緊張感なさすぎてやばい
どれほど時間が経っただろう。
ウェストン森林からだいぶ離れた、草原地帯……
怪しげな《気配》の位置を探るうち、とうとうこんなところにまで来てしまった。レオンたちとはだいぶ距離が離れてしまったが……まあ、大丈夫だろう。
あいつは仮にも当たりスキルの所持者。
《魔法の全使用可》という最強スキルを持っておいて、まさかゴブリンやウルフに遅れを取ることはあるまい。無駄な心配はやめて、いまは目の前のことに集中しよう。
「アルバートさん……どうしたんですか?」
急に立ち止まった俺に対し、エリが疑問を投げかけてくる。
「いえ……このへんで感じたんですよ。怪しげな気配を」
「気配……?」
そこでエリはバルフレイと目を合わせ。
二人同時に、なにか煮え切らなさそうな表情を浮かべた。
「ごめんなさい……。やっぱり、私にはなにも感じ取れないです……」
「いえいえ……俺も感じ取れたのはほんの一瞬でしたから……」
だが……あのねちっこい気配は、きっと気のせいではないと思っている。
俺の視線に気づいて、すぐさま気配を消したようだが……
その臨機応変さを考慮に入れても、油断ならない相手であることは容易に推察できる。
俺は瞳を閉じ、ほんの数秒だけ気息を整えると。
「ここだ!」
かっと目を見開き、すぐさま「闇魔法」を発動する。
上級魔法のひとつ……ブラックメイズ。
攻撃対象に向けて、無数の「闇の球」を放つ強力な魔法だ。
俺も実物を見たことはないが、“誰もが憧れる強い魔法のひとつ”として、バレス兄さんから教わったことがあった。
ドォォォォォォォォォォォォオオオオ! と。
その「闇の球」たちが、地面の一か所に向けて集中的に突撃していく。
一撃、そしてまた一撃と。
すべての「闇の球」が姿を消した頃には――そこになんと、地下に続く階段が現れた。
緑豊かな草原地帯のなかにあって、明らかに不釣り合いな階段である。
「なんと、これは……!」
バルフレイが驚きの声をあげた。
「こんなところに地下階段……!? 聞いてないぞ……!」
「ギ、ギルドでも報告は上がっていません……!」
エリもかなりびっくり仰天しているな。
大きく目を見開き、突如出現した地下階段をぽかんと口を開けて見つめるばかりだ。
「ここから……なにやら不穏な気配を感じます。ゴブリンやウルフたちを操っていた黒幕が……ここにいるかもしれませんね」
「「…………」」
どうしたことだろう。
エリもバルフレイも、俺を見て口をパクパクしている。
「そなた……気配を的確に捉えたのもすごいが、あんなにも強力な闇魔法が使えたとはな……」
「私……アルバートさんがいればなんでも解決してしまう気がします」
「いやいや、なに言ってんですか……!」
思わず突っ込みを入れてしまう俺。
こんな土壇場で、なんとも緊張感のないやり取りである。
もしくは――これこそが強者の風格というやつだろうか。
大事なときこそ、心乱すことなく、平常心でいるべし――
尊敬するネーニャ姉さんが、いつも言っていた言葉だ。
「……というわけで、いまから突撃したいと思います。俺なんかじゃ足手まといにしかならないかもしれませんが……エリさんもバルフレイさんも、どうかご協力いただけませんか?」
「いやいや……私のほうが足手まといになりそうなんですが」
「私も《勇者》になって長いこと経つが、そろそろ自信がへし折られそうだぞ……」
こんなときにも緊張感のない二人だった。
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