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第四十二話 違和感と山

 雷頂の麓までは馬車で行くこととなる。

 遠くでも、天に真っ直ぐ伸びる大樹のような山が見える。

 馬車に乗ってる間、ラクスターは無言だった。普段のラクスターらしくなかった。

 普段のラクスターであれば、気が紛れるように会話をしたりなどしてくれていたはず。

 心底悪い物でも食べたのではないかと不安になり、ラクスターのおでこに手を伸ばそうとすれば、びくっと吃驚したようであった。


「な、なんだよ!?」

「最近、ラクスター変よ?」

「いや、あの、何でもないんだ」

「何でも無い顔はしてない。何かに気落ちしてる顔よ」

「お、オレの問題なんだよ、奥様にゃ関係ねえ……」


 真っ赤になりながらそっぽをむくラクスターに話してくれる様子は一切なさそうなので、私は嘆息をついた。

 しょうがない、何か違う話題投げかけてみましょう。


「天使って未来は読めるの?」

「いいや、読めたとしたらそいつが特殊なだけ。ルネは……兄貴は大昔に未来を読む行為で、大天使に上り詰めたことはあるが。それがどうした?」

「いえ、以前貴方と私に言っていたいつか二人で天にくるって言ってた言葉が気になってね」

「ああ……確かに妙に具体的だったよな。何をしてでもいつかくるって確信してる目だった」


 あの時のラクスターとよく似たルネの瞳を思い出すだけでも、真剣さは拭えない。

 あれはいったい何に対する予言だったのだろう。


 やがて馬車が麓につき、馬車を亜空間にラクスターはしまいこんだ。

 荷物を私に預け、私を背に背負いこむと、大きな純黒の翼で羽ばたき飛んだ。


「飛んでもとてつもない高さがあるな」

「飛んだら一気に行けると思ったのに」

「まあそれでも歩くよりマシだ。だいぶ早くに行けるぞ」

「どれくらいかかる?」

「二日くらいで多分てっぺんまで行けるはずだ! 途中で合間に山の中に入って休憩するぞ、奥様重いからずっとは飛んでいられねえや」

「失礼ね!」


 随分と久しぶりにラクスターから笑い声が聞こえた。

 背中にいるから笑い顔が見られないのが残念だった。

 ラクスターと山の八合目くらいまでくれば、山の中に入り川の近くに腰を下ろした。

 ラクスターは伸びをし、羽の手入れをしながら腹が減ったと告げていた。


「何か食いもん取ってくるか」

「待って、干し肉とパンくらいなら持ってきたわ」

「だとしたらそこで水を少し汲んでくる、奥様はそこで待ってろ」

「有難う、ラクスター」


 ラクスターの背に告げればラクスターは手をひらひらと振って、川の近くへぴょんぴょんと飛んで竹筒に汲んでくれた。



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