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第三十四話 甘い指

 街を巡るとお店が沢山連なっていて、驚いた。

 私はゼロと一緒にお店巡りをし、デートをすっかりデートだと忘れながらも楽しむ。

 忘れてる頃合いにゼロが手を繋いだり、腰を抱き寄せてくるものだから、それでデートだって思い出すの。意地悪な人。


「人間たちで使う金ならば持っている、妻よ。望みのものがあるなら言え。先ほど見ていたネックレスでも買おうか?」

「え、その……私、お礼できないけれど、いいの?」

「妻の弁当が最高に楽しみなオレとしては、それが礼では不服かね。ならキスでもいいのだよ」

「旦那様! もうっ……。……あの、ネックレス、さっき気になるのが、あってね?」

「うむ、可愛い我が儘だ、申せ申せ」


 機嫌をよくするゼロに、以前ミディ団長が出来るだけ我が儘を言った方がいいと言ってきたのを思い出し、私は照れるのを押し隠しながらゼロにおねだりをしてみる。


「黒い、宝石の。ネックレス。ゼロの髪の毛と、同じ色の……その周りにね? ローズクオーツ……桃色の石が遇われていて、綺麗だったの」

「まるで、オレとお前みたいだな? よし、買いにいこうか」


 ゼロは肩を抱き寄せ、堂々と歩く。

 私の強請ったネックレスをゼロは買ってくれて、私は大喜びし、ゼロにつけてもらう。

 ゼロはネックレスをつけてから私の項にキスをし、似合うよ、と蕩けた眼差しを送る。


 あまりに甘い眼差しで、言葉を失いながらも懸命に笑うと抱きしめられた。


「そろそろ、星流れの場所の視察にいこうか。日が暮れてしまう、そこで食事にしよう」

「うん……旦那様、有難う。大事にする」


 私とゼロは少し町外れの丘にやってくる。

 そこは景色も良く、風通しもとても爽やかで心地が良い。

 丘にくるまでに体力面で泣かなかった自分にも驚いた、健康な身体って素晴らしい。

 私はシートを広げ、そこにバスケットを置く。

 クルミやナッツがたっぷり入ったパンに、チーズ。それから干し肉に、手製のイチゴジャム。果物は林檎を選んで、バスケットに入れて持ってきていた。

 シーツの下は草原だから少し柔らかな心地で座れた。土や砂利でごろごろした場所よりは。

 ゼロはゆっくりと席を下ろし、私が渡したおしぼりで手を拭くと、食事に舌鼓を打つ。

 美味しそうに食べ、どれも満足げに「うまいな」と食べてくれた。


「ゼロ、口端にジャムついてる」

「このジャムはお前が作ったのか? とても甘みがちょうど良く、うまい」

「ゼロ、聞いて! 口にジャムが……」

「お前が拭け」

 ゼロはおしぼりを私に渡し、にやにやとしていた。

 私はおしぼりを手にゼロの口元を拭こうとすれば、抱きしめられたので驚いた!


「ゼロ! 貴方最初からこの気で!?」

「気づかなかったお前が悪いのだよ。言っただろう、お前は雄を侮っていると」

「う、だ、だって! いつも紳士な貴方がそんなことするって思わないもの!」

「それは誰だってそうだ、好かれるまであと一歩あと一歩と距離を詰め、手の中に届く範囲にくれば食うものなのだ。雄とはそういうものだ、甘いな妻よ」

「……旦那様あ」

「ほら、このジャム。甘いぞ、味見したか、妻よ。指を舐めてごらん」

 瓶に指を少し触れ、ついた赤い粘液をゼロは私の口元に寄せる。

 私は遠慮がちに舌先で触れると、甘い味がし、味わおうとするよりも先に指先を口の中に突っ込まれ、ぐにぐにと口の中を弄られる。

「ぜ、ろ」

「旦那様と呼べ。……甘いだろう、なあ?」


 揶揄するような甘美な声に、私はくらりとする色気を感じるけども、意趣返しで思わず指先を噛んでいた。

 噛むと怒るかと思ったけれど、ゼロは益々愉悦そうに笑い、指先を私の口元から離せば、自分の口元に寄せ指を舐めた。


「お前の味は、このジャムのようだな」

「せ、せく、はら……!」

「何だと? つまらぬことを申すな、お前を愛でたいのだよ」


 ゼロは私の口元にパンを咥えさせれば、けらけらと笑った。



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