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打ち合わせ開始

「うむ。時間になったな」


 ――正午。

 レクドリア家に関する緊急会議は、国王シャルルの挨拶とともに始められた。


 会議室に集まっているのは、俺とルリス、そしてエリとバルフレイのみ。


 ルリスいわく、盗聴を防ぐ目的で、会議室全体に防音魔法を施しているらしい。凄腕の魔術師たちで結界を展開し、絶対に情報が漏れないように徹底しているという。


 つまりはそれだけ、今回の会議が機密事項にあたるんだろうな。


 そんな重要な会議に呼ばれてしまうなんて、俺自身も驚きを隠せないが……これでも一応、俺は勇者の身。国を守る者として、ここは腹を括るべきだろう。


「まずは緊急の招集に応じてくれたこと……心より礼を言わせていただきたい。ルリスはもちろんのこと、バルフレイ殿、エリ殿、そしてアルバート殿もな」


 国王はそう言って短く頭を下げると、会議室のメンバーを見渡して続けた。


「では緊急の会議ゆえ、さっそく本題に入らせていただこう。フェミア街についてと……魔王復活の件についてだ」


「…………」


 フェミア街。そして魔王。

 その関連性はいまだにわからないが、やはり《魔王》と聞くと緊張してしまうな。自分の生まれ故郷が魔王と関連しているなんて、信じたくもないが。


「ごめんね……アルバート。いきなりこんなこと言われても訳わからないと思うけど……ちゃんと、一から説明するから」


 そう言って俺の手を握るルリス。


「あんまり知られてないんだけど……実は、レクドリア家は元々王家でね。数百年前は、ユーマオスの先祖が国王だった時代があったのよ」


「な……。そ、そうだったのか……⁉」


 思わず目を見開いてしまう俺。


 たしかにレクドリア家は絶大なる力を誇っているし、侯爵家のなかでもさらにトップクラスの影響力を持っている。


 領民に重税を課し、レオンによる罵詈雑言が許され続けているのも……それが理由のひとつだ。いくらレクドリア家の悪政が有名であっても、それを止められる者はいないのである。


 しかしまさか……王家とも繋がりがあったとはな。

 そりゃあみんな恐れるわけだ。


「《勢力争い》に敗れたことが原因で、レクドリア家は侯爵家に落ちてしまった。それ以来、ずっと王家の座を狙っているのが――レクドリア家なの」


「な、なるほど……」


「そんなレクドリア家が、ここ最近、妙な動きをしていましてね」


 ルリスの説明を引き継ぐ形で、エリが口を開いた。


「各地に強い魔物を出現させていたり、怪しげな組織と手を組んで誘拐をしていたり……そんな目撃情報が、各地からちらほら寄せられていたんです」


 そうか。

 これまでもエリは何度か意味深な発言をしていたが、これはそういうことだったんだな。


「でも、確たる証拠があったわけじゃありませんし……なにしろ相手は侯爵家ですからね。Aランク以上の冒険者で、慎重に調査を進めていたんです」


 そしてエリはルリスをちらと見やって言った。


「そんなレクドリア家の監視をする意味でも、レオンの婚約を受けたのよね? レクドリア家にとっては……たぶん、あなたを利用するつもりだったんでしょうけど」


「ええ、そういうことね」


 澄まし顔で答えるルリスに、俺は驚愕を禁じえない。

 俺の知らないところで、そんな政局が繰り広げられていたとはな。国民のほとんどが知るよしもない――国の裏側ともいえる話だった。


「そのユーマオスは、裏で怪しい集団を形成しているようでね。たしか《闇の軍勢》とかなんとか……」


「…………」


 突如出てきたその言葉に、俺は顔をしかめてしまう。


 ――闇の軍勢。

 かつて先祖から聞いた名前が、ここで出てくるか。


「ユーマオスは、その《闇の軍勢》のなかでも一定の地位を誇っているようで……。こうして拘束された以上、なにかしらの動きをしてくる可能性がある。――それが、この緊急会議を開いた目的よ」


「なるほど……」


 小物感溢れるレオンとは違い、ユーマオスには得体の知れない貫禄があった。


 だがまさか、《闇の軍勢》なる組織までをも従えているとは……


「っていうことは、ユリシアが捉えられていた地下アジトも……連中の拠点だったってことか……」


「うん。そうだと思うわ」

 俺の発言に、ルリスがしっかりと頷く。

「だから……いまうちに対策しておきたいの。またデスワームやブラックタイガーが現れたら大変よ」




「――クク、残念ながらその必要はないな」




「えっ……⁉」


 突然聞こえたその声に、ルリスが大きく目を見開いた。


 彼女だけではない。

 エリやバルフレイ、国王までもが同じく周囲をきょろきょろと見渡している。


「健気にも我らの対策を練っているようだが、貴様らの浅はかな知識で……我らを追い詰められるとは思わぬことだ」


 そんな声とともに、どこからともなく現れたのは――


「ば、馬鹿な……」


 歴戦の戦士たるバルフレイまでもが、震える怒声を発していた。


「なぜ貴様がここにいるのだ! ユーマオス・レクドリア‼」


「ふふ。そう声を荒らげないでいただきたい」


 先日捕らえられたはずの侯爵――ユーマオス・レクドリアは、実に悠々たる振る舞いで会議室の床に降り立った。



※新作投稿しました!


外れスキル《0ターンキル》で、俺は戦う前から勝利する ~ゴミスキル扱いされて実家を追放されたけど、これは敵を即死させる最強スキルでした。世界を創った女神に溺愛されていて今更戻れない~


https://ncode.syosetu.com/n2390hu/


かなり力を入れて書いていますので、ぜひお越しください……!

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