第六話 魔王と休憩の甘い一時
ゼリーを休憩代わりにゼロに持って行けとシラユキに頼まれた。
「邪魔するほど野暮じゃねえよ」とラクスターは部屋の外で待ってくれている。
ノックをし、許しを得て中に入れば、ゼロはさっきより積み上がった書類を処理していた。
最初は睨み付ける眼差しだったが、すぐに穏やかな目つきとなった。
「ウルか、どうした」
「休憩しませんか? お仕事に根を詰めすぎです」
「……ああ、分かった。一息つくとしよう」
微苦笑を浮かべ肩を竦めてから、ゼロは書類を整えてから机から離れ、ソファーに座る。
ソファーに座りながら肩を労り、伸びをしたりしている。
ゼリーの入った器をソファーの前にある机に、スプーンと一緒に置くとゼロは目を細めゼリーを見つめた。
「慣れたか、魔物の暮らしに」
「うん、あまり苦労することはないわ」
「後悔はしておらんな?」
試すような確かめるような口ぶりに、私は噴き出して頷いて微笑みかけた。
「生きてることのほうが素晴らしいわ」
「天使になるのであれば肉体も得られるが」
「でも兄様の行方をこっそり確認できないでしょう? 此処だけだもの、兄様がどれだけ元気か分かるのは」
「っふ、それもそうだな。ウル、食べさせてくれ」
「え、ええ?」
「お前の返事は、はいとしか認めぬ」
私の手にスプーンを握らせ、にやにやとゼロは様子を見つめている。
私はどきどきしちゃって、顔を赤らめてしまう!
ゼロの思わぬ甘えとも見えるおねだりに、ときめいてしまい、いったいどうしたのかしら。
恥ずかしいけれど、頑張って震える手でゼロの口元に手を添えてゼリーを寄せる。
ゼロは意地悪な笑みをしていた。
「手が震えている、しっかりと持たぬか」
「だって……」
「零れるぞ」
ゼリーを持つ手を握りしめ引き寄せ、ゼロはゼリーを食べながら私を抱き寄せる。
抱き寄せてから膝の上に座らせ、また口を開けゼリーを強請る。
「早くしろよ」とくぐもった笑い声の伴った言葉に、私は口説かれているような感覚を持つ。
ゼロは、私に好意があるの? ゼロは――私にも思いを寄せてくれるのかな。
ゼリーを全て食べ終わると、持っていた器を机に置かれ、頭を撫でられた。
「成る程、嫁がいるというのも楽しいな」
「ゼロ……恥ずかしいわ」
「慣れろ、余の全てに慣れろ」
くつくつと笑うゼロ。私の頬にキスをして解放してくれた。
部屋に戻って良いらしい。私はときめきがとまらないまま、部屋を出ると待っていたラクスターににやつかれた。
「ゼリーより甘いもンでも食ってきた? 顔あかい」
「もうっ、からかわないで!」