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第二十六話 龍娘ゼリアの成長

 二週間世話し終わる頃に、衝撃的なことが起きた。

 二週間の間、蝶よ花よと育てられたゼリアは、可愛らしいドラゴンだったのに。

 二週間後の朝に、一緒に寝ていたゼリアはなんと、金髪赤目の幼女になっていた! 七歳くらいの背丈はありそう。


「ぜ、りあ?」

「はい! ぜりあです。恩人様、世話をしていただきありがとうございます!」

「貴方、人型に……なれたの? お、大きくない? 見目が」

「そうですかあ? ぜりあは恩人様やシラユキ様を見て、人型の姿を覚えたのでぜりあなりに化けてみたのです。あ! とと様、とと様はどこにいらっしゃいますか?」

「とと様? 誰のこと? あ、ゼロなら……」

「恩人様、それは魔王様であり、気易くとと様などと呼んではいけません」

「あ、はい……なら一体誰が……」

「とと様は、恩人様とよく一緒にいる方です。恩人様のお仕事のときによく一緒に……」

「えっ、ミディ団長がお父様なの!?」

「はい! だって一番最初に目が合いましたし、卵からノックしてくださったのはとと様ですから!」


 無邪気な笑みを前に私は、あのミディ団長は貴方を料理にして食べようとしていたのよなんて教えることは出来なかった。





 ミディ団長は子供が不慣れなのか、城中がゼリアにでれでれになる中でも、冷静そのものでマイペースだった人。

 今の状態を教えたら卒倒しそうだと思案していると、ゼリアは翼を背中に出して、部屋から出て行き飛んでいった!

 まずい、あの方角は治癒室だ!

 流石に何回もゼリアを抱えながら治癒室で仕事をしていたから、覚えてしまったらしい!

 部屋に辿り着く寸前、治癒室からは悲鳴が聞こえた。


 扉を開ければ、ミディ団長が泣きそうな顔で、ゼリアに押し倒されていた。


「ななななななななななな、なんだね、きみはっ」

「ぜりあです、とと様♡ 嗚呼、とと様ッ、間近で見るととてもりりしくて、ぜりあは誇らしく思います」

「ととさまああああ?!!! な、何がどうなってるんだね、奥様!?」

「とと様、照れないで」


 ゼリアの様子にミディ団長は白目を剥いて気絶した。

 よほどの子供嫌いの様子だ。

 程なくして、食事の時間だからとゼリアを説得し、ミディ団長から退かせることに成功したけれどミディ団長は気絶したままだ。


 ゼリアと手を繋いで一緒に朝食の時に集まる部屋へ行けば、幹部達は騒ぎ、ゼロにいたっては自分がとと様ではないと知ると分かりやすく肩を落とした。



「ミディが父か……やめたほうがいいと思うな。あいつは極度に幼い子供が苦手でな」

「お医者様なのに?」

「ゼリアよ、ミディは生理的に子供を受け付けぬものなのだよ。どんなに可愛らしい姫だろうとな」

「ええー、それじゃあとと様はぜりあのこと嫌いなの?」


 しょんぼりとする姿に笑い転げるのはラクスターだけ。

 ラクスターはげらげらと笑い転げ、ミディ団長の弱点を知るなり広めたがっていたけれど全力で阻止した。

 ラクスターは残念そうな顔を残しつつ、ゼリアに笑いかける。


「おい、龍のガキ」

「なぁに。ゼリアはゼリアよ、淑女の扱い方を知らないのですね、らくすたあは」

「そんなもん知ったことかよ。オレの淑女は奥様だけだ。なあなあ、お前の成長速度どうなってるんだ? いつまでガキでいられるんだ?」

「運命の相手と出会うまでよ。運命の番……ゼリアのお婿さんになる他の魔物と出会えば、また成長が変わるの。成長が変わって運命の番が現れたら、闘うことによりそれが結婚式のかわりとなるのです。それまではこの小さな身体で、ゼリアはとっても不便です」

「へえ! それまできっと寂しがるから、ミディんとこにいるといいぜ!」

「はい! そうします!」

「ラクスター! 好奇心もいい加減にしなさい」

「だって奥様、あの冷静なミディが怯える姿なんてそう滅多にみれねえぜ?」


 にこにことゼリアは笑っているし、ラクスターは愉悦そのものの笑みを浮かべている。

 笑顔って種類があるのね、と感慨深くもなりつつ、私はラクスターの頬を抓んで引っ張った。

「いって! いたいいたい、奥様!」

「からかい癖もいい加減にしないといつか身を滅ぼすわよ」

「一回滅んだ身だけど、そんときはまた奥様が力貸してくれるだろ?」

「分かっててやってるなら、尚悪いわ!」


 ラクスターは私がぷりぷりと怒ると逃げるように、爆笑しながら窓から外へ飛んでいった。

「恩人様、あれやりたい! ゼリアもあのように飛びたいです! 綺麗に飛ぶのですね、らくすたあは!」

「あれは言葉で言い負かせなくてただ逃げただけよ。ゼリア、ご飯一人で食べられる? その姿なら」

「はい、恩人様! お任せください! とと様や魔王様、皆様の手を煩わせません!」


 ゼリアがにこりと歯を見せ笑うと、場に居る皆が和み、好きそうな食べ物をそれぞれ皿によそうので少し面白い光景だった。



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