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2009.07/30 0106

今日、この物語が終わる日が決まった。



始まりは、朝のこと。

通常の時間に出勤した自分は、いつも通り喫煙所に向かう。

煙草に火を点け、彼女に会って何をするわけでも、何を話すわけでもなく、昨日の自分の様子から一度だけでも彼女を見ておきたかった。


そして、離れる約束をしてから、初めて会った彼女と自分は、互いに笑顔で挨拶をした。

それが、彼女と自分の有り方なのを互いが分かっていたのかも知れない。

何気ない会話の中で、スカイプの話をした。

特にスカイプのログインについては理由は無く、単純に自動起動を切る方法を知らなかっただけだったそうだ。


そのまま始業時間を迎える時間となり、彼女とエレベーターに乗る。

その時、彼女は言った。

「今日、お昼一緒に食べようか」

自分は正直、戸惑った。

約束はなんだったのだろうか...

しかし、そんな今日は昼食が支給される日であったため、それを確認するとその話は終わった。


この時、自分の中では何か話があるのかと思った。

その内容は「彼とこのまま付き合い続けるから、待たないでほしい」というものであると思った。

しかし、その逆も考えた。

何はともあれ、話があるなら聞かなくてはいけないと思い。

何も用事が無いなら、夜ならどうなのか確認したが、その返事は得られなかった。


その後、彼女からメールが届き、先の事を自分に謝る内容だった。

「話があるわけではなく、単純に心配で思わず言ってしまった。」との事だった。


その話はさておき、互いの業務を開始する。

互いに業務の関係上、時折話をする。

まるで、今までと変わらない様な二人。

しかし、自分の中では「彼女と話をしてはいけない」という気持ちがあった。


そんな中で、終業時間までに二度程、二人きりで話す機会があった。


まるで、今までと変わらない様に話す彼女と、葛藤が続く自分。

自分のその言葉には全て棘があった。

未練たらしく、嫌味ったらしい、そんな言葉達を自分は発していた。


自分は今まで、彼女に対しては何も隠さず素直で居過ぎてしまった。

その為、彼女と話をする時に何か後ろめたさの様なものを持った事がなく、この状況下で、どう接すべきか分からなかった。

それが、言葉となって出て行ってしまっていた。


二度目の会話の時、夜をどうするのか確認する必要があった。

彼女の答えは「何か話したい事があるのか?」というものだった。

しかし、そんなものこちらがあるわけなかった。

ただ、自分は彼女と一緒にいる事ができるなら、理由は何でも良かった。

それでも、自分は嘘を付く事ができなかった。


話したい事など、今までも今日も無い。


それが自分の答えだった。

今までも話したい事が会って、一緒に居続けたわけではない。

そんな事、互いに考えた事もなかったと思った。

しかし、話す事が無いなら共に過ごせないと彼女が思うなら、彼女はやはり離れる気でいるのだと思った。


終業時間を迎え、自分は彼女よりも先に業務を終えて帰ろうと思った。

しかし、何かが自分の中でつかえたままだった。

自分の中で、彼女にあんな言葉の数々を放った事が、申し訳なくて仕方なく謝りたかった。

そして、彼女が、もしも昼食を共にしたなら、どうする気であったのかを聞きたかった。

それを思ったとき、「話す事が見つかった」と思った。

だからこそ、彼女を再度誘った。


彼女の業務が終わり、彼女の家に向かって一緒に帰る事にした。

今の彼女は、怪我をしていて、自分はそれが何よりも心配だった。

「話はしたい、しかし、彼女は休ませたい」そのために、ここ最近は寄り道するわけでもなく、彼女を満員電車から守りつつ、家まで送る事が殆どだった。

それが今日も継続された。

その途中、実は、彼女も「話したい事があった」と言った。


電車に乗ると、座る事はできずに二人で立っていた。

吊革を握る自分の左手を見て、彼女は自分が指輪を着けている事を初めて気付いたそうだ。

慣れた彼女の家への帰路の中で、互いに何を話したいのか聞き合ったが、どちらも電車の中で話したいとは思わず、何気ない話を詰まりながら話していった。


彼女の家の最寄り駅に到着すると、いつも行く珈琲屋に行って話をする事にした。


そこで、互いに話したい事を話した。

彼女は自分に「仕事を頑張ってほしい」という事を伝えたかったそうだ。

彼女は昔からの持病のせいで、本当にやりたい職につく事を諦めるしか無かった。

そのため、自分には今の仕事を頑張ってほしいと思ったのだそうだ。


自分は自分のしたい話を伝えた。


しばらく、二人の事について再度色々な話をした。

すると、彼女の言葉が止まり、涙を溜めだした。

日曜日に離れる約束をしてから、今日までの三回の夜を彼女は毎回泣いて過ごした事を教えてくれた。

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