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03.







「デビュタントの舞踏会に、どうやらフィルも招待されたらしい」



 兄様が唐突に部屋にやってきて、教えてくれた。

 その表情はは安堵を含みながらも私を心配しているようにも見える。



「それは、本当ですか?」

「あぁ、招待者リストの中に名前があった。舞踏会に招待されたということは外に出れるような状態ではあるんだろう」

「ど、どうしましょう兄様!お手紙を書いた方がいいですか?」

「……落ち着いてミレイユ。手紙は書かなくていい、舞踏会で顔を合わせても挨拶をし軽く会話を交わす程度でいいんだ」

「でも兄様っ」



 兄様はそっと私の手を取った。私の早る気持ちを察してくれたのだろう。


 フィルには会いたい、会って話をしたい。元気にしてたか、身体に異常はないか……婚約者が居なくなって寂しくないか……


 忘れたかったはずなのに、あの日からフィルへの想いは増していくばかりだ。何度も手紙を書こうとしたし、会いに行こうともした。

 でも家族からは「フィル自身のことは心配だけど、彼はミレイユの名に傷を付けたんだ。公の場以外で合わせることは出来ない」と言われてしまった。当たり前だけど、もどかしい……



「綺麗に着飾って、ミレイユと婚約破棄したことを後悔させてやれ」



 乗せていた手を兄様はぎゅうっと握った。



「ミレイユの気持ちは痛い程わかるさ、俺も婚約者を愛しているからね。でもフィルはお前を裏切った、それを忘れちゃいけない」



 悲しそうな顔をされてそれ以上何も言えなくなってしまう。あぁ……私は期待してたんだ、フィルともう一度恋に落ちることを。


 改めて突きつけられた現実にサーッと顔が青ざめていく


 デビュタントボールに参加するということは、少なからずフィルも縁談相手を探す為に現れるのだろう。

 でも既に婚約破棄をした私は、対象に入っていない。




「可愛いミレイユ、大丈夫だ。当日は兄様も一緒にいるのだから」


















***















 しっとりと重みのある金髪をハーフアップにし、キラキラと輝いたように見える純白のドレスとオペラグローブを身につけ、上品で洗礼されたメイクをし、胸元と耳元には瞳と同色のミントグリーンベリルの宝石を使ったアクセサリーを付け、ミレイユは鏡の前に立っていた。


「ありがとう、とても素敵に仕上がってるわ!」


 メイド達総出でドレスアップしってもらい、私はつま先から頭の天辺まで隅々と自分を見つめた。

 いつもと違う装いに、少しだけ気分が上がる。



 ーーー今日は舞踏会当日だ。



 あれから、当然幼馴染からの便りは何も無かったし私から何か行動することも無かった。父様は何か言いたそうにしていたが、私に教えてはくれなそうだった。


 ”もう、終わった事”


 何度もそう自分に言い聞かせてそれ以上追求するのはやめた、フィルが元気で暮らしているならそれで十分だ。振られた身なのだから期待はしたくない。


 でも、会えるからには少しでも綺麗になったと思われたい……そう思って朝から準備に勤しんだのだ

 そんな着飾った姿を、伯爵家の家紋の入った馬車の前で両親に披露した


 父様は目をうるませながら抱きしめてきた。



「ミレイユ、とても綺麗だ。きっと今日の舞踏会は我が娘が主役に違いない」

「嬉しいです父様、デビュタントを楽しんで参ります」

「ああ、今日は遅くなってもいい。友達と十分に楽しんできなさい」

「はい、ありがとうございます!」


「ハロルド、ミレイユを頼んだぞ。それとリーシャにもよろしくな、また遊びにおいでと伝えておきなさい」

「勿論です父様、ミレイユに良い出会いがあるようにサポートしますよ。リーシャにも伝えておきます、きっと喜びます」



 リーシャとは兄様の婚約者で令嬢としは少し膨よかだけど優しくて穏やかな人、笑った顔がとても可愛くて大好きなお姉様のような存在でもある。今日の舞踏会にも勿論参加するようだ。


 気遣ってくれる両親や兄の為にも今日は楽しまなきゃ、そう意気込みながら私は兄様に手を引かれて馬車に乗り込んだ。








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