表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/61

勇者として

 後には静寂だけが残された。


 俺も……そして他のメンバーも、なにも言わない。

 ただただ、遠くで立ち上っている火柱を眺めるのみだった。


 ――あの火柱が上がっている場所こそが……まさしくフェミア街だ――


 先ほどユーマオスが発していた言葉が胸に突き刺さる。ずっとレクドリア家に虐げられ、それでも日々を懸命に生きてきた父さん。外れスキルを授かってもなお、明るい表情で俺を受け入れてくれた母さん。


 そして幼い頃から苦楽をともにしてきたユリシア。


 他にも知り合いは沢山いる。

 その全員が、あの炎のなかに呑み込まれたと――


「あ……あの。アルバート……」

 そんな俺に向けて、後ろからルリスに声をかけられた。

「え……と、フェミア街にはいまから軍を派遣するわ。急ぎで行ってもらうから、だから……」


「ありがとう……ルリス。でも大丈夫だ」


「え……?」


 ――俺は勇者になった。

 もちろん最初のうちは戸惑いしかなかったし、こんな俺に勇者が務まるのかと不安にもなった。


 だけど。


 俺はずっと、夢見てきたはずだ。

 フェミア街のみんなが、平和な毎日を送っていることを。

 父や母とともに、将来を心配することのない、明るい日々を過ごしていることを。


 ――だったら。

 ここで立ち上がらずして、なにが勇者だろうか。


「俺も行く。魔王だかなんだか知らないが……みんなで力を合わせれば、きっと勝てるはずだ」


「ア、アルバート……」


「うむ。よくぞ言ったアルバート。それでこそ勇者だ」

 そう言ってきたのは歴戦の戦士バルフレイ。

「まだ街の状況が詳しくわかっていない以上、悲観しているのも違うだろう。各地にいる勇者らも集め、至急、蘇ったという魔王を討伐しにいこう」


「はい……!」


 父さん。母さん。ユリシア。


 俺が必ず助けにいく。

 どうか、どうか無事でいてくれよ……!


 そんな決意とともに、俺は自身の両頬を叩くのだった。



  ★



「こ、これは……!」


 フェミア街に到着した俺は、思わずその場に立ち尽くしてしまった。


 ――地獄絵図。

 そうとしか表現できない大惨事が、目の前に広がっていたからだ。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ……‼」

「だ、誰か、助けてくれぇえええ……!」


 人々の悲鳴が、叫び声が、助けを求める声が。


 街のそこかしこから聞こえてくる。


 各所で火柱もあがっていることから、被害を受けているのは町民だけではない。


 俺が半生をともにしてきたフェミア街は――見るも無残な《火の海》になっていた。


「くっ……!」


 無意識のうちに、両の拳を強く握り締めてしまう。


「父さん、母さん、ユリシア……!」


 先に冒険者や軍関係者らが駆け付けているはずだが、この分ではまともに機能していないっぽいな。


 地面のあちこちで剣士らしき男たちが倒れていることからも、それこそ大勢の戦士たちがやられてしまったんだろう。


「ひ、ひどい……」


 同じく馬車を降り立ったエリも、自身の口元を覆って絶句している。


「まさか……これほどとはな……」


 バルフレイも同様の感想を抱いているようだな。


 いままで多くの経験を積んできたはずの剣士でさえ、フェミア街の惨状には言葉が浮かばないようだ。


「…………」


 だが、かといって怯んではいられない。


 俺は勇者。

 大事な故郷を守れずして、なにが勇者だというのか……!


「ルリス。やっぱりここは危険だ。ここから遠く離れて……みんなの避難誘導を頼めるか」


「うん、もちろんよ」


 馬車の窓から、ルリスが顔だけを覗かせてきた。


 王族が来るにはあまりにも危険すぎる場所だが、だからといってルリスも引くことはなく。せめてできることはやりたいと、避難誘導役を買って出てくれたわけだな。


「もし、アルバートのご両親らしき人を見かけたら教えるから。だから……絶対に死なないで。生きて帰ってね」


「ああ……。もちろんさ」


 ルリスの切なそうな表情に対し、俺は親指を立てて返事をする。


 ――違うわよ。設定なんて関係ない――


 ――正真正銘、私はあなたのことが好き。だから戻ってきてほしい。……ただ、それだけなの……――


 つい先日、ルリスから想いを告げられたことを思い出す。


 相手が誰であろうと関係ない。

 彼女のためにも。両親や幼馴染のためにも。そして街のみんなのためにも。


 ここは絶対、引いていられない――!


「行きましょう、皆さん。相手は手強いですが、俺たちならきっと勝てます。どうか力を貸してください……!」


「はいっ!」

「ふ、任せるがよい……!」


 頼もしい返事をする二人だった。



――――


【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが急速に上がりました。



 レベル:902


 攻撃力:80002

 防御力:70032

 魔法攻撃力:73221

 魔法防御力:61983

 速さ:97632


 神域覚醒まで:あと88


 使用可能なスキル一覧

  ・【鑑定】

  ・【闇属性魔法】


★覚醒の時に入っています。


 平常時よりレベルアップの速度が増しています――



―――

※新作投稿しました!


外れスキル《0ターンキル》で、俺は戦う前から勝利する ~ゴミスキル扱いされて実家を追放されたけど、これは敵を即死させる最強スキルでした。世界を創った女神に溺愛されていて今更戻れない~


https://ncode.syosetu.com/n2390hu/


かなり力を入れて書いていますので、ぜひお越しください……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 こちらの小説が【 2022年10月7日 】に発売されます! 下記の画像が表紙絵となります!▼ 明日10/7、本作が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下記が表紙絵です! クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ