もはや一周回って哀れにさえ見える
本作につきまして、【書籍化&コミカライズ】が決定しました!
よりバージョンアップしてお届けしたいと思いますので、ぜひ続報をお待ちいただけると幸いです!
またあとがきにも重要なお知らせがあります!
事態は急展開を迎えた。
侯爵家たるレクドリア家――その当主が怪しげな事件に関与していた。
その事件は、駆けつけた王国軍や冒険者に大きな衝撃を与えた。
それも当然である。あの地下洞窟にはユリシアが拘束されていたが、その後の調査によって、他にも多くの女性が監禁されていることが判明。実に50名もの若い女性が、あの地下洞窟にて発見されたのである。
「アルバートさん、ありがとうございます……!」
「あなたは私たちの英雄です……!!」
解放された女性たちはアルバートに感謝の言葉を述べていたが――ここまでくると、正直シャレにならない。
そんな大事件に大物領主が関わっていたとなれば、騒ぎになるのも当然といえた。
「嘘だ! 父上はそんなことやってねぇ! 嘘だぁぁぁぁぁああ!!」
このことを知ったレオンは、大声でこの事実を否定。
「全部アルバートだ! こいつの陰謀に決まってる! それ以外ありえねえだろ!!」
錯乱してそう叫ぶ姿は、一周まわって哀れとさえ思えた。
レオンの悲惨なる未来を想像すると、さすがに同情せずにはいられないというか……
最後の最後まで俺に罪をなすりつけようとするその姿は、率直に言って惨めとしか言えなかった。
「おい、なんか言えよ、おい……!!」
ウェステン森林にて、レオンは涙目で俺に掴みかかってきた。
俺はその手を振り払うこともなく、あくまで静かに告げる。
「……レオン様。近く、あなたにも捜査の目が及ぶことになるでしょう。どうか、いまのように虚偽を叫ぶのではなく、本当のことを言ってください」
「ぅううううううう……!」
哀れな泣き声とともに、その場に崩れ落ちるレオン。
さすがに気の毒ではあるが、こいつもこいつで、いろいろと横暴をやりすぎたからな。たとえ今回の事件に関与していないとしても、そこまで同情する気にはなれなかった。
「勇者アルバート殿。今回はありがとうございました」
王都から駆けつけてきたらしい軍人が、俺に深々と頭を下げる。さっきまで現場の指揮をとっていた人だから、かなり地位の高い人物と思われるが……
その軍人が、九十度以上の深いお辞儀をしてきているのである。
「実は軍のほうでも、ユーマオスの不穏な動きには感づいておりました。ですがそれ以上のことはまるで掴むことができず……こうして真相を暴いてくださったこと、心より感謝しております」
「いやいや……とんでもないことですよ。頭を上げてください」
軍の偉そうな人に頭を下げられるなんて、これまでの人生で一度も経験がなかったからな。……というか、これを経験すること自体、そうそう起こりえないだろう。
「本当にありがとうございます……!」
「アルバートさんが来てくださらなかったら、私……!!」
地下洞窟から発見された女性たちも、口々に俺へのお礼を並べたてる。
「は、ははは……」
これは……なんだかとても居づらいな。
いままで否定されることの多かった俺にとっては、褒められることそのものが異常。だからこうして大勢の人々に感謝されているという状況が、なかなか呑み込めなかった。
そう。
それこそ、いますぐにでも逃げたくなるほどに。
「待って」
どさくさに紛れて逃げようとした俺の手を、ふとユリシアの温かな手が包み込んだ。
「アルバート……ありがとう。待ってた」
「ユ、ユリシア……」
うるうるした瞳で見つめてくるユリシアは、やっぱり本当に綺麗で。だからこそ、思春期を迎えた以降は、なかなか前のように話しかけることができなかった。
そんな彼女の美しさを、改めてアルバートは再認識したのだった。
「その……えっと」
俺は改めて彼女に向き直ると、指先で頬をかきながら呟いた。
「ユリシアが無事で、本当によかったよ……。あと、これ」
そう言いつつ、俺は洞窟内で拾ったハンカチをユリシアに返す。
「これがあったから、急いでいかなくちゃって思ったんだ。まさかこんな物をずっと持っててくれたなんて……予想外だったけどな」
「そんなの、当たり前でしょ?」
俺の差し出したハンカチを、ユリシアはそっと受け取る。
「これが、私の宝物だったんだから。大人になっても……ずっと持ってたんだから」
「ユ、ユリシア……」
そこまで言われたら、やっぱり背中がむず痒くなってしまうな。
いままでずっとレオンに否定され続けてきて……ずっと目の前の生活に背一杯の日々を送ってきたから。
「ありがとう。俺はまだ勇者になったばかりだけど……フェミア街の幸せを、少しずつ取り戻していきたいと思ってる。そんなに簡単なことじゃないけど、きっと、やり遂げてみせるから」
――そう。
この事件によって、結果的にレクドリア家は世間から冷たい目で見られるだろうからな。レクドリア家の悪政から逃れることができれば、きっとフェミア街のみんなも幸せを感じることができると思う。
「アルバート……」
そんな俺の表明に、ユリシアはなにを思ったのだろう。
またも頬を桜色に染め、こっくりと頷いた。
「うん……。そうだね。そんな日がきたら……素敵だね」
――――
【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが急速に上がりました。
レベル:602
攻撃力:43213
防御力:43213
魔法攻撃力:53675
魔法防御力:49003
速さ:73632
神域覚醒まで:あと398
使用可能なスキル一覧
・【鑑定】
・【闇属性魔法】
★覚醒の時に入りました。
今後、全自動レベルアップの速度がさらに速くなります。
今後、全自動レベルアップの速度がさらに速くなります――
【重要なお知らせ】
↓新作を投稿しました!
https://ncode.syosetu.com/n4133hn/
敏捷度9999999999の俺にとっては、光の速度さえウスノロに見える。~貴族家を追放されたけど、外れスキルが化け物すぎたので、俺は幼馴染の王女と新生活を送ります。おや、いつのまにか実家が滅亡してる
ぜひご確認していただけると嬉しいです!
また前書きにも記載しました通り、本作【全自動レベルアップ】については、書籍化とコミカライズも決定しています!
詳細は追ってご報告しますので、何卒よろしくお願い致します!