表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/61

覚醒のとき

「なんだ……? どういうことだ……?」


 かくいう俺も、驚きを隠すことができない。


 ユーマオスは昨日、間違いなく冒険者らに引き渡したはず。それなりの重傷を負わせたわけだし、脱獄なんぞできるはずもないんだが……


「ふふ……。|あの方【・・・】の実力は、貴様ら人間の常識をはるかに超えている。この程度のことは、さしたる問題ではないのだよ」


「…………」


 そういえば昨日も、なんの前触れもなく魔物が出現してきたな。

 まさしく《瞬間移動》とでも言うべき能力を、ユーマオスまで持っているということか。


「…………」


 俺をはじめ、エリやバルフレイもほぼ同時に戦闘の構えを取る。


 こいつだけは絶対に逃がすまいと、ユーマオスの一挙手一投足を観察する。


「やれやれ。そんなに怖い顔をしないでくれたまえ」

 そんな俺たちに対し、ユーマオスはひょいと肩を竦めた。

「私はただ、みなにお礼を言いにきただけなのだよ。特にフェミア街の住民――アルバート君にはね」


「は……? 俺に?」


「ああ。聞いたことがあるだろう? 魔王は人々の《負の感情》をエネルギーとする。憎しみや怒り、悲しみ……そういった感情のすべてが、魔王様の糧となるのだ」


「…………」


 そういえば……ルリスから聞いたことがあるな。


 古くから王家に伝わる書物にて、魔王は《負の感情》を喰らう度に強くなっていったと。だからそのために、人々に苦しみを与え、怯えさせ続け、暴虐の限りを続けていたと。


 ――ん? 待てよ。


「そうか……そういう、ことだったんだな……」


 俺は怒りのこもった視線をユーマオスに向ける。


「あんたが理不尽な圧政でフェミア街のみんなを苦しめてきたのは――その《負の感情》を生み出し続けるのが目的だったてことか……⁉」


「ふふ、ご名答。貴様の両親もたしか苦しい毎日を送っていたな。そのおかげで、私は悲願を成就できるようになったというわけだ」


「…………」


 本当に、とんだクズだ。

 あのレオンが可愛く思えてくるレベルだぞ。


 と。


「ユーマオス……!」

 椅子に座ったままの国王もまた、怒りの声を発する。

「魔王を蘇らせてどうするつもりじゃ。いまの平和を壊してでも……いまだに王の座を狙おうとでもいうのか……⁉」


「クク、当然だろう。いまの時代に必要なのは力。周辺列国にも負けぬ武力を身につけることが、我がレベルオン王国において最も重要なことなのだよ!」


「き、貴様……!」


 国王が苦々しい表情で歯ぎしりをした、その瞬間。


 ドォォォォォォォオオン‼ と。

 突如にしてすさまじい轟音が響きわたり、俺は思わず身を竦ませる。


 慌てて窓に向けると――俺はそこに、到底ありえない光景を見た。


「あ、あれは……⁉」


 そう。

 俺が生まれ育ってきた故郷――


 フェミア街の方面から、闇色の火柱が立ち上っているのだ。


 しかも一本だけではない。

 街のあちこちから、細い火柱がいくつも立ち上っているのが見て取れる。


「な、なんだあれは……⁉」


「ふふふ……」


 いったいなにが面白いのか、呆気に取られる俺に対し、ユーマオスは冷静に両肩を揺らすのみ。


「人々の《負の感情》は、いまこのときをもってピークに達し。同じく《負の感情》に捉われた傀儡によって、魔王の降臨となるのだよ‼」


「魔王の、降臨……」


 ――ということは、まさか。

 人々の間で恐れられてきた、最悪の魔王。


 これまで多くの生命を奪い、人類に恐慌をもたらしてきた最悪の化け物。


 そいつがフェミア街の近辺で再臨したということか。


 さすがに信じたくはないが、あんなに禍々しい火柱が出現してしまった以上、あながち嘘とも否定しきれない……!


「ふふ……いいことを教えてやろう、アルバート君」

 いまだ窓を見つめている俺に、ユーマオスは醜悪な笑みを浮かべていった。

「あの火柱が上がっている場所こそが……まさしくフェミア街だ」


「…………っ‼」


 父さん。母さん。ユリシア。

 これまで故郷で暮らしてきた思い出の数々が、俺の脳裏に浮かんでくる。


「君は知らぬだろうが、フェミア街こそが、《剣聖》によって魔王が討ち滅ぼされた因縁の地でね。我が悲願を叶えるためには……これ以上ない好立地だったということだ」


「おのれユーマオス! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁああああ‼」


 さすがに耐えきれなくなったのか、バルフレイが勢いよくユーマオスに斬りかかる。


 ――が。


「おおっと」


 ユーマオスはそれをこともなげに躱【かわ】すと、悠々と宙に浮かび始めた。


「これで計画の第一段階は完了。アルバートよ。唯一レベルの概念が許された貴様が、どこまで食い下がれるか……見届けさせてもらうぞ」


「ま、待ちなさい……!」


 今度はエリが斬りかかろうとするが、時すでに遅し。

 エリの剣が到達するより先に、ユーマオスの姿は宙に溶けて消えた。


 またしても《瞬間移動》――

 現代には存在しないはずの術かなにかを用いて、姿を消したらしい。


――――




【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが急速に上がりました。




 レベル:864


 攻撃力:78943

 防御力:68732

 魔法攻撃力:71004

 魔法防御力:60921


 速さ:95432


 神域覚醒まで:あと134



 使用可能なスキル一覧


  ・【鑑定】

  ・【闇属性魔法】



★覚醒の時に入っています。


 平常時よりレベルアップの速度が増しています――



―――

※新作投稿しました!


外れスキル《0ターンキル》で、俺は戦う前から勝利する ~ゴミスキル扱いされて実家を追放されたけど、これは敵を即死させる最強スキルでした。世界を創った女神に溺愛されていて今更戻れない~


https://ncode.syosetu.com/n2390hu/


かなり力を入れて書いていますので、ぜひお越しください……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 こちらの小説が【 2022年10月7日 】に発売されます! 下記の画像が表紙絵となります!▼ 明日10/7、本作が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下記が表紙絵です! クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ