悪徳領主
さて。
晴れて勇者となった俺は、無事に大金を手にすることができた。
実際に活動するのは後日になるが、《試験》にてバルフレイを倒すことができた俺は、勇者のなかでも有望株らしい。
「遠慮するでない! 持っていけ! わっはっはっは!!」
と言われて、金貨を20枚ほど国王からもらった。
詳しいことは不明だが、俺が勇者になったことがよほど嬉しいみたいだな。断りを入れるまもなく、押し付けられる形で大金をもらってしまった。
ちなみに金貨というのは、一枚あるだけで一か月は暮らせるほどの大金。
銅貨10枚分が、銀貨一枚。
銀貨10枚分が、大銀貨一枚。
そして大銀貨10枚分が、金貨一枚である。
だから金貨はとても貴重であり、とりわけ悪徳領主と名高いレクドリア家の領地では、よほど身分の高い者でない限り決して持てない代物だ。
俺の父親も、月に大銀貨を3枚稼ぐだけで精一杯だった気がする。
――というわけで。
俺はさっそく、故郷たるフェミア街に戻ることにした。
《勇者》となった以上、これからは王都に住むことになるが――さすがに勝手に出ていくわけにはいかないからな。
最後に一声だけでも親に挨拶をして……そして、王都に住むこととしたい。
「…………」
だから俺は今、住み慣れた実家の前で佇んでいた。
いつも普通に寝泊まりしていたこの場所が、妙に懐かしく感じる。
ちなみにだが、ルリスやエリはここにはいない。王都とフェミア街の往復はけっこう大変だし、二人とも気を利かせてくれたようだからな。
待ってるから行っておいでよ、と背中を押してくれたのである。
「た、ただいまー……」
「ア、アルバート!?」
ドアを開けた瞬間、まず母親が飛び込んできた。
「あ、あんたどこ行ってたの!? もう夜遅いわよ!」
「は……ははは……。ごめん」
デスワームにブラックタイガー、そしてバルフレイとの戦闘。
今日は本当にあったからな。
まさしく怒涛の一日といっても差支えないだろう。
「ささ、もう入りなさいな。おなか減ったでしょう?」
「あ、ああ……。それが……」
【全自動レベルアップ】という謎スキルを授かってしまったにもかかわらず、母親は俺を温かく迎え入れてくれていた。
そのことに涙腺が緩むのを感じながらも、住み慣れた実家へと足を踏み入れる。
「母さん……実は、話があってさ」
「なに? どうしたの?」
「これ……もらってほし――」
そこまで言いかけた、その瞬間。
「アルバァァァァァァァァァァァァァァァァァアト!!!」
ふいに大絶叫が響きわたり、俺は身を竦ませた。
何度も罵声を浴びせてきたこの声。
まさか――!!
「へっへっへ! アルバート・ヴァレスタイン見っけ♪ 税金二倍のお知らせに来ましたぁ♪」
悪徳領主と名高いレクドリア家の跡継ぎ――
レオン・レクドリアが、醜い身体を揺らしながら、こちらに歩み寄ってくるのだった。
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