敵の元へ
「「キシャァァァァァァァァァァァァァァァァアアア!!」」
ふいに魔物の奇声が響きわたり、俺は身を竦ませた。
「えっ……!?」
「ぬ……?」
エリとバルフレイも面食らった様子で、きょろきょろと周囲を見渡している。
――そう。そうなのだ。
俺も《勇者》の称号を授かった身として、自分の実力はそれなりのものだと自負している。エリやバルフレイは言わずもがな、誰もが知る実力者であろう。
……だが、俺たちはまったく予見することができなかった。
この魔物たちの登場を。
(そういえば、さっきのゴブリンたちもそうだったな……)
さっき俺たちの前に再び現れた魔物たちも、その予兆をまったく感じ取ることができなかった。まるでその場に《瞬間移動》でもしていたかのように……
(これなら本当に見極められるかもしれないな……。魔物たちが突然発生している理由を……)
だが、いまは思考に耽っている場合ではあるまい。
気配を探るに、《瞬間移動》してきた魔物たちはこっちに向かってきている。しかも相当の数だから、決して油断するわけにはいかない。
「……いや。ここは任せておけ。アルバートよ」
と。
剣を構えようとした俺を、バルフレイが右手で制した。
「この先に、ユリシアなる知人がいるのやもしれんのだろう? ……であれば、この先に行くべきはそなただ。そなたが……ユリシアを助けてやれ」
「バ、バルフレイさん……」
ここで“大丈夫ですか”という問いかけは無粋だろう。
バルフレイは誰もが知る最強の《勇者》。
俺ごときが彼の心配をするなんて、思い上がりもいいところである。
「ゴォォォォォォォォォオオオ!!」
現れた魔物たちは――オークの群れのようだな。
人型の魔物で、筋骨隆々に鍛え上げられた身体に、右手に握られた禍々しい棍棒。ゴブリンよりは数段強く、オークともなるとさすがに素人では勝ち目がない。
しかもさっきまでの魔物と同様、闇色のオーラを携えているな。
いままでの経験を踏まえても、《ただのオーク》とは考えにくいだろう。
「さあ、行け! アルバート、エリよ!!」
――だが。
そんなオークの軍勢を前にしても、バルフレイは一歩も引かなかった。
「私ひとりでこいつらを撃破する! この先の探索は――そなたたちに託すぞ!!」
「…………はい!!」
「バルフレイさんも、どうかお元気で……!!」
俺たちの激励に、バルフレイは小さく頷いて応じるのみだった。
――さすがは勇者。
すでに意識をオークとの戦闘に向けているようだな。
彼ならきっと大丈夫だろう。一人でも絶対にこの場を切り抜けることができる。
「行きましょう! アルバートさん!!」
「はいっ……!!」
エリに手を引かれ、俺たちは洞窟の奥まで走り出すのだった。
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