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外れスキル覚醒

「アルバート!!」

「帰ってきたのね!」


 家に着いた瞬間、両親が勢いよく駆け込んできた。期待に目を輝かせているように見えるのは、きっと気のせいではあるまい。


「父上、母上……」


 その様子を見て、俺はいたたまれない気持ちになる。


 ……父も母も、だいぶ老けた。不景気になる前は二人とも若々しかったのが、ここ最近、急激にしわが増えてきた気もする。


 無理もない。

 特に父に関しては、慣れない職場を1からスタートしているわけだからな。それでも俺たちを養うために、疲れた身体に鞭打って頑張り続けているわけだ。


「で……どうだった!? スキルの内容は!?」


 だから――そう父に訊ねられたときも、すぐには答えられなかった。


「…………」

 数秒だけ黙り込み、大きく息を吸い込むと。

「全自動レベルアップ――です」


 意を決して、それだけを呟いた。


「は……? レ、レベル……?」


「はい……。俺の授かったスキルは、【全自動レベルアップ】というやつでした……」


「な……」


 父の表情が絶望に染め上げられていく。


 一瞬で悟ったんだろうな。俺の授かったスキルが、いわゆる「外れスキル」だっていうことを。


「そうか……。レベルアップ……。うん、よかったじゃないか! 珍しいスキルだ!」


「ち、父上……」


 取り繕われた笑顔に、俺はまたしても胸が締め付けられる。


 たしかに珍しいスキルには違いないが、こんな使い道のないスキル、授かっても仕方ない。


「うんうん、そうよ!」

 そう明るい声を発したのは母上だ。

「さすがは私たちの息子ね! きっと普通の子じゃないとは思ってたけど!」


「は、母上……」


「さ、今日はお祝いね! とびっきりのご馳走作ってるから、待っててね!」


「…………」


 俺は――気づいてしまった。

 明るい様子で立ち上がる母の身体が……少しだけ、震えていたことに。


「っ…………!」

 その光景に、俺はなんとも言えなくなって。

「すみません……。ちょっと、外の風に当たってきます」


 そう言って、家を飛び出すのだった。


――――


 【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが上がりました。


 レベル:79


 攻撃力:926

 防御力:901

 魔法攻撃力:1310

 魔法防御力:1061

 速さ:2120


  神域覚醒まで:あと921


――――


    ★



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ!」


 家を出て数分後、突如にして女性の絶叫が響き渡ってきた。


「…………!?!?」


 俺は思わず肩を竦ませる。


 いったいなんだ。どういうことだ。

 ここは街のど真ん中だぞ? そうそう事件なんて起こりえるわけがないはずだが……


 どちらにせよ、これは尋常でない事態だ。戦いの心得などまったくない俺ではあるが、さすがに見過ごすわけにはいかない。


 そう判断し、俺は声のした方向へと走り出す。


「あ、あれは……!?」


 そして数分後、俺は信じがたい光景を見た。


 あれは――魔物か。


「キシャアアアアアアアアッ!!」


 巨大ミミズのような化け物が、奇声をあげながら暴れまわっている。たかがミミズではあれど、怪力だけは本物らしい。胴体を振り回すだけでも、周囲の建造物が簡単に破壊されている。


 周囲に倒れている男たちは、きっとその餌食になったのだろう。

 白目を剝いたままうつ伏せになり、身じろぎもしない。


「きゃあああああああああああ!!」

「化け物だぁぁぁぁぁぁぁぁあああ――!」

「逃げろぉぉぉぉぉおおおおおお……!」


 あんな魔物を見たら、当然、恐ろしくもなる。

 大勢の人々がパニックに陥り、周囲はまさに大混乱に陥っていた。


 だが……


「ああっ…………!!」


 逃げ惑う人々のなかで、ひとりの少女が転んでしまったようだ。

 すぐさま起き上がろうとするが、巨大ミミズはもう目と鼻の先。いまから立ち上がって逃げようにも……もう、間に合わない。


「ゲヒャヒャヒャヒャ……!」


 魔物もそれを悟ったのだろう。大きな口腔を開け、少女を丸呑みしようとにじり寄る。


「いや、いやっ……!!」

 少女は目に涙を溜め、尻餅をつきながらも必死に後退する。

「や、やだ……! 死にたくないっ……!」


 その声を聞いた途端。


 俺のなかでなにかが弾けた。


「うおおおおおおおおおおおおっ!」


 人々の流れに逆らって、俺は巨大ミミズへと突進していく。


――――


【全自動レベルアップ】によってアルバートのレベルが上がりました。


 レベル:80


 攻撃力:962

 防御力:953

 魔法攻撃力:1408

 魔法防御力:1190

 速さ:2235


  神域覚醒まで:あと920


――――


「ん……?」


 なんだ。

 視界になにかが映った気がするが、いまはそれどころではない。


 なんとか巨大ミミズを蹴り飛ばして、奴の意識を少女から逸らさなくては。相手はデカブツではあるが、しょせんミミズ。戦闘の訓練のない俺であっても、なんとか気を逸らすくらいはできるはすだ。

 たぶん。


「ぬおおおおおおおおっ!」


 俺は絶叫をあげ、飛び膝蹴ひざげりを巨大ミミズの胴体に見舞った。


「ギュアアアアアアアアアアアッツ!」


 ……やはり、しょせんはミミズか。


 俺の蹴りを喰らっただけで、巨大ミミズが絶叫とともに吹き飛んでいった。


「え……?」

「嘘……だろ……?」


 俺の登場に、尻餅をついていた少女だけでなく、周囲の人々でさえも驚きの声をあげた。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] この世界レベルの概念あるのか? 有能スキル持ってないでも生活できるのか? 色々なところ分からないです。
[気になる点] 外れスキルじゃない定期 [一言] 未知なスキルであって、ハズレ描写も全く無くいきなり覚醒って…
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