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2009-07-06 過去のブログより

今日は一人、気に入っていた人(H氏)が会社を去る日だった。

仕事上での関わりは殆どなくて、一回だけH氏の部署内の席で隣同士で少し仕事をしたくらいだった。

一部の人には好意を抱かれ、一部の人は気に入らない様子で、いつも親友らしき人としか行動していない様子だった。


H氏が視界に入ると、自分よりも先に笑顔でお辞儀をする可愛らしい人で、自分が入社してから二人目に興味を持った人だった。


H氏の様子を見ていると、どうにも行動派にも見えないし、積極的に何かする人にも思えなかった。

只、少し自分が元気がないだけなのに、「元気がなさそうですね。大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。

そんなに周囲の人が気づくほどではない様に振舞っていても、H氏には分かるんだと思った。


H氏は今日が最後の出社だそうで、退社前に親しい人などにお菓子を配っているのを見た。

そういった振る舞いには感心する。

自分は今でも気にはしているものの、今の部署に異動する前にいた部署の人には、「お世話になりました」といったメールすらしなかった。

しなかった理由は、うぬぼれているみたいで嫌だったからというのが一番なのだけど、礼儀としてはするべきだと思うが、自分はしなかった。

当然、H氏の様にお菓子を振舞う様な事もしなかった。


自分のいる部署は、殆ど個室状態で他の一部の部署と違って、自分達の後ろを通ると他の部署に行けるわけでもなんでもない。

その一番奥の席に自分はいる。

そんな中で、H氏は自分にお菓子を持ってきてくれた。

うちの部署には人が5人いて、自分の席に来るまでには上司や、別の女性社員もいる。

それなのに、たった2つのお菓子を持って、自分の所まで来てその二つをくれた。

お菓子を配っているときは、大きな箱を持っていたのに、それだけを残しておいてくれたのだろうか。


そして、恥ずかしかったのか分からないが、耳元で「ありがとうございました」と囁いていった。

正直なところ、全く心当たりがなかった。

以前に一度一緒に仕事をしたと書いたが、それはこちらの部署で必要なデータを貰いに行っただけで、PCの電源を落として帰る間際のH氏を捕まえて、PCの電源を入れてもらって、データを探してもらって、更に加工までしてもらって、データをもらったのだ。

どう考えても、こちらがお礼を言っても、言われる筋合いは全くない。

それこそ、自分はH氏に「元気がないね」の一言も言った事はない。


この状況下において、多少の妄想をするのはおかしいのだろうか。

少なくとも、自分はそのときは自分に好意があるのではないか?という考えに至った。

今の彼女との関係や、自分の精神状態を考えても、行為を持ってくれる人といる事は、どう考えてもプラスでしかないと思った。

それに、一番好きな人は確かに彼女ではあるが、それでも二番目に興味を持てる人なのだから、そこで行動しないのもおかしな話であると思った。


でも、結局は何もしなかった。

できなかったというのが正しいかも知れない。


自分は決して、良い人間ではないし、色々な部分が歪んでるのも十分に承知している。

だけど、好意を利用する様な事は絶対にしたくない。

もしも、H氏が自分に好意があったとして、メールアドレスだけでも聞いたなら、何か始まったのかも知れない。

目に見える進展がなくとも、話を聞いてくれたりしたのかも知れない。

でも、その結果を自分は望まずに、H氏が望んだら自分は、彼女が意図せずになってしまった今の状態を予測しながらしてしまう事になる。

自分はそう思った。


そんな事を考えて、それでもお礼と「お疲れ様」という意味で飲み物でも奢ろうかと思ったのだが、思った時には、まだいたH氏だったが、席を離れられる状態になったときにはいなかった。


自分は無駄に罪悪感が強い。

もしも、自販機の前で「さっきのありがとうって、どういう意味?」と聞いたなら、その答えによっては彼女に対する自分の気持ちに罪悪感が芽生えたかも知れない。

そう考えると、何もできなくて良かったのだろうと思う。


こんな事があった日は、本来の自分はそれが気になって仕方ない。

一晩中「ありがとうの真意はなんだ?」と疑問に思い、そして好意があったのか考えてしまう。

H氏はもう会社に来ないが、H氏と連絡を取る手段はいくらでもあると思う。

最低でも、確実に連絡をとれる手段まで考えは至る。

だからこそ、その真意を確かめるのは容易な事で、その事ばかりを考えるのも無駄な事ではない。

無駄な事は基本はしない主義なので、無駄ならきっぱり諦めるのだが、今回は無駄でもないのに思考はすぐに彼女に戻った。


戻った切っ掛けは、日比谷線の茅場町駅。

一昨日かその前くらいに気づいたのだが、今、茅場町駅には明日の七夕の短冊をかけるための竹(笹の木というのが良いのか?竹と違うのか?)が設置されている。

昨日も、「今は彼女との事がうまくいくなら神頼みでも何でもしたいところだ」と思って見ていたのだ。

今日も帰りには、それがあった。

日に日に短冊が増えるのだが、その短冊の出所は不明で、何かの紙に書いた短冊を、それぞれが持参しているのだと思っていた。

自分は基本的に会社を定時に退社できる事はない。

仕事の内容柄、そういうものなのだが、今日は明日の出社が早いために定時で退社した。

すると、その竹の周りには長机が設置されており、短冊も用意されていた。


机には若い女性が二人で騒ぎながら短冊を結び、少し酔っ払った様な若いサラリーマンらしき男性がお互いを冷やかしながら書いていた。

そんな中、自分はサングラスにヘッドフォン姿で、しかも一人でそんな事をするには、かなりの勇気が必要だと思った。

恥ずかしいのは遠慮したいと思い、素通りしようと思ったが、しっかり机の前に来てしまった自分に複雑な気持ちになった。


とりあえず、そうする事が当然の様な振る舞いで、短冊とペンを手に取ると、さっさと書こうと思ったら、彼女の名前を間違えた。正直、相当動揺した。

短冊には、何の気のきいた表現もなく「彼女と一緒にいられます様に」と書いて、非常に慣れた様な素振りで結びつけて逃げ帰ってきた。


短冊の重みに負けそうな竹を見たときには、H氏のことは全く考えてなかった事は間違いない。

まして、その短冊に書く願い事は、0.1秒でも迷わなかった。


昨日の自分は、彼女の事を考えると辛くて仕方なかったが、比べ物にならない程に落ち着いていて「冷めている」と言っても過言ではない程だと思う。

それでも、やはり自分は彼女と一緒にいたいのだと思う。


彼女に対する気持ちは、正直なところ今も前もずっと複雑で、そこまで自分が彼女に執着する理由は今でも明確ではない。

彼女も「意地になってるだけなのでは?」や「ただ冷静になって考えれば冷める」様な事を言う。

彼女は自分といる時は、彼の話や、「本当は彼と自分が彼女をからかっているだけかも知れない」などと思うなどの話をする事が多い。

そして、今回は好意を持っていたH氏の事まであって、自分の精神には比較的気持ちが揺らいだり、彼女への想いが折れそうな事はたくさんある。

それでも、自分は彼女と一緒にいたいと思ったり考えているわけでなく、望んでいる。

何か自分の分からないところで、何かを感じているんだろうと思う。


こんな不明確な恋心は非常に不快だし、複雑な気持ちになる。

だけど、これがきっと本当に好きな証拠なのだと思う。

今までに経験がないからこそ、彼女も言っていたが「初恋」なんだろうと思う。

だが、同様に「初恋は実らないもんだ」とも、彼女は言っていた。

どちらにしても、今は彼女への気持ちは変わらない事だけが確かな事だ。

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