世界の誰も知らないこと
「さて、と……」
俺は大きく息を吐き、改めて、歩み寄ってくるブラックタイガーと対峙する。
――こうして見ると、やっぱり変だな。
大きすぎるのも違和感があるし、なにより奴を取り巻く《闇のオーラ》が、明らかに普通じゃないというか……
もちろん、俺に魔物の知識はない。
とはいえ、さっきのデスワームも、似たような《闇のオーラ》に包まれていたしな。
なんか違和感があるんだ。
「お。そうだ……」
そこで初めて、俺は自分のスキルを思い出す。
――謎の外れスキル、【全自動レベルアップ】。
これの影響かはわからないが、たしか《鑑定》と《闇属性魔法》というスキルが追加されている……かもしれないんだよな。
さすがに上手くいくとは思い難いが、物は試し。
この場でちょっとやってみるか。
「えーっと。スキル発動。《鑑定》」
そう小声で呟いた……その瞬間。
――
《鑑定》スキル発動を検知しました。
ブラックタイガーG の鑑定でよろしいでしょうか。
――
「お、おお……」
視界に浮かんできた文字列に、俺は思わず嘆息する。
マ、マジか。
本当にスキルを発動できるなんて思いもよらなかったぞ。
「ブラックタイガー……《G》ってなんだ……?」
若干の違和感を抱きつつも、俺は心のなかで「はい」と唱える。スキルを使用するには、実際に声で応じてもいいし、胸のうちで念じるだけでもよかったはずだ。
――
ブラックタイガーG 鑑定結果
レベル:145
攻撃力:19063
防御力:19054
魔法攻撃力:16732
魔法防御力:12093
速さ:11093
★通常のブラックタイガーが、《G》の影響で力を引き出された姿。
通常個体より獰猛かつ好戦的で、非常に荒々しい。
見かけた際には即座の判断が重要。
弱点部位は尻尾。
ここは防御力が半減する部位であり、攻撃するには最も有効な部位である。
――
「すごい……本当に鑑定できた……」
浮かんできた文字に、思わず感動を覚えてしまう俺。
《鑑定》といえば、それだけで職業の成り立つ有用スキルだからな。もちろん戦闘には向かないが、人の適性を見抜くことができたり、道具の詳細を確かめることができたり――それはもう、超便利なスキルなのである。
ひとつ気がかりな点があるとすれば、レベルとか攻撃力とか、訳のわからない項目があるということか。
こんなもの聞いたことがないし、通常の鑑定士でも見たことがないはず。
だから本当の《鑑定》になっているかは微妙だが……ん?
待てよ。
レベルって……なんか聞いたことがあるな。
――【全自動レベルアップ】。
そのスキルを得たことによって、俺の《レベル》なるものがどんどん上がっていっているのは理解している。それこそ毎分といってもいいくらいにレベルが上がってるんだよな。
――だが。
ブラックタイガーのレベルは、俺より半分近く低かった。
俺が300くらいなのに対し、ブラックタイガーのそれは145。
そして攻撃力や防御力という、謎の数値……
――待てよ。
俺はいま……世界の誰も知らないことに気づこうとしているんじゃないのか?
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