王女とデート
翌日。
俺は両親に見送られ、故郷フェミア街を出た。
もちろん徒歩で行くのは大変なので、馬車を使ってだ。
――ありがとう、ありがとう。
――アルバートには期待してるけど、辛くなったらいつでも戻ってきていいからね――
涙ながらにそう語る両親の姿が、いまでも脳裏にこびりついている。
これで……一応は親孝行を果たせたと思っていいんだよな……?
狙ったわけじゃないとはいえ、一年分の税金は免除されたわけだし。多くの金貨を両親に渡すこともできたし。
――本当にありがとう、アルバート。
――いつでもご飯用意して待ってるからね。
「…………」
両親の嬉しそうな表情に、少しだけ心の重荷が取れたかのような笑顔。
人ってあんな屈託のない笑顔を浮かべられるものかと、改めて感じた瞬間だった。
であれば、レクドリア家の悪政がなくなった先。
フェミア街には、どんな幸福が訪れるのだろう――
そんな見果てぬ夢を想像しながら、俺は馬車に揺られるのだった。
★
「アルバートっ!!」
「ル、ルリス……」
数時間後。
王都の馬車屋に着いた俺を、第二王女のルリス・ラ・レベルオンが出迎えてくれた。
もちろん帽子を目深に被っており、服装も全体的に地味な感じだ。だから王女と思われることはないだろうけど――
「おいおい……まさかずっと待ってたのか?」
「うん。それが恋人として当然の務めでしょ♪」
「そ、そうだな……。ははは」
今回だけに限らないんだけど、俺たちって本当に《仮初の恋人》だよな?
たまに、とても《仮初》とは思えない瞬間があるんだが……まあ、それだけルリスが役者ということだろうか。彼女が俺に惚れるなんて、天と地がひっくり返ってもありえないことだし。
「エリさんはどうしたんだ? 俺に王都を案内してくれるって言ってたけど」
「んー。なんかね。急に強い魔物が現れたらしくて……至急、そっちに向かってるみたい」
「そ、そうなのか……」
急に強い魔物。
なんだか心配だな。
またブラックタイガーのときみたいに、大混乱に陥ってなきゃいいんだが……
「大丈夫だって。バルフレイさんも一緒に行ったみたいだし」
「そっか。バルフレイさんも……」
バルフレイ。
《勇者試験》のときに並々ならぬ力を見せつけてくれた彼であれば、きっと心配の必要もないだろう。むしろ魔物のほうを心配したくなるまである。
「それよりも、アルバート!」
ふいにルリスが俺に腕を絡めてきた。
「今日はお休みでしょ!? 一緒に王都を歩きまわろうよ♪」
「ル、ルリス……当たってるんだけど」
「当たってる? なにが?」
「い……いや。なんでもない……」
駄目だ。
もうなにを突っ込んでも無駄な気がする。
――まあ、いいか。
俺自身も、昨日の今日でめちゃくちゃ疲れたし。
今日くらいは、思いっきりリラックスしたい気分だ。
「わかった。一緒に行こう、ルリス」
「やった♪」
そう言って満面の笑みを浮かべるルリスは、やはり《仮初の恋人》とは思えないのであった。
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