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第六十一話 シラユキの行方

 城に戻れば魔物達が大騒ぎしていた。

 話を聞けば、シラユキは人間へと連れ攫われたという。


「姐さんは来訪した人間から七つ精霊の話を聞こうとして、人間の奴ら汚いことに姐さんが来なければ夜の精霊に認めさせないと言い出して。そいつ朝昼夜の精霊と信仰が深く、縁が強いらしくて……姐さんったら、笑って“いってくるわ、皆に宜しくね”ていっちまったんすよ……」

「来訪した奴の名前は分かるのか」

「そいつが来たときに、姐さん、ジェネットって舌打ちしてやした」


 ゴブリンからの報告に、ラクスターに支えられたアルギスが笑った。

 笑うアルギスに目を眇めたゼロはアルギスへ足先を近づけ、顔を覗き込んだ。


「随分と図に乗った殿下だなと思いまして。……朝昼夜の精霊と親密さにずいぶんと自信があるらしい」

「その口調だと貴様も図に乗れるほど、自信があるのだな?」

「当然だよ。僕の大叔母様は、元々は夜の精霊女王だもの。元は精霊だったけど、人間に恋をして人間界に下りた。その血筋で、僕の魔力は他にも見ない濃さとなっている。だから契約を望んだヴァルシュアにとってはこの上なく美味しい話となったんだろう」


 ラクスターの支えを拒否し、少しふらつきこめかみを抑えてからアルギスは跪き、項垂れた。

「僕に任せてください」

「見張りをつけるぞ、付き添いと。構わないな?」

「勿論」


 アルギスはすっと立ち上がると、一礼しミディにありったけのクッキーを焼くように頼んだ。それから、満月の朝露と、沢山の種類はなんでもいいから華を摘んでくれと。

 アルギスは考え込んでから、一つ申し出た。


「シラユキさんがいない今、ウルでもない他の女性魔物が夜の精霊を担当したほうがいい」

「だとすればゼリアを呼ぼう、ゼリアならミディとお揃いになれると言えば喜ぶだろう」

「ひっ、魔王様!! かかかかかか勘弁だね、それはちょっと」

「ゼリアの魔力は絶大だ、シラユキよりも強い。人柄からシラユキを選んでいたが、この場ではそうも言ってられないらしい。諦めよ、ミディ」

「魔王様、酷いんだねえ!!! おにっ、あくまっ!!!」

「魔物だとも」



 ミディの言葉に物ともせずゼロは腕を組ませて佇み、悩みをアルギスに向ける。


「余の同席は必須であるか? 精霊を認めさせるのには」

「最後だけ同席してくれれば大丈夫だ。配下である魔物が過程で精霊に認められたのなら、それは貴方が認められたも同然だ。誓いだけすればいい……シラユキさんを助けに行くんだね?」

「なら私も行くわ!!」

 常日頃からお世話になっているシラユキの奪還、私は是非とも力になりたい。

 私の勢いに吃驚したゼロは目を瞬かせたが、ふと優しい笑みを私に贈る。


「いいだろう、ついておいでウル。アルギス、お前の今のところの上司はラクスターだ、あとはラクスターに任せる。相談は全てラクスターに。ラクスターが悩むような内容であれば、ミディだ。いいな?」

「分かった、きっとジェネットのことだ、この近辺に屋敷を金に物を言わせ買ってるに違いない。探すとしたら、この近辺にある豪邸を勧めるよ」


 アルギスの言葉にゼロは頷き、私を連れて執務室にある地図を閲覧する。

 地図には近辺に村が一つあり、そこから情報が盗めないかという案になったので私とゼロは夫婦を装い村を訪れようということになった。


 私とゼロは衣服を調えると、すぐに出発し近辺の村であるデリコ村へと向かう。

 デリコ村は農村物が豊かであまり水害知らずの村である。

 代わりに水が貴重であり、水分が詰まった果実はとくに大事にされている。


 デリコ村に着くなり、私は誰から話を聞こうかと悩んでいると犬が私に飛びついてきた。

 犬の人なつこさに和み、私は犬を可愛がっているとゼロが機嫌を損ねた顔で犬を雑に退かせる。

 犬はゼロへは唸る、ゼロは気にした様子もなかった。


 一連の動作を見ていたおばさんが寄ってきて、笑いかけた。


「そりゃあ、旦那の前で他の子といちゃついたら駄目よあんた!」

「そ、そうですかね? 犬でも?」

「旦那なんて誰にでも嫉妬する生き物よ! 見ない顔だね、あんたたち、どうした?」

「……この近辺の地理が気に入ったという貴族様がいて、その貴族様に仕えるようにと仰せつかったのだが屋敷が見つけられずにいてな。何処か大きな屋敷があるところは知らないか?」

「ああ、それならきっとジェネット様の屋敷だ。最近あの方が購入された、昔からの大きなお屋敷があってね」

「地図だとどの辺だ?」


 ゼロの言葉におばさんは頷き、地図のどのあたりかを説明してからどう進めば辿り着くかをきっちりと教えてくれたので私達は礼を告げ、そのまま屋敷に向かう。


 徒歩だと少し遠い距離なので、人が見えなくなった辺りで、魔物の馬に乗せて貰い、ゼロは私を支えながら馬の歩みを進めた。




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