表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/61

……弱すぎないか?

「ふふふ……はははは……。はーっはっはっはっは!」


 漆黒のオーラを携えたユーマオスが、勝ち誇ったかのように笑い声をあげる。


「驚いて言葉も出ぬか! そうであろう! レベルという概念を扱える者は――この世にわずかしかおらぬからな!!」


「い……いや……」


 なんだろう。


 ユーマオスがこんなにテンション上がってるのを見ると、非常に指摘しづらくなるな。


 鑑定結果を見るに、たいしたステータスを持っているようには見えないんだが――もしくは俺には気づいていない《なにか》があるということか。


(まあ……なんにせよ、油断するわけにはいかないしな)


 そう判断した俺は、引き続き剣を構える。


 ――聖剣レヴァスタイン。


 ほとんど剣の心得がない俺でも、これを握るだけで《使い方》が身体に馴染むというか……

 伝説の剣聖たるパルア・ヴァレスタインの構えが、自然と脳内に浮かび上がってきていた。


「ぬっ……」


 そんな俺を見て、まさかたじろいでしまったのだろうか。


 ユーマオスは一歩だけ後ずさったが――その後、意を決したように鞘から剣を抜いた。


「ふん……。禁忌なる力を持つ者といえど、しょせんは我が領地の貧民。私が負けるいわれはないな」


 なるほど……

 噂には聞いたことがあったが、やはりユーマオス自身も剣を握るようだな。


 いわく、凄腕の冒険者でさえ魂消たまげるほどの実力者。

 いわく、多くの剣士を一瞬で蹴散らすほどの実力者。


 せいぜい創作じみた偉人伝だと思っていたが、これなら納得の腕前といえるだろう。


 問題があるとすれば、奴自身のステータスが、想像していたより強くないということ。これほどの武勇伝があるくらいだし、たぶん、まだまだ実力を隠しているんだろうな。


 であればなおさら、油断するわけにはいかない。


「ユーマオス・レクドリア。領主たるあなたと戦うのは本意ではないが、戦いが終わったあと、話してもらいたいことが山ほどある」

 言いながら、俺は剣の切っ先をユーマオスに向けた。

「ゆえに、ユーマオス・レクドリア。《勇者》として……おまえを、監禁の罪で拘束させてもらおう!」


「ふん! 生意気な小僧めが!」


 ユーマオスは憎々しげに表情を歪めると、同じく剣の切っ先を俺に向けた。


「そこまで言うならわからせてやろう! 才能の差というものをな!」


 ユーマオスはそう叫ぶや、俺に突進をかましてきた。

 そのスピードはさすがのもの。


 数メートルは開いていたはずの距離が、一気に詰められ――


(は……? なんだこれは……?)


 ――てはいかなった。


(なんだ? 偉そうに啖呵を切った割には、随分と遅いようだが……)


 そう。


 〇・〇〇〇一秒経っても。

 〇・〇〇〇二秒経っても。


 依然として、俺とユーマオスの距離は大きく縮まらない。


 ここまで大胆に時間を無駄にするとは……よほど余裕があるようだな。


 もちろん油断は禁物なので、俺も攻撃に転じなければならない。


「ぬおおおおおおおおおっ!!」


 俺は大声とともに地を蹴り、疾駆した。


 瞬時にしてユーマオスとの距離を縮めていくが……不思議なことに、ユーマオスは俺の動きにまるで気づいていない。


 どういうことだろうか。


 余裕の表れだとは思うが、それにしても時間を無駄にしすぎている。


 〇・〇〇〇三秒後。

 ユーマオスはまだ俺の動きに気づいていない。


 〇・〇〇〇四秒。

 ユーマオスはやっと、俺が目前に迫ったことに目を見開いた。


 そして〇・〇〇〇五秒後。

 どういうわけだか、ユーマオスは「きゃっ」と女の子のような悲鳴をあげた。


 ……もちろん、ここまできて攻撃を止めることはできない。


 ドォォォォォォォォォン!! と。

 俺の振り下ろした剣が、見事にユーマオスの胴体を捉え。


 気持ちいいくらい盛大に、ユーマオスは近くの壁面にまで吹き飛んでいった。


「……あらあらあら」


 エリがユーマオスに半分呆れた表情を浮かべているのが、なんとも印象的だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


▼【※超速報※】 こちらの小説が【 2022年10月7日 】に発売されます! 下記の画像が表紙絵となります!▼ 明日10/7、本作が発売します! 超面白い内容となっていますので、ぜひお手に取りくださいませれ(ノシ 'ω')ノシ バンバン ↓下記が表紙絵です! クリックで商品紹介ページに飛べます! i000000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ