って部屋に入ってしまった。
バタンッ
……
………
はあぁぁぁ!!!?
なにあれ、マジあり得ないんだけど!?
なにお高くとまっちゃってんの!?
超ムカつくーーーっ!!!
マイラはリードベルの部屋の前で地団駄を踏んだ。
それもこれもぜーーーんぶあの女のせいだわっ!!
覚えてなさい…っ!!!
マイラは怒りに顔を歪ませた。
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