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第二十三話 再会の約束と、勇者からの意地悪

目が覚める頃合いには夕方だった。

 夕日が窓から綺麗に差し込む、夕日の灯りで私は目を覚ました。

 目が覚めると真っ先に気づいたのはゼロだった。

 ゼロは私の手を握り、起きるなり安堵の息をついた。


「どう、なった……の?」

「魔崩れについては任された。余が倒した魔崩れは連れて行くそうだ。次にまた何か起きたときに記憶を取り戻す記憶消しの術を施して勇者のパーティーは帰らせた。お前の兄だけはまだ施していない。式があるからな」

「そう……」

「だがな式を延期しようと思うのだよ、我が乙女」

「どう、して? 私が倒れたから?」

「アルギスをどうにかしないうちに式をあげても、お前はそいつが気になるだろう、ウル。それは余が望む結婚式ではないのだ。何より……ラクスターに少々怒られてな」

「ラクスターに?」

「てめえ自身が奥様を信じ切れないうちに式などやるな、と。頷けるものはあった。だから延期だ、婚礼は」

「……私が嫌いになった? ゼロ」

「いいや、今回の件でお前のことは一層愛しく感じた。だからこそだ。あの魔崩れに勝る自信を得てから、婚礼を行おう」

「……分かったわ、楽しみに、してたんだけどね」

「それは悪かった、ふふ。ウルよ、驚いたぞ。バリアをあの場にいる我らが軍勢全員にかけ、最後まで保ち守り切るとは。花嫁に相応しい魔力だ」

「違う言葉がもうちょっとあるでしょう?」

 私が少し拗ねながら、ゼロの大きな人差し指を握りながら見上げると、ゼロは観念したように噴き出した。


「惚れ直したよ」





 兄様は帰ることになり、無事事件が終えてから記憶を取り戻させ、式に参列させることをゼロが話すとあっさりと兄様は頷いた。


「だろうなあ、お色直し三回目辺りでこられても、黙ってろ!って邪魔になるしなあ。しかしなあ、魔王。記憶を消すのは……少し悲しいもンだ」

「ウルに関する記憶だけは残すが?」

「ああ、いやいや。そうでなくてな……まあいい。いつか、思い出させる。そっちのほうに記憶は残ってるんだ、オレの記憶がなくてもそっちが残るなら覚えててくれるはずだ。シラユキ、ちょっと荷物忘れ物ないか確認したいからこっちきて」

「もう部屋には何も無かったと思いますけれども、何かご不安が? ……え?」


 近づいたシラユキの手を引き寄せ、兄様はシラユキにキスをした。

 顔を真っ赤にしたシラユキから、兄様はビンタを貰っていたのに爆笑した。


「これで十分。十分だ、忘れないだろ、そっちは。オレがどんな目で見ていたか」

「なっ、あぐっ、このっ」


 シラユキは完全に言葉を失い、真っ赤になり睨み付けて、身体の熱からか指先が少し溶けていた。

 魔王は愉快そうに笑い、転送と記憶消しの術を兄様に施そうとする。


 施されながら兄様は私を見つめ、にっと笑いかけた。


「オレ達兄妹なら出来るさ、いつか和解策考えような。元気でな、ウル! 今度は幸せな式が見られると、期待してるぞ!」

「兄様! 我が儘に付き合ってくださって、有難う! 私を、魔物でも妹だと、仰ってくださって、有難う……!」


 兄様が歯を見せ笑う頃合いに、兄様はゼロからの転送により姿を消した。

 気遣ったラクスターが私の頭を撫でてくれたが、私は不安も全て消し飛んで、清々しい気持ちさえ生まれていたのでラクスターに笑いかけた。


 有難う、私の世界一偉大で優しい兄様。



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