第四十一話 奥様の味方だ
ミディ団長は指先に光りが集う魔法を使いながら、ベッドにつかせたゼロの容態を見てくれた。
結論はラクスターと同じ、呪いが原因であった。
「魔王様がこうなっていることは人間側に知られると厄介だね、こうなっている間は代理指揮官を呼ぼう。そこで食い止めて貰うしかないね」
「あの、ゼロは……」
「呪いで暫く起きることができないんだね。いつ起きるかも不明、多分ユリシーズ様次第だね、この刻印からして。ユリシーズ様の刻印だ。無理矢理起こすには、条件をいくつか整えなければならない」
「条件……」
「まず、満月の夜に気付け薬を調合する。このときに使う水は、新月の翌日の朝露であること。新月の次の日の朝露には魔力が沢山含まれているからね」
「ほ、他には?」
「体温が上がりやすいだろうから、冷やし続けること。これはシラユキに頼もう」
「お任せください!」
呼ばれたシラユキは泣きそうな顔だったものを、きりっとさせて頷いて意気込む。
最後にもう一つ条件があるのか、ミディ団長は言いよどむ。
「さて、最後の条件、これが一番厄介だね。満月の日に咲く、蒼雫の花で薬を調合する。ただの花だと軽んじてはいけないね、この花は雷頂にある」
何処なのかと聞こうとすれば、ラクスターとシラユキは一気に青ざめた。
不審に思い視線でラクスターに問いかけると、ラクスターは素直に答えてくれた。
「天国の門の一歩手前と言われるほどに、高い山があってな。そこのてっぺんだ」
「ら、ラクスターなら飛べば採れるでしょう?」
「蒼雫の花は、純潔の乙女……つまり摘むのが未婚の女性でないと摘んだ途端に枯れてしまうね。つまり、奥様が取りに行くしか希望がないんだね」
「……分かった、行きましょう!」
「高い山を登るのは大変だから、確かにラクスターに背負って貰うのは良い考えだと思うね。ラクスター、頼めるね? 奥様のことも、山のことも」
「お、れは……」
「ラクスター! お願い、連れて行って欲しいの! ゼロが、ゼロがこのまま起きないかもしれない!」
躊躇っていたラクスターへ私が懇願すると、ラクスターはむっとした顔つきをしてから考え込み、安心するように笑いかけてくれた。
「オレは…………奥様の味方だ」
「連れて行ってくれるのね!? 有難う、ラクスター!」
「…………厄介な魔王だな、こんなときに。ミディ、ユリシーズについてはどうするんだ?」
「今、王がいない間に何かを仕掛けられても困るからね、勇者にユリシーズを倒しに行くようけしかけるつもりだね。手間取って時間稼ぎくらいはしてくれるだろうね」
ラクスターの質問に、ミディは頷き、至急荷物を作ってくるよう私達に命じた。
「くれぐれも頭目がいないことがばれるのは厄介だからね、二人で取りに行って貰うね。気をつけるんだよ」
「へ!? 他に誰かいかねえの!?」
「奥様の他に、抱えられるのかね、君は?」
「あ……そうか、わか、った……」
「ほら、荷物を作ってさっさと取りに行くんだね! 蒼雫の花なら、雷頂にそれしか咲いてないから行けば分かるね」
ミディ団長は手をぱんっと両手で軽く柏手をし、私達に勢いづかせた。




