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「グググググ……ガァァァァァァァァアアアア!!」


 ミミズとはいえ、さすがは腐っても大型の魔物。


 奇声を上げつつも、長い胴体をしならせながら立ち上がった。


 ダメージがあるのかはわからないが、だいぶ怒ってはいるようだな。絶叫を発しながら突進してくるが、元の動きが鈍重なので、ここに来るまでは余裕がありそうだ。この隙に、なんとしても少女だけは逃がさなくては……!


「さあ、いまのうちです! 冒険者さんたちが来るまで、俺が時間を稼ぎますから――だからどうか、逃げてください……!」


「っ……!」


 迷ったように視線を彷徨さまよわせる少女。


 本当に逃げていいのか葛藤しているようだったが、自分がこの場にいても邪魔になるだけなのは理解しているっぽいな。


「わかりました……」


 とこくりと頷くと、ゆっくり立ち上がり、俺の顔をまじまじと見つめた。


「……ですがその前に、これだけは教えてください。勇敢な戦士たる、あなたの名を」


「…………」


 はは……勇敢な戦士、か。


 外れスキルを授かった俺には、最も似合わない言葉だけれど。


「アルバート・ヴァレスタイン……。ただの外れスキル所持者です」


 それでも俺は、不思議と素直な気持ちで名乗ることができた。そのほうが少女も素直に退散してくれそうだ……という思惑も、あるにはあったが。


「アルバート・ヴァレスタインさん……ですね。わかりました」


 少女はゆっくりとそう頷くと、改めてこくりとお辞儀をしてみせた。


「このお礼は、後日、必ず差し上げます。ですから……どうか生きててください。お願いします……!」


「ええ……。もちろん、俺も死ぬつもりはありませんから」


 それにしても、気のせいだろうか。


 この少女、どこかで見たことある気がするんだが……


 もちろん俺の知り合いに、こんなに可愛い美少女はいない。というより、そもそも女の子の知り合いはほとんどいない。


 にも関わらず、この既視感はいったいなんだろう。


 その出で立ちから、かなり高貴な身分であることは推察できるが……


「ガァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアア!」


 だが、細かい考察はいったん後回しだ。


 そろそろ巨大ミミズがかなりの近距離まで迫ってきている。さっきは不意打ちだったからなんとか吹き飛ばせたが、同じ手はもう通用しないだろう。


「ふう……」


 呼吸を整え、俺は巨大ミミズの出方に備える。


 ――時間稼ぎ。時間稼ぎでいい。なんとか耐えるんだ。


 これだけ騒ぎになってるのなら、冒険者か王国軍が……とにかく戦闘職の人たちが駆け付けてくれるはず。それまで耐えることができれば問題ない。


 もし力及ばず死んでしまったとしても……それでも構わない。


 外れスキルなんぞを授かってしまった俺に、存在価値なんてないのだから。さっきの少女を救うことができただけでも、俺にとっては「大きな功績」といえるだろう。


 ……そして。


「グオオオオ……」


 巨大ミミズがとうとう、俺の眼前にまで戻ってきた。相変わらず怒っているようで、フルルルルル……と唸り声を発している。


 ――すごいな。


 けっこう勢いよく吹き飛んで言ったはずなんだが、まだピンピンしている。やはり素人のキックなど、たいしたダメージにはなりえないか。


 と。


「ガァァァァァァア!」


 巨大ミミズの尾が、俺に向けて勢いよく振り下ろされてきた。かなりの力を込めているのか、それだけで突風が舞い、周囲の瓦礫が飛び散っていく。


「ぐっ……!」


 俺はそれを、両腕を交差させることで受け止める。


 一撃で建物を破壊するほどの魔物だ、これで意識を失うことも覚悟したが――


「……あれ?」


 痛くない。

 全然痛くない。

 これなら母のビンタのほうがよっぽど痛かった。


「ヌ……?」


 巨大ミミズ自身も困惑しているのか、焦ったように続けて尾を叩きつけてくる。


 二撃目、三撃目、四撃目……


 そのすべてを受け止めたのだが、やはり、痛くない。


 手を抜いている……ようには見えないもんな。さっき吹き飛ばされたことで、かなり疲弊してしまっているのだろうか……?


 まあいい。

 なんにせよ、これなら良い時間稼ぎになる。


 もしかすれば生きて帰れるかもしれないな。



  ★



 その一方で。


「あ、あいつすげえ……」

「Aランクの魔物の攻撃を、軽々と受け止めてやがる……」


 先ほどまで逃げ惑っていた人々は、アルバートとAランクの魔物・・・・・・・との戦いを、なかば呆然と眺めていた。


 Aランクの魔物――デスワームは、動きこそ鈍いものの、卓越した攻撃力を誇る魔物だ。数匹集まるだけでも、街や村を壊滅させてしまうほどの怪物――そんなふうに恐れられている。


 もちろん、そんなデスワームの攻撃は一撃一撃が強力。

 鍛え抜かれた冒険者でも、まともに喰らえばただでは済まない。


 そんなデスワームの攻撃を――アルバートは平然と耐えているのだ。しかも一撃のみならず、その次の攻撃までも、ごく当然のように受け止めている。


「なんていうこと……アルバートさんが、あんなに強かったなんて……」

 先ほど彼に助けられた美少女も、呆然とその戦いを見やっていた。

「間違いないわ。彼こそが世界の救世主。帰ったら国王おとう様に知らせないと……!」

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