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第二十一話 五センチの猛威

 アルギスが水の魔法も使えると分かった後に聞いたことがある。

 炎と水はどちらが強いのか。

 魔物達の返事はそれぞれだったが、皆は結論は一緒だったのを思い出した、ふと。

 皆最終的に「魔王様が世界で一番お強い」と。


 現状、豪炎と流水が交わろうとしている、その何方が勝つかなんて予測はできない。

 ヴァルシュアという魔王は後方でバフ係として様子を見ているつもりの様子だった。

 その様子に牛の姿でゼロは鼻息荒く、嘲笑った。

 手には炎を模した槍を生み出し、自慢の黒い角も炎を纏う。

 アルギスは酷薄な笑みで手元に水を滴らせ、それらを凍らせて刃にすると茨で柄を編み、剣を作った。

 ヴァルシュアがアルギスの項にキスをすれば、アルギスの持つ氷の剣はより派手な装飾となった。

 側にいるサキとリデルは毒魔法を配置したり、バフを強力にかける魔法をアルギスに捧げている。


 私は金色の炎に祈り、この場にいる味方全員のバリアを強めると同時に、ゼロの勝利を祈ることでゼロの真っ赤であった炎に金色が混ざり、荘厳となる。

 ゼロは少し驚いたが、すぐに強気に笑い、互いに代表者が前と出る。


「帰れ、諦めろ! ウルは余の妃だ!」

 槍を大きく振るい、真正面からアルギスの頭部に切っ先を向けたが、アルギスは氷の剣で受け止める。氷はとけはするがそれだけだ。流水の剣として、ゼロの槍を受け止める。

「ウルは僕の運命の人です」

「失ってから分かるとは大層な運命だな!」

「ッ、この無礼者が!!」


 槍ごと力でごり押そうとするゼロの攻撃に、かっとなったアルギス。

 最初に睨み合いのような剣戟に最初に動いたのは、アルギスだった。

 空気中に漂う水分から鋭い針を何万本も生み出し、ゼロをめがけて攻撃した。

 ゼロは勿論針に気づき、追い払うように炎の槍で円を描くように、振り回した。

 周りが熱風で威圧される。その間にも毒の範囲は広がりつつあり、サキはにやにやと笑っている。ミディ団長は舌打ちをしながら、眼鏡をしまい目を限界まで開き開眼して詠唱し、毒の範囲解毒の魔方陣をより広げた。


「あの治癒師、いい仕事をするな」

「欲しいか、やらぬぞ」

「くれないか、残念だ。なら潰すまでだ」


 アルギスは式場に流水を流し込み、場を地面から五センチほど水で溢れさせる。

 そのたった五センチに私達は苦しめられることになる。




 アルギスが式場に流水を流し込むことで何が起きたのか私達は判断が出来なかった。溢れるほどの強い水流で何かされたわけでもない。

 だからこそ油断を誘った。

 水は通常靴や足を湿らせる。靴や足から水分は吸収される。

 吸収される道を許してしまった。


 サキの上乗せした毒魔法にアルギスの僅かな池、それにより毒の範囲は広がり、場に居る全員に毒が行き届く。

 少なくとも、毒の池を踏みしめてる者は全員苦しめられる。


 真っ先に気づいたのは、ミディ団長で、いきなり式場の椅子を踏みつけ、場に居る皆に怒声を響かせる。


「皆、この水に触れるな! 何か少しでも水に触れない位置にいくのだね!」

「奥様はオレの腕に! 妬くなよ、炎牛!」

「今は許す、さっさと避難させろ!」


 ラクスターはミディ団長の声にすぐさまに従い、羽根を現すと私を姫抱きしてばさばさと宙へ飛んだ。


 ゼロは毒のダメージよりアルギスを優先し、アルギスへ攻撃を放っている。

 アルギスは攻撃を受け流しながらも、恍惚とした笑みでヴァルシュアから魔力を貰っている様子だった。

 他の魔崩れ二人も恍惚とし、目は完全にイカれていた。


 兄様達も魔崩れ達の妨害をしようと、長椅子に足をかけながら妨害魔法や弓による援護射撃をしているのだが、魔崩れは意に介さない。

 攻撃は全て欠伸しているヴァルシュアのバリアがはじき返す。


 この場をどうにか出来るのは、ゼロ、ただ一人だった。




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