第1話「いきなり絶体絶命」
もうしばらく小説は書かない予定でしたが、やっぱり書きたくなっちゃったので書き始めました。
今回はギャグ要素多めです。よかったらお付き合いください☆
ドンッ!!
「貴様…どういうつもりだ?」
…私は今しがた、とあるイケメン王子の怒りを買って壁際に追い込まれ、首を絞められている…
「んぐぅっ!!」
苦しい!!苦しい!!死んじゃう!!死んじゃう!!
私は自分の首を絞める男の手を必死に剥がそうとするが、力強い馬鹿力で押さえつけられてビクともしない…
「やって来て早々これか、この先が思いやられるなぁ?」
ぐぐぐ…と首に手が食い込む…
ギブギブギブ!!本当死んじゃうからやめて!!
その男は金色の瞳で、私…システィーナ・ブルワーを睨み付けた。
「おやめください!リードベル様!!」
彼の腕にピタッと寄り添って止めてくれるのは、マイラ・リッチという、ゆるふわの可愛い小動物系男爵令嬢だ。
…なんだか、どっかのシャンプーみたいな名前だけど。
マイラに止められて、リードベル王子はその手を緩める。
「私が悪かったんですの!!私がシスティーナ様を怒らせるようなことをしたから…!!」
「仮にそうだとしても、ワインを浴びせかせ、ナイフで傷付けるようなことをする奴を俺は許さない…!」
「…リードベル様…!!」
ぽっと顔を赤らめるマイラ。
…いやいやいやいや!おいおいおいおい!ふざけんなよ!!?
それやったの自分だろー!!マイラ・リッチー!!!
リードベルがやってくるタイミングで突然ワインを頭からかぶって、自分の手を突然テーブルナイフで切りつけ出したから、どうしちゃったのかなーこの子って思ってたけど、まさか私を嵌めるためだったとわね☆
「公爵令嬢だからと言って、自分より身分の低い者を軽く扱うことは許さない!…人の命は皆平等なのだ…!」
「…リードベル様…っ!!」
いやいや…なんか二人で熱くなっちゃってるけど、私が首絞められてる時、後ろでマイラさんめっちゃ笑顔でほくそ笑んでたよ!?
あんたも武闘系王子様ならそういうの察してヒロイン助けるとかしろよ!!
…あ、ダメだ、ヒロインはあっちで、私は悪役令嬢だったんだ…
……
…そうなのだ…
実はつい数日前から、私はこの乙女ゲームの世界の中に入り込んでしまったのだ…
しかもそのゲームはこのリードベルが主人公なのだが、彼の攻略難易度が高くてクリアできないと有名で、公式攻略本も一切売られておらず、世の女性達を悩ませていた作品だった。
そんな主人公の彼がいま目の前にいるのだ…
やや日に焼けた健康的な肌に、少し長めの黒髪と輝く金色の瞳、武闘派で体格もいいリードベル・モウブレー第一王子様だ。
主人公なだけあって、それはそれは美男子なのだが、いま彼の怒りは私に一心に向けられている。
マイラが小動物系の目をうるうるさせて、リードベルの背中の服を可愛くちょっと摘んだくらいにして訴える。
「私は元平民であることを蔑まれることには慣れています…」
「でも…私はシスティーナ様とも仲良くなりたいんです。だってここには、女性が2人しかいないんだから…」
グスッ…とわざとらしく涙を流すフリをするマイラを見て、ようやくリードベルもシスティーナの首から手を離した。
「げほぉっ!ぐぇほぉっ!!」
公爵令嬢らしからぬオッサンみたいな咳が出てしまったが、まあしょうがない…
「今日はマイラに免じて許してやるが、次は気をつけるんだな…」
リードベルは三白眼の金色の瞳を見開いてシスティーナを睨み付けた。
それに対してシスティーナもリードベルを睨み付けた…
「この…っ!クソ王子…!!」
「なんか言ったか!?」
「い、いえっ!!」
ちっ…
小声で呟いたのに聞こえてたのかよ…!
リードベルが出て行った後、マイラは私を振り返り、
「早速、主人公に嫌われちゃったわね♪」
とクスクス笑いながら、同様に晩餐室を出て行った…
厄介だ…
とてつもなく厄介だ…
何が厄介って、あのマイラ・リッチのことだ。
実は私だけでなく、彼女も異世界転移者なのだ。
しかも数日前にこの世界に来たばかりの私と違って、今回ループ4回目という大ベテランだ。
おまけにあちらはキュルルン可愛いヒロインで、私は吊り目がとっても素敵な悪役令嬢…
あまりにも分が悪い…
更に更に言うと、あっちの中身は男性経験豊富な26歳のリア充女子。
そして私はというと…ここまで清らかな身体を維持し続けてきた、彼氏いない歴=年齢(27歳)の元独身会社員だ。
年も自分のが上だし、なんかこの条件だけで、心臓を滅多刺しにされているようなダメージを感じる…勝手に。
転移者だと言うことをバラしたつもりはないのだが、明らかに今までの悪役令嬢とキャラが違っているからと、私の正体に気付いたらしい…
そんな大ベテランのマイラ・リッチ先輩に、初日から対抗心をメラメラと燃やされて、早速こんな事件に巻き込まれることとなったのだ。
ああもう最悪……これからどうしていこうか……
私は頭を抱えた…