仮初の設定はいずこへ
Sランク冒険者……エリ。
そして俺の《先輩勇者》にあたるバルフレイ。
二人は王都の近隣で魔物が出現したことをうけ、急遽、討伐しに向かったのだそう。「王都の近く」となれば間違いなく緊急事態だし、早く倒すに越したことはないからな。
二人の活躍もあって、当該の魔物を倒すことには成功したようだが……
驚くべきことに、さらなる魔物が続々出現してきたらしいのだ。
――闇色のオーラを携え、より凶暴化した状態で。
「そ、その魔物たちはどこにいるんだ!?」
王城を走り抜けながら、俺は隣を駆けているルリスに問いかけた。
「ウェステンの森だって! ここからそう遠くないわ!」
ウェステンの森……か。
王都周辺の地理にはてんで詳しくない俺だが、たしか馬車に乗っているとき、大きな森を見た気がする。あのあたりで戦っている……というわけか。
「そこまで案内するわ! ついてきて!」
「あ、ああ……!」
――エリ。それにバルフレイも。
二人に限って滅多なことはないはずだが、どうか無事でいてくれよ……!
走っているうち、ようやく王城を出ることができた。ルリスがあらかじめ頼んでおいてくれたのか、出入り口にはなんとすでに馬車が用意されている。
「目的地はウェステンの森! 急いで!」
「は……はいっ!」
ルリスの命令に、御者がピンと背筋を伸ばす。
こういうときのルリスは、王族さながらの風格があった。
「本当に申し訳ないわね、アルバート……。またお願いすることになって……」
馬車に乗ったあと、ルリスは申し訳なさそうにそう言った。
「いやいや……。いいんだよ。これが《勇者》としての役目だしな」
「アルバート……」
そこでルリスは一瞬だけ押し黙ると。
意を決したように、俺を見つめて言った。
「あなたと出会ったばかりのとき……私が言ったこと覚えてる?」
「……え?」
えーっと。
なんだっけか。
色々ありすぎて忘れてしまったが、特に印象深いのはこの言葉だろうか。
「あなたはきっと、我が国を救ってくださる《救世主》でありましょう――ってセリフかな。あのときは大げさすぎるだろって思ってたけど」
「……そうね。ちょうどそれのことを言いたかったの」
ルリスはそこまで言うと、両目を閉じ、なにかを思い出すように言った。
「実は……王家にだけ伝わる書物があって。《魔王なる強敵が現れしとき、同じく圧倒的なる力を持った若者が現れるであろう。王家はその者と絶対に関わりを持て》って……」
「…………」
これは驚いた。
王家に伝わる書物……ということは、おそらく初代国王が遺したものだろう。
そしてその初代国王が、《闇の軍勢》への対抗策として、俺に【全自動レベルアップ】を授けた――
「はは……はははは……」
思わず笑ってしまう。
まだまだ謎な点は多いが――これで少しずつ、【全自動レベルアップ】やステータスの謎が紐解かれた気がするな。
「でも……アルバート。ここからが大事な話なんだけど……」
真向いに座るルリスが、優しく俺の両手を包み込んだ。
「最初あなたに近づいたのは、その言い伝えを守るためだった。あなたに来てもらわないと、世界が終わってしまうかもって……」
そして一段と……握る力が強くなる。
「だけど……いまは、ひとりの男の人としてあなたが好き。救世主であろうとなかろうと、あなたに戻ってきてほしいの」
「ル、ルリス……」
そうか。
仮初の恋人――俺たちはそういう設定だったな。
「違うわよ。設定なんて関係ない」
だが、俺のその考えを読み取ったかのように――ルリスが恥ずかしそうに告げた。
「正真正銘、私はあなたのことが好き。だから戻ってきてほしい。……ただ、それだけなの……」
「…………え」
おいおい。
ルリスはいま、なんと言った?
いまの告白は、設定上でもなんでもなく……正真正銘、俺のことが好きだと……
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