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え、手加減するよね普通

「そらそらそらそらぁ!」


 ひっきりなしに突き出されてくる、バルフレイの剣撃。


 その一撃一撃はたしかに……速くて重い。

 かつて戦ったデスワームやブラックタイガーなどでは、まさに相手にならないだろう。


 だが。


 ――ネーニャ姉さんが7秒で倒れるほど……かな?


 手加減をしてくれているのだとは思うが、《剣聖》たるネーニャを瞬時に倒すほどとは思わない。


 なんといったって、この俺でもすべて避けることができるからな。


 すでに7秒どころか……一分以上経過しているのではなかろうか。


 うん。

 さすがに手加減のしすぎだな。


 前述の通り、この試験は《勝つことが目的》ではない。現役の勇者――この場合はバルフレイ――に認められさえすればいいのだ。


 そして現在、とうに10秒を過ぎている。


 合格をもらえてもいいはず……だよな?


「ぬおおおおおおおおおおおおおおお!」


 それでもバルフレイが剣を放ってくるのは、戦闘に集中するあまり忘れているのだと思われる。かつてのネーニャ姉さんも、「戦うときは目の前の敵に集中しなさい!!」って言ってたしな。


 それをしっかり体現しているあたり、さすがは現役勇者といったところか。


 だが、これは実戦ではなく試合。


 俺の「集中力のなさ」は今後の課題にするとして、いまはひとまずバルフレイを止めたほうがいいかもしれないな。


「す、すみません。バルフレイさん」


 だから俺はバルフレイの剣を指二本・・・で受け止め、バルフレイに伝えてみることにした。


「ごめんなさい、もう10秒経ってるんですが……」


「な、なにっ……!?」


 バルフレイがぎょっと目を見開いた。


 ――やっぱり、よほど集中してたみたいだな。


 俺の発言にめちゃくちゃ驚いているようだった。


「そ、そなた……私の見間違いかね。剣を……指、二本で……」


「へ? は、はい……。手加減してくださっているおかげで、なんとか受け止めることができましたが……」


「手加減、しているように見えたのか……? 私が」


「? え、ええ……」


 なんだ。

 いったいなにを当たり前のことを言っているのだろう。


 国王にあれだけ《手加減せよ》と言われていたんだから、まさか本気でくるとは最初から思っていない。


 国王ともなれば、当たり前だがレオン・レクドリアよりも地位が高いからな。


 その国王に歯向かってしまえば、税金二倍、十倍……いやいや、もっと恐ろしいことになるかもわからない。


 そんなことになれば、いくら勇者といえど、俺みたいに貧乏になってしまうかもしれないからな。そんな世にも恐ろしいことをするわけがない。


「…………な、ななななな、なんたること!」


 その国王は、椅子からガタっと立ち上がり、顔面蒼白で身体を震わせていた。


「あのバルフレイが赤子のように……!? どういうことじゃ……!?」


「ふふん。だから言ったでしょう、お父様」

 ルリスが誇らしげに大きな胸を張った。


「デスワームも、ブラックタイガーも……実質、彼一人だけで倒したようなものよ。この試合で試されているのは――むしろバルフレイのほうかもしれないわね」


「な、なななななななな……!」


 なんだろう。


 二人がなにか話し合っているが、遠すぎて聞こえなかった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんでステ上がっててちょっと離れてるだけの声が聞き取れないんだよ。
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