あれ、弱くない?
謎の地下通路の先には……意外な人物がいた。
ユーマオス・レクドリア。
レオンの父にして、フェミア街の周辺を収める悪徳領主。
この場には明らかに不釣り合いな男が、醜悪な笑みを称えて俺の前に立ちふさがっていた。
だが……あいつを問いただす前に、いまはやるべきことがある。
「ユリシア。大丈夫か」
「う、うん……っ」
かつて仲の良かった幼馴染は、頬をやや赤く染めながら頷いた。
相当ひどい目に遭ったようで、服の各部がはだけてはいるが――それ以外は無事なようだな。
あのまま俺が間に合わなかったら、ユーマオスがなにをするつもりだったか……
想像したくもないが。
「ありがとう、助けにきてくれて……」
頬を赤く染めたまま、ユリシアがぽつりと呟いた。
「……ここにきたのは、勇者の仕事で……?」
「まあ……そうなるな。けど」
俺は懐からピンク色のハンカチを取り出すと、そのハンカチでユリシアの涙を拭ってみせた。
「洞窟の入り口で、このハンカチを見つけてね。まさかとは思ったけど……ユリシアが無事で、本当に良かった……」
「……ぁ」
ユリシアの頬が、綺麗なピンク色に染まっていく。
本当に……怖かったんだろうな。
俺に両手足の拘束を解かれるまで、ユリシアはずっと黙っていた。
「エリさん。彼女を……お願いできますか」
「ええ……。任せてください」
エリはこくりと頷くと、そっとユリシアを抱きかかえた。
いまのユリシアは心身ともに不安定だからな。
エリに諸々を任せたほうが無難だろう。
「アルバートさん……。気をつけてください。やはり調査通り……レクドリア家は、よからぬ企みを画策していたようです」
「よからぬ……企み……?」
そういえば前にもそんなこと言ってたな。
レクドリア家のことを、冒険者たちでも独自に調査しているとかなんとか。
もしかしてそれが……ここに繋がるということか。
――――
【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが急速に上がりました。
レベル:579
攻撃力:43423
防御力:42112
魔法攻撃力:52133
魔法防御力:47598
速さ:72341
神域覚醒まで:あと421
使用可能なスキル一覧
・【鑑定】
・【闇属性魔法】
――――
ユーマオスと対峙している間にも、見慣れた文字列が視界に浮かび続ける。
本当にすごいな……このスキルは。
全自動の名の通り、なにもしないでも勝手に強くなっていくのだから。
スキルの全容はいまだによくわからないけれど、これならきっと、ユーマオスにも負けない。時間が経てば経つほど強くなるこのスキルがあれば、きっと……
「ふ……。なるほどな。アルバート・ヴァレスタイン」
ユーマオスは変わらず余裕綽綽とした笑みを浮かべると、妙に威厳のある声を発する。
「妙に強くなっていると思ったら……やはりそういうことか。魔王様の予言は本当だったということだ」
「なに……?」
どういうことだ?
あいつ……聞き違いじゃなければ、いま魔王様といった気がするが。
「かかってくるがよい、禁忌なる力を持つ者よ。私も魔王様に見いだされし者……そう簡単には負けぬぞ……!!」
ユーマオスが大きな叫び声を発した、その瞬間。
ドドドドドドドドドドドドドド……! と。
あまりに巨大な衝撃波が、奴の全身から発せられた。
「わわわわっ!」
その威力に、Sランク冒険者たるエリも目を見開く。
「くっ……。こりゃすごいな……」
室内にあった壁画も。机も。なにもかも。
ユーマオスから放たれる衝撃波によって、大きく揺れている。
いや――それだけじゃないな。
ユーマオスから発せられる気迫が、ここの洞窟そのものを大きく揺らしているかのような――
「ふふ……どうだ」
そして数秒後……ユーマオス・レクドリアは先ほどより明らかに異なるオーラを放っていた。
漆黒のオーラが、奴を取り巻いていて。
目の色までもが、おぞましい血の色に染まっている。
まさしく《悪魔》とでも表現すべき化け物が、俺の前に立っていた。
「私も魔王様に身を預けた身……。レベルという概念を許された、至高なる存在なのだよ……!」
「…………っ!」
信じられない。
まさかこれほどの使い手がいようとは。
――
ユーマオス・レクドリア 鑑定結果
レベル:190
攻撃力:24321
防御力:21242
魔法攻撃力:17564
魔法防御力:15673
速さ:11567
★レベルの権限を与えられた人間。
権限付与者は魔王。
弱点は《速さ》ステータス。
レベルに反してそれほど数値が高くないので、ここを起点にして戦うと楽。
――
「……あれ?」
だが。
試しにユーマオスを鑑定してみた結果……そのステータスはあまりに拍子抜けするものだった。
……これ、思ったより弱くないか?
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