女みたいな悲鳴を上げる大貴族
「レ、レオン様……?」
「いったい、家にご用が……?」
悪徳領主の息子――レオン・レクドリア。
そいつが突然現れたことに、両親は明らかに「怯え」の表情を浮かべていた。父親などは、慌てて玄関前まで飛び出してきたほどだ。
「レ、レオン様。立ち話もなんです。ひとまず、おあがりくださいませ……」
「あぁん? なんだてめぇ、舐めてんのか?」
あくまで低姿勢に提案した俺の父に対し、レオンがぎろりと睨みをきかせた。
「大貴族の俺様にっ! こんなクッセェ家に上がれってのかよ! 馬鹿にすんなよ貧乏人が!!」
「ひ、ひえっ! し、失礼しました……!!」
慌てて頭を下げる父。
――ひどい。
相変わらず、聞くに堪えない暴言の数々だ。
家の前を通りすがっていく人々も、同情の眼差しで俺たちを見つめてきている。みんなレオンに怯えるばかりで、異を唱える者はいない。
「俺ゃあな。ただ伝達事項を届けにきただけなんだよ。とっても大事な伝達事項をな」
「で、伝達事項……?」
びくっとする俺の父に、レオンはにんまりと嬉しそうに笑って言った。
「ああ。このヴァレスタイン家のみ、これから税金2倍が決定ぃぃぃい! いぇぇぇぇい、よろしくぅ! あひゃひゃは!!」
「……! そ、そんなレオン様! 困ります! うちはいま、大銀貨2枚で暮らしている状況……。そのなかで税金まで上がってしまったら……」
俺の母親が、この世の終わりとでも言うかのように表情を曇らせた。
「あァん? 知らねえよそんなもん。全部、そこにいるアルバートが悪ィんだ」
「ア、アルバートが?」
「あったりめえよ。こいつはな、俺の呼び出しを無視しやがったんだ。俺様がせっかく《魔法の全使用可》っていう超イカすスキルを授かったのによ……。それを自慢する大事な招集を、無視しやがったんだよ」
……本当に、くだらない。
嘘のようなくだらない話なんだが、これがレオン・レクドリアだ。
自分のことがとにかく第一優先で、気に入らないことがあったら自分の地位を利用する。いままで、こいつに何人もの人々が苦しめられてきたか……!
ちなみにだが、俺は《招集》のことをなにも知らない。
今日はデスワームと戦ったりブラックタイガーと戦ったり色々あったので、単に情報が届いてこなかっただけだ。
「お言葉ですが、レオン様」
俺は一歩前に踏み出すと、まっすぐにレオンに目線を向けた。
「さすがにひどすぎではありませんか? 俺はただ招集命令に気づけなかっただけ。大物貴族であるはずのレオン様が、これしきのことでお怒りになるとは……さぞ、対外的にも良くないイメージが与えられると思いますが」
「あぁん? なんだテメェ、俺様に生意気な――うっ……!」
だが、その言葉は最後まで続かなかった。
俺が威圧感とともにレオンを睨みつけたため、レオンが思いっきりたじろいだからだ。
「き、きゃっ」
まるで女の子のような悲鳴をあげ、尻餅をつくレオン。
「……え?」
「いまの変な悲鳴は……レオン様か?」
レオンの醜態に、通りすがりの人々が口々に話し始めるのが聞こえた。
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