第六十四話 冬の精霊王
城に戻ると、綺麗な桃色の雪が降っていて。
淡い桜が城を包むような可憐な幻想を抱かせた。
シラユキの雪ではないらしく、慌ててゼロと一緒に玉座に行けばそこにはアルギスが精霊と交渉している姿が。
私達に気づいたアルギスが手招きし、ゼロと私を呼び寄せる。
「どうしたの」
「おかえり、朝昼夜の精霊が祝福してくれたんだよ。そしたらさ、それに釣られたように四季の精霊、冬精霊が現れたみたいなんだ。助かったよ、間に合ってくれて」
「冬精霊……四季の精霊はそんなに気紛れなの?」
「人間でさえ、現れる瞬間は予測つかないからね。今回現れたなら、他の四季に話を通してくれる可能性がある。君たちにはチャンスだ」
アルギスは、はいと私へクッキーを持たせると自分は下がる。
玉座にどかっと座ったゼロの前に三つの精霊が現れる。
一体はミディの頭上にいて清らかな白い衣装を身につけている可憐な女精霊。
一体はラクスターの頭上にいて元気そうな笑顔を見せる子供の精霊。
最後の一体は、ゼリアの頭上にいて妖艶な面持ちを見せる麗しい魔女のような精霊。
三体を宿した三人はゼロへ傅くと、三体の精霊がゼロに近づく。
暗かった室内に、一気に灯りが宿り、ゼロは目を眇めてから、異空間から杯を現し中へワインを注いだ。
相手の杯にはミルクを注ぎ、ゼロと精霊は杯を酌み交わす。
その後、私が手招かれたので、クッキーをゼロと精霊達に手渡すとそれで契約が完了したのか、室内に一気に暖かさが溢れる。
精霊達は消え、そこには毛皮に包まれた一体の男性らしき精霊がいた。
『話はアルギスという人間を通して見ていた、全てな。魔王よ、元人間を娶りたいがために、そんなに人間と仲良くなりたいのか』
「それが我が花嫁の望みだ、全力で叶える」
『宜しい。条件を出そう。この城で、一晩寒さを与え続けよう。とてつもない寒さだ。それでも尚、火を使わずに過ごせたらその時我らはお前と共にあろう。また明日現れる、それでは良き縁を。お前の明日が輝かんことを』
ふっと精霊が消えると同時に、一気に寒さが表れそれまで灯りであった火がかき消える。
魔物達は凍え、私もゼロも寒さに震えた。
「精霊か。変わらず気紛れな者共だ」
ゼロは私をマントの中に招き、抱き寄せる。
凍えそうな寒さも、ゼロに包まれれば温かいがする。
震え上がる一同に、ゼロは静かに命じる。
「皆、魔力を駆使しろ。魔力を熱の代わりに使え。そうすれば少しはマシだろう。お前たちは余が祝福を与え、生み出した物なのだから魔力の根底にある炎の属性が温かみをくれるだろう」
「シラユキさんもそうなの?」
「嗚呼……シラユキは少し在り方が違うな。シラユキは元から存在していて、氷山から余が連れてきて契約した身なのだよ」
「故郷に錦を飾れると思いまして! 何より、私のいたところにあまり面白い物がありませんでしたから、すぐにご一緒させて頂きましたわ」
シラユキさんは寒い中で降って積もった雪を魔法で駆使し、ひとまとめにし丸い塊を作る。
中には空洞があり、後にそれはかまくらと呼ぶことを知る。
「懐かしい程の大雪なので、あそこで私は一休みさせていただきますわ。何かありましたらお知らせを」
「ああ、楽しむといい。皆も落ち着いてきたようだ」
あたりの魔物を見回すと、自分たちにある魔力の熱で寒さを補おうとする魔物達は落ち着き払い、ぶるぶると凍えることはなくなった。
「体温調節であれば人間でないからな、簡単ではある。凍傷になれば、ミディやお前がみてまわれ。出来るな、ウル?」
「私だって治癒団の副団長だもの、出来るわ! 私のために頑張ってくれてる皆に、何もしないなんて私自身が許せないし」
「勇ましい花嫁だ、いつだってお前は」
ゼロはくすくすと笑い、マントの中にいる私の頭を撫でてくれた。




