バルフレイだけの税金だけは守ってみせる
「……あ、あれ?」
俺は思わず目を見開いた。
壁面に穿たれた、人型の穴。
状況を考えれば、バルフレイが壁を突き抜けて吹き飛んでいった……と考えるのが妥当だが、明らかにおかしい。
初めて使った魔法だぞ?
それで《勇者》たる勇者が吹き飛んでいってしまうのは、明らかにおかしいではないか。
「お……おぬし。いま、な、なにをした……?」
一番最初に声をかけてきたのは国王だった。
さっきまで観客席に座っていたはずだが、もう《試験》は終わったと見なしてるようだな。壁面に穿たれた大穴を見て、びくびくしながら問いかけてきている。
「い、いえ……。ただ魔法を使っただけですが……」
「ただ魔法を使っただけでこうなるか!!」
盛大な突っ込み、いただきました。
「王城にはな、有能な魔術師が結集して作り上げた《防御魔法》が展開してあるんじゃ! それをやすやすと突破するなぞ、普通はできないはずじゃぞ! 普通はな!!」
「そ……そうなのですか……?」
全然知らなかった。
有能な魔術師が結集して作り上げた……そこまでの代物には感じなかったけどな。
まるで紙みたいに普通に突き抜けていったし。
だからきっと、国王が嘘をついているのだと……
って、いや。待てよ?
俺はさっき、こんな表示を見たはずだ。「魔法攻撃力:43093」と。
あれはまさか、こういうことだったのだろうか。【全自動レベルアップ】によってステータスがどんどん上がっていき、結果的に魔法の攻撃力が上がっていったと……
「ぜぇ……ぜぇ……や、やっと、着いたぞ……!」
そんな思索に耽っているうちに、なんとバルフレイが帰ってきたようだ。木の棒を杖代わりにして、命からがらといった様子で立ち尽くしている。
っていうか、すごいな。
けっこうな距離を吹き飛んでいったはずだが、もう帰ってくるとは。
このへんの身体能力はさすが《勇者》といったところか。
「アルバート・ヴァレスタイン……。そなたは文句なしの《勇者》だ。どうか私たちとともに……魔王を倒しておくれ……」
バタッ、と。
まるで遺言を残すような形で倒れてしまったが――心配はいらない。
ルリスいわく、気絶していただけのようで……エリクサーを飲んでもらったら、すぐに回復した。
「ふう……。それにしても、驚いたのう……」
バルフレイが無事に回復したのを見届けつつ、国王が俺に目線を向けてきた。
「まさか、この世界にお主のような若者がいようとは……。先ほどは無礼をすまなかったの。許しておくれな」
そう言って、深々と頭を下げる国王。
「え……。ちょ、国王様」
おいおい、国王に頭を下げられるとか、いったいどういう展開だよ。
恐れ多すぎて、逆に現実味がない。
「お、俺のことは大丈夫ですので……! どうかバルフレイさんの税金だけは、上げないでいただけませんか?」
「は? 税金? なんのことじゃ?」
目をぱちくりさせる国王。
「い、いえ……。国王様の命令は絶対ですので……」
「??? な、なにを言っておるのかようわからんのじゃが……」
「ふふ」
俺たちのやり取りを見て、ルリスがなぜか笑い声をあげる。
「お父様。アルバートの出自も含めて、お話したいことがございます。どうか謁見の間にてお話ささせていただけませんか?」
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